エッセイ「感覚」 5.飲む
ウイスキーが飲めると、大人になったなあと感じる。家族と、友達と、恋人とともにお酒を嗜む時間は、より近しい距離感を楽しめる素敵なひととき。二十歳になって最初に飲んだお酒はモスコミュールだったが、いま一番好きなお酒は断トツでウイスキーとなった。
のどに流れてくるときの、アルコールの独特な香りとピリリとした感覚が、大人になったことを強く突きつけてくる。お酒を楽しむことは、ちょっとした憧れが叶ったようで嬉しくもあると同時に、これから先、すべての責任は自分にあるのだと重くのしかかる味を知ることでもあると痛感する。それがあの、のどを流れる小さな痛みなのだろう。
社会人になる前に自分の限界を知っておきたいと、母と地ビール園に行ったり、強めの日本酒を嗜むときは、本当に心を許せる人の前だけに留めておいたり。あるいは、仕事で誘われ、そのなかでうまく交わすすべを身に着けてみたり。
洋画とか、とくに西部劇なんかでポケットからウイスキーを取り出してくいっと飲む姿をかっこいいと思い、密かに憧れを抱いたあの新鮮な心は、社会にもまれ、確実に大人としての責務を果たしていくなかで、少しずつ薄れていってしまうものなのかもしれない。しかしそれではなんだかとてもつまらないので、ときにお気に入りの映画『インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク』で繰り広げられる、お酒の競い合いを存分に楽しみたい。
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