せにょ

元国税調査官、在職中はゴミ箱を漁るガサ入れ特殊部隊からお上品な上場企業の調査まで経験しました。現在民間一部上場企業の現場管理者。昔を懐かしんで書いています

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元国税調査官、在職中はゴミ箱を漁るガサ入れ特殊部隊からお上品な上場企業の調査まで経験しました。現在民間一部上場企業の現場管理者。昔を懐かしんで書いています

最近の記事

脱税社長は決算期末に操作をする!

 Fさんに言われて工場などの現場を這いずり回って原始記録を探し出して、売上や仕入の記録を突き合わせて確認するようになりました。調査の深度は上がっている実感はありました。工場に行って現場の作業員にいちいち作業状況を聞いて、同時に彼らが記録するものを聴取します。それで、どの書類を見れば売上と照合ができるかを考えて書類を借り上げます。それら原始記録を漁って事務所に戻ると、社長に「そんなものまで見るんですか?」と言われますが、それは税務署員にとってはほとんど褒め言葉です。そう言われる

    • 社長が出す書類を見たって脱税は見つからないぞ!

       さあ、困りました。五里霧中です。どうしたら間違いが見つかるか分からない。またもや困り果ててF上席に泣きつきます。 「Eさんの言うように、よく社長の話を聞いたつもりなんですけど、間違いが見つかりません。全部載ってるんです。納品書見ても請求書見ても、全部売上に載っているんです」 「それはなぁお前、載っているものを見つけるんじゃなくて、載ってないものを見つけるんだぞ。社長の話と食い違うものは無いかって探すんだぞ。そりゃお前、社長が持って来た書類をバカ正直にいくら見たって載ってるに

      • 何も見つからない!どうしよう!

         初めて1人で調査した1日目は、きっと興奮していました。ドキドキしながら調査をして、初めて見る帳簿の世界に舞い上がっていたようです。  2日目の調査では、最初こそ前日と同じように感心したりウキウキしながら「面白いな〜」と帳簿を見ていましたが、だんだん興奮が冷めて冷静になってきました。冷静になってくると自分のやっている行動を客観的に見えるようになってきました。あれ、僕は何をしてるんだろう?感心している場合じゃない。なんか見つけなくちゃいけないだよな。そう思って書類を見直します。

        • 初めて一人で税務調査に行く!

           自分1人での初めての調査は、緊張と興奮とで軽くパニックになっていました。緊張をしていて、文字通り視野が狭くなっていたのでしょう。社長の顔も事務所の様子もほとんど記憶になく、ただ自分の座っていたのが緑色の椅子だったのと、その椅子の前の帳簿を置いていたテーブルが白かったことはぼんやり覚えてます。ただ、F上席の言われた通り社長の話をよく聞くように心がけました。緊張で何も分からないけど、話を聞いていれば何かわかるのではないか。それだけが頼りだったのでしょう。  F上席が「よく話を聞

          「じゃあ、次から一人で」「えっ!」

           調査の終わったバイアグラの産婦人科医院の書類を整理していると、M統括に呼ばれました。 「セニョール君、次回の調査から一人で行くように」 「は?」 「この会社に行ってください。そろそろいかなきゃ行けないところだし」 「はい…」  はいとは言うけど、心の準備ができていません。統括が何を言っているのかわかりません。俺、一人で行くのまだ無理でしょう?いきなりそんな事を言われても困る。    席に戻ってFさんに文句を言います。 「もう一人で行かなきゃいけないんですか?!まだ無理ですよ

          「じゃあ、次から一人で」「えっ!」

          非常勤役員の報酬!いくらが妥当なのか?医師の税務調査

           初めて見た増差は非常勤役員の報酬の否認というケースでした。  調査の最後は、金額をまとめる話に入ります。医者が診察で現場にいないのに、統括官と税理士は増差の金額を決めていきます。    「これはこれくらいで」 「そうですね、それくらいでしょうか」  といった感じで、ほとんど論争することもありません。  「こんなに簡単に金額を決めてしまって良いのかしら」とびっくりしました。    大学時代の友人の父親が会社を経営していて、儲かったので彼の父親、僕の友達からすると祖父にあたる

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          税理士がペラペラ喋る!医院長を裏切ったのか?

           今回の産婦人科医への調査で、M統括官は最初から役員報酬を狙っていました。  税務調査官は現場に臨場する前に、事前に申告書などそれまでに税務署が持っている情報を整理して調査のポイントを検討します。これを準備調査と言います。準備調査では過去数年の確定申告書を見て決算数字を分析するのがメインですが、稀にタレコミ情報があったり、資料せんといって他の企業などとの取引資料や、銀行や証券会社の口座情報などがあったりします。それらを整理分析して、その調査で何を主眼に調べるか考えます。  こ

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          産婦人科調査〜税務署員の厳しい追及が始まる

           産婦人科医はバイアグラで税務署員を買収をしようとしたけど、失敗しました。  ここからは税務署側の反転攻勢です。買収攻勢にめげずM統括はしっかり調査を続けました。  税務調査とはメガネをかけた陰湿な税務署員が帳簿と睨めっこしながら、重箱の隅を突くような細かい事を揚げ足を取るような感じでネチネチ言ってくる図を思い描く方もいるかもしれませんが、実際は違います。税務調査官には質問検査権という質問する権利があって、その質問を重ねながら真実に迫って行きます。もちろん帳簿書類も見ますが、

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          産婦人科調査〜税務署員の厳しい追及が始まる

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          これが税務調査か?買収してくる産婦人科医!

           10年ほど国税にお世話になっていた間、何百件と調査をしてきた。でも経験を積んでくるとだんだんと驚きや感動も薄れてきて、いろんなことがあったはずなのに後半の調査はほとんど記憶に残っていないものです。でも新人の頃の調査は全てが新鮮で、些細な事まで鮮明に覚えています。 今回も僕にとって2回目の調査、産婦人科へ調査の続きです。  こんな事もありました。応接室で調査中、医院長が薬の入ったビニール袋をガサっとM統括の目の前におきました。 「統括、これバイアグラですよ」 軽く買収です。

          これが税務調査か?買収してくる産婦人科医!

          初めての質問検査権の行使?産婦人科医の調査!

           前回は初めての税務調査でした。先輩たちが何やってるか分からなくて、つまらなくて居眠りをして怒られた。  程なくして、2回目の調査につれて行かれることになった。どうやら産婦人科らしい。  税務署の法人課税部門は、法人であればなんでも調査するので業種は多岐に上ります。前回のような製造業や建設業などいかにも会社らしい会社から今回のような町医者まで、世間一般のイメージからすると会社に見えないようなものでも法人登記してあればやる。だから法人申告書には作家や俳優のがあったりする。  い

          初めての質問検査権の行使?産婦人科医の調査!

          初めての税務調査

           ある日、上司である統括官に「明日調査に行くから」と言われてしまった。  いきなりだな、と思った。もちろん自分が調査部門だってことは分かっていました。いつかは調査行くのだろうとも思っていた。でも、いきなり「明日」と言われるとは思わなかった。  実務上は調査の日程は前もって会社に連絡しているのがほとんどだし、調査の日はあらかじめ決まっているものだ。前日にいきなり僕に伝えるのは、僕をあまり緊張させないように「気楽に見学をさせよう」という統括の心遣いだったのでしょうが、当の本人の僕

          初めての税務調査

          準備調査ってどうすればいいの?!

           「お前、ここから休み取ったらどうだ?」  Fさんからお盆休みを取るように言われました。  「いや、僕は来れますよ。家に一人でいてもやることないし」  「そんこといったっておめえ、一人で来て何すんだ?俺も統括もいねぞ」  「あ、そうなんですか。みなさんお休みもらうんですか、それじゃしょうがいないですよね、やる事ないんじゃ来てもしょうがないですよね」  「んだ」  「でも、配属されてまだ3週間くらいしか経ってないのに、そんな何日もお休みもらっていいんですか?」  「いいんだ、

          準備調査ってどうすればいいの?!

          資料せんを舐めんなよ

           僕が税務署に入って次にやった仕事は、「資料せん」の整理でした。資料せんとは、銀行や証券会社から送られてくる高額の取引や、税務調査などで見聞きした怪しい取引の情報で、要は脱税の取引ではないか、あるいは脱税などの不正な取引で得たお金の貯まった口座ではないか、といった情報です。税務署にはそういった情報が各所から沢山集まってきます。  それらの情報は当然ですが極秘で、オンラインでデータをやり取りできる物ではありません。いろんな様式の七夕の短冊のような、小さな紙切れがどっさり来ます。

          資料せんを舐めんなよ

          「どうせ現場を知らない国税庁のエリートが考えた事だからさ〜」

           先輩たちの紹介で間が開きましたが、税務署やだな〜と思って勤務開始してみたら、税務署の人たちが意外?と良い人達ですっかり前向きになってしまった僕の、その後の話です。  最初の仕事は申告書の数字の入力でした。申告書は受理された後、申告書を処理する部門である第一部門で計算間違いがないかなど基本的なことを確認した後に第二、第三部門に回ってきます。第二、第三部門は調査をする部門なので申告書の見方も第一部門とは違っていて、調査に行くべき会社かどうかという視点で申告書を見ていきます。この

          「どうせ現場を知らない国税庁のエリートが考えた事だからさ〜」

          女子におすすめの職場!税務署!

           当時は女性の割合は2割もいない感じだったでしょうか。書類の事務をする第一部門には若干多く複数名いて、調査部門には最低一人はいる感じでした。ガサ入れとかで女子更衣室のような、女性しか入れないところもあるので、各調査部門にも一名はいるのだと思います。  僕の配属された法人第二部門には、僕に最初にお茶を入れてくれたW上席がいました。「おほほほー」とよく笑いよく喋る、高校生の息子がいるお母さんで、「昔は綺麗だったんだよー」と他のおじさん達から言われていましたが、その時も年のわりに綺

          女子におすすめの職場!税務署!

          税務署の先輩達

           僕の配属された法人課税第二部門の先輩職員達です  筆頭上席調査官として超ベテランの職人肌の48歳、F上席調査官がいます。この方は僕の指導担当にもなります。色黒でずんぐりした体躯でどっしり座って仕事をしてますが、いかにも現場にでる調査官という感じで静かな落ち着いたたたずまいのなかにも精気に溢れていて、仕事が出来るオーラが滲み出ています。親しみやすいところもあってよくも冗談も言うのですが、しゃべると方言丸出しで、たまに言っていることが分からなくてとりあえず笑っておこうという時も

          税務署の先輩達