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税理士がペラペラ喋る!医院長を裏切ったのか?

 今回の産婦人科医への調査で、M統括官は最初から役員報酬を狙っていました。
 税務調査官は現場に臨場する前に、事前に申告書などそれまでに税務署が持っている情報を整理して調査のポイントを検討します。これを準備調査と言います。準備調査では過去数年の確定申告書を見て決算数字を分析するのがメインですが、稀にタレコミ情報があったり、資料せんといって他の企業などとの取引資料や、銀行や証券会社の口座情報などがあったりします。それらを整理分析して、その調査で何を主眼に調べるか考えます。
 この医療法人の準備調査では、役員報酬の支払いが注目されました。
 法人申告書には、どの役員にいくら払ったといった内訳を記載する項目がありました。この役員報酬の内訳は調査官にとっては、結構重要です。この役員報酬の内訳のページは申告書の後ろから2ページ目位になりますが、調査官は申告書を見る時は表紙を見た後、すぐに役員報酬の内訳を確認します。なぜかというとこの役員報酬の支払い方で、この社長の税金に対しての考え方がある程度わかるからです。
 役員報酬は法人の経理上は人件費になるので、役員報酬を多くすれはその分法人税は安くなります。一方で役員報酬には個人の所得税がかかります。個人の所得税は累進税率で、報酬が増えればその分税率が上がります。ある一定金額までは、役員報酬を払って所得税を払った方が法人と個人のトータルの税金は安いのですが、それ以上に役員報酬を払うと急に所得税などが高くなります。当時の法人税と所得税の税率からいうとほぼ800万円くらいが境目で、それより多く役員報酬を払うと法人税で払うより損になります。つまり税金を払いたくない社長は、役員報酬を夫婦それぞれ800万くらいに抑えて、それでも法人税が出る場合は経費を使いまくる等あらゆる合法的節税を行い、それでも税金が高いと感じると脱税をするという傾向があります。

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