唐の太宗『貞観政要』を読了して
もともと中国史が好きで、関係する書籍はほとんど目を通しています。
司馬遷の『史記』に始まって、24史。
20代から30代までは、どっぷりと中国史につかってました。
いつかは読まなきゃと思っていたのが、この『貞観政要』
言うまでもなく、中国の皇帝で、一、二を争う名君である、
唐の太宗こと李世民。
彼の臣下との問答集がこれなんですね。
本作は、歴代中華皇帝はもとより、
日本でも、源頼朝、妻の北条政子、歴代北条執権。
足利将軍、徳川家康らも、しっかりと読んでますし、
後醍醐天皇をはじめ、明治天皇に至るまで、数多くの時の権力者が大きな指標とし、座右の書籍として愛読されてきました。
確か、あっちゃん(オリエンタルラジオの中田敦彦さん)もYouTubeで取り上げていたかと。。。。。
読んだことはありますか?
本作は、よくリーダーやトップに位置する人の
いわゆる『帝王学』を学ぶための格好の指南本です。
自己啓発や自己研鑽にももってこいかも知れませんね。
ネタバレになると意味がないので、詳細には触れませんが、
数多くの名言や、学びがありました。
中でも、太宗が学問と読書について臣下と論じる箇所が記憶に残ります。
太宗は隋朝を父の李淵と共に滅ぼすのですが、太原で挙兵して以来、戦いに明け暮れて、本を読む機会がなく、それを反省して、皇帝に即位してからは、歴史を学ぶために大の読書家になったそうです。
過去の名君、暗君、暴君の行いを知り、より理想的な天子=皇帝であるように努めたいと、臣下に語っています。
酒色に溺れず、質素倹約に励み、常に人民の鏡でありたいと述べ、
理想の君主とは何かを論じています。
房玄齢、杜如晦、魏徴、王珪といった名補佐役らが、太宗に対して諫言をし、一切の遠慮なく、
「指導者の条件」
「人材の登用」
「後継者の育成」
などについて進言し、それを太宗が咀嚼して、解答を述べる形式をとっています。
時として太宗も人間ですから、臣下に反論したり、我流でことを推し進めようとするのですが、それに対する臣下らが、きつく戒めると、素直に従うといった度量の大きさを見せる場面が多く見受けられます。
また、太宗の口から、再三、過去の歴代王朝の成功例や失敗例。
それに加えて、名君と暴君の違いについてが語られます。
太宗自身の理念としては、唐王朝がより一層栄え、盤石の体制とすること、また、人民が安心して暮らせる社会を構築できるようにと考えています。
事実、太宗の貞観年間は、大変、平和で安定した時代となり、泥棒も減り、食料に困る人民が相当減少傾向にあったと史書に記録されています。
経済的な基盤がしっかりしていると、文化や技術も革新・向上して、大唐帝国はまさに当時の世界帝国として君臨していました。
英邁な皇帝が権力を握り、きちんと舵取りを率先してすると、このように国は繁栄するのですね。
わたしも来日した中国人に
「どの時代が好きか? どの王朝がいいか?」
と尋ねると、ほぼ全員が決まって
「唐(タン)ですね」
と答えます。
また、京都の街並みや、建造物を見るたびに、古の唐の都である、
長安(現在の西安)にいるような錯覚を起こすそうです。
それほど愛されている唐王朝。
それを築きあげたのは他ならぬ、太宗、李世民なのだと言っても差し支えないでしょうね。
こちらの作品でよく論じられるテーマ。
「創業と守成はどちらが重要で困難か」
これに対して臣下はそれぞれの主張をしますが、太宗は明確に答えます。
激しい戦争の上で、ようやく天下は定まったことを踏まえて。
「創業の困難はもはや過去のものとなった。今後はそちたちともに守成の困難を乗り越えていきたい」
と発言。
攻めることも大変なことですが、太平となったときこそ、守りに一層気を引き締めて、国家安泰とすべく、太宗は固い決意を持って自らが率先して、平和を維持していこうとする意志が伝わってきます。
そんな立派な名君太宗ですが、このような失敗というか、エゴも垣間見せています。
●晩年、後継者選びに苦心して、無能な子(高宗)を選んでしまったこと
●同じく晩年に高句麗に遠征して無用な戦争をしかけたこと
●東晋時代の王義之の名書、『蘭亭序』のほとんどを私物化し、自らの墓所に埋蔵させたこと
などがあげられます。
太宗ほどの名君でも、やはりエゴや迷いが多々あったということですね。
それらを差し引いても、この『貞観政要』は読むべき価値は120%ありますし、もし、リーダーとして、あるいはトップにいる人にとっては、最高の指南書であると思います。
わたしも、もっと早くにこちらの書籍に触れていればなぁと後悔しているのですが、たとえ、読者が何歳であろうと遅くはない。
気づいたとき、組織や集団の運営に迷ったときに、必ず役立つ、不朽の名著であると確信しました。
まだ、未読の方はぜひとも、手に取って頂きたいと思います。
人生観は大きく変わることでしょう。
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