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時代を超えて読み継がれる兵法の金字塔:カール・フォン・クラウゼヴィッツ『戦争論』

カール・フォン・クラウゼヴィッツの『戦争論』は、19世紀初頭にプロイセンの軍人、カール・フォン・クラウゼヴィッツによって書かれた軍事理論の古典的名著です。

ナポレオン戦争の経験を踏まえ、戦争の本質、戦略、戦術などについて深く考察したこの本は、現代においても軍事学、戦略論、経営学など、多様な分野で読み継がれています。


クラウゼヴィッツの生涯と『戦争論』の執筆背景

クラウゼヴィッツは1780年、プロイセンのブルク(現在のドイツ、ザクセン=アンハルト州マクデブルク)に生まれました。

12歳という若さでプロイセン軍に入隊し、フランス革命戦争やナポレオン戦争に従軍しました。彼は実戦経験だけでなく、ベルリン軍事大学で教鞭を執るなど、理論的な研究にも熱心に取り組みました。

『戦争論』は、クラウゼヴィッツが生涯をかけて書き続けた著作であり、彼の死後、妻マリー・フォン・クラウゼヴィッツによって1832年に出版されました。

ナポレオン戦争の激動の時代背景の中で、クラウゼヴィッツは戦争の本質を深く理解しようと努め、その成果が『戦争論』に結実したのです。

『戦争論』の中心思想

『戦争論』の中心思想は、戦争は政治の延長線上にあるという「戦争の政治性」です。

クラウゼヴィッツは、戦争は独立した行為ではなく、政治目的を達成するための手段であると捉えました。

戦争は、政治的意思を貫徹するために、武力行使という手段を用いる行為なのです。

また、クラウゼヴィッツは、戦争には「摩擦」がつきものであると指摘しました。

摩擦とは、情報不足、兵站の困難、士気の低下、天候の変化など、戦争遂行を阻害する様々な要因を指します。

彼は、理論と現実の乖離を認識し、戦争の不確実性を強調しました。

さらに、「天才」の重要性も説いています。

天才とは、不確実な状況下においても、的確な判断を下し、勝利に導くことができる能力を持つ人物を指します。

クラウゼヴィッツは、戦争のような複雑な状況においては、理論や知識だけでなく、直感や経験に基づく判断力が不可欠であると考えたのです。

『戦争論』の構成

『戦争論』は全8巻から構成されていますが、クラウゼヴィッツ自身の手によって完成されたのは第1巻から第7巻までです。第8巻は、彼の遺稿を元に妻マリーが編集したものです。

主要な内容は以下の通りです。

  • 第1巻:戦争の本質について: 戦争の定義、戦争の目的、戦争における政治と軍事の関係など、戦争の本質について論じています。

  • 第2巻:戦争の理論: 戦争の原則、攻撃と防御、戦略と戦術など、戦争の理論について解説しています。

  • 第3巻:戦略論: 戦争計画の立案、戦力の集中、作戦目標の設定など、戦略論について詳しく論じています。

  • 第4巻:戦闘: 戦闘の原則、兵科の役割、戦場の地形など、戦闘について考察しています。

  • 第5巻:軍隊: 軍隊の組織、指揮統制、兵站など、軍隊の運用について論じています。

  • 第6巻:防御: 防御の原則、要塞の役割、持久戦など、防御について解説しています。

  • 第7巻:攻撃: 攻撃の原則、奇襲攻撃、包囲攻撃など、攻撃について論じています。

  • 第8巻:戦争計画: 戦争計画の立案、戦力の配備、作戦行動など、戦争計画について解説しています。

『戦争論』の影響

『戦争論』は、出版当初から軍事思想に大きな影響を与え、プロイセン軍の勝利に貢献したと言われています。

その後も、世界各国の軍人で研究され、現代の軍事戦略にも影響を与え続けています。

例えば、第一次世界大戦や第二次世界大戦では、『戦争論』の思想が各国軍の戦略に大きな影響を与えました。

また、冷戦期には、核抑止論の基礎として、『戦争論』の概念が活用されました。

さらに、『戦争論』は軍事学にとどまらず、ビジネスや政治など、競争や対立が存在するあらゆる分野において、戦略策定の指針として活用されています。

現代社会における『戦争論』の意義

現代社会においても、『戦争論』は、国際関係や安全保障を考える上で重要な視点を提供してくれます

。特に、現代の戦争は、国家間だけでなく、テロ組織や非国家主体が関与するなど、複雑化しています。クラウゼヴィッツの洞察は、こうした現代の戦争の複雑な様相を理解する上で、依然として有効です。

また、『戦争論』は、戦争の悲惨さを改めて認識させてくれます。

クラウゼヴィッツは、戦争は人間の理性では制御できない、暴力的な行為であることを強調しました。

現代社会において、平和構築と紛争予防は喫緊の課題であり、『戦争論』は、そのための教訓を与えてくれます。

現代社会は、情報化、グローバル化が進展し、戦争の形態も大きく変化しています。

しかし、クラウゼヴィッツが『戦争論』で示した戦争の本質、戦略、戦術などに関する洞察は、時代を超えて重要な意味を持ち続けています。

戦争が起こっているいまだからこそ、読んでほしい一冊です。


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