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うた

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気ままに書いた散文詩や、短編小説たち。 一話完結のものを集めました。気軽に読んでやってください。
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記事一覧

【詩】色命

【詩】色命

紅葉から鮮やかな赤が
銀杏から賑やかな黄色が
鉛色の冷たい雨とともに大地へ染み入ると
地上には生命の思い出だけが
セピア色に残るでしょう

「厳しい雪に覆われて
 全て漂白されてしまうのを
 ただただ待つしかできないなんて」

いいえ、きっと季節が巡れば
赤や黄色は花となって
やがて還ってくるでしょう
貴方が流したその涙さえ
いつかは生命に変わるのですから

だからその身が熟すのを
恐れて待つのは

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掌編│23時と夢のあいだ

掌編│23時と夢のあいだ

 夜風が涼しい。すっかり秋だ。
 彼女はベランダに出て、白いプラスチックの椅子に座る。バーベキュー用のテーブルセットを常設してあるのだ。
 タワーマンションでもなければ都心でもないので夜景が綺麗というわけではないのだが、彼女は田舎の、このこぢんまりとした団地のベランダで過ごすひとときを愛していた。すぐ近くの道路を走る車の音、部屋から漏れるテレビ番組の笑い声がなんだか落ち着く。

 彼女は声が混ざる

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【SS】実りの秋事件

【SS】実りの秋事件

 爽やかな、という文字が道端に落ちていた。
 トキコはぎょっとして、制服のスカートを押さえながらしゃがみ、手に取ってみる。
「チラシの切れ端?」
 見れば、畑に囲まれた田舎道の上にぽつぽつと白いチラシの切れ端が落ちていた。
〈いやいや、ヘンゼルとグレーテルかよ〉
 心の中でツッコミながら、もう一度切れ端を見つめる。一体どんな「爽やかな」物を載せてたんだろう。
〈爽やかな……後味のガムとか? イケメ

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【詩】秋の行進曲

【詩】秋の行進曲

木の実と葉が織り成す秋の絨毯
冬の装いした動物たち
淡い靄を夕暮れが染めて
長い夜の帳がおりる
秋の虫のすずやかな声
梟はホウとため息
アンドロメダは冷たく光って
眠る森を見守っている
目が醒めないことを覚悟しながら
寝床についた動物たちも
麗らかな朝日に秋を感じて
安堵に胸をなでおろし
短い秋を精一杯に
駆け抜けてゆく

みなさんこんにちは。
今回も #シロクマ文芸部#お遊び企画 に参加し

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魔人の燐寸

魔人の燐寸

 金色に燃え上がる林檎は、眩しく、暖かく、夜空に高く浮いてまるで太陽のように豊かな光を降らせると、華やかに散りました。後には星屑が舞っています。アンネは感動でくっと息を飲みました。
 少女の手には、森の中で見つけた燐寸(マッチ)がまだ二本、握られています。その燐寸が入っていた箱には、こう書かれていました。

《森で見つけた枯れ枝にこの燐寸の炎を移して、捧げ物をくべなさい。それに見合う幻想をお見せし

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【短編】雨の秘境

【短編】雨の秘境

 夕焼けは煮え崩れる玉ねぎのように甘く溶けだして、降り止むことを知らない雨を黄金に染めた。

 千年もの間、雨が降り続けている街・深水(シンスイ)は、区域全体の九割が水の中にある。この永い雨災に見舞われるようになってから、深水の民は水に浮く建物を造るようになり、その中で暮らすようになった。人間の「慣れ」というのは凄まじいもので、百年も経てば皆、この不思議な暮らしぶりにすっかり適応した。それから千年

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【掌編小説】サラマンダーの息吹

【掌編小説】サラマンダーの息吹

 風の色に鉄錆のような赤が混ざり始めたのを見て、ムゥジは慌てて自宅へ駆け戻った。
「赤風が来そうだ」
 ムゥジが戻ってきたのに気がついたドリィは、
「あら、今日はそんな予報あったかしら」
 と首を傾げる。
「最近は急に赤風が吹くことが多くなったからなあ。もうこの村も住めなくなる日が近いのかもしれん」
 ムゥジは静かに眉根を寄せながらゴーグルとマスクを外すと、身体中に付着した赤風の粉を吸着シートで拭

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架空植物記《ヨルアオイ》

架空植物記《ヨルアオイ》

 月の色に染まりあがった夜花を見て私は息を飲んだ。
眩い銀色の花弁からはらりと露を零すと、耐えかねたようにひとつ、またひとつ、花が崩れていった。 

 ヨルアオイは自ら死を選ぶ珍しい植物だ。
 中秋の満月の日に一斉に溶けだしてしまうことで、辺り一帯を水溜まりに変えてしまう。そうすると、そこにいたほかの植物たちはじき死んでしまうのだ。
 今まさに、美しい花の群れはみるみるほどけてゆき、次第に満月のよ

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【ショートショート】ひみつきち

【ショートショート】ひみつきち

「懐かしいって思っちまうんだよ、俺くらいん歳になるとさあ」
「えー、でも店長が食べてた時と全然違うよ絶対!  同じに見えても進化してるんだからあ。今度渋谷連れてってあげよーか?」
 葉月の提案に店長は眉をしかめて首を振ると、
「いやいや、中学生とおじさんが一緒に歩いてたら周りから変な目で見られでしょ、やだよ」 
 掠れた声で軽く笑った。

 ここは、家に居場所がない子どもたちがやってくる子どものた

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【詩】レモンのうた

【詩】レモンのうた

レモンから
爽やかなうたが
聴こえてくるよ
耳にも鮮やかな黄色い声色に
甘酸っぱくてフレッシュな旋律で
まあるいからだを朗らかに揺らしながら
陽気な太陽のうたをとても愉快に歌っているよ
けれどもママがぎゅうぎゅうレモンを絞りあげ
「かわいいかわいい私の坊や、どうぞ召し上がれ」
おいしいレモンのパイにしちゃったもんだから
ぼくはちょっぴり悲しくなっちゃった
けれども今度はぼくのおなかから
あのうたが

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【掌編】誕生

【掌編】誕生

流れ星が賑やかな夜、
一つだけ仲間とはぐれたその星は、
ツーと夜空を滑って湖に落ちると
たちまち虹色の閃光を広げて辺りを燃やしていった──

 小夜子は胸の苦しさに目を覚ましたが、心は先程まで見ていた夢に抱かれたままだった。
 星が湖をはげしく燃やし尽くす光景の、なんと美しいことか……しかし、そのえも言われぬ美しさにはどこか背徳の影が色濃く差していた。

〈正吉さんに話したら何と仰るかしら〉
 小

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【詩小説】月患い

【詩小説】月患い

今朝の月の、なんと幸の薄そうなこと
ぼうっと白く、息も絶え絶え浮かんでる
「まるで姉様みたい」
自分の口からついて出た言葉に
自分がいちばん驚いていた

病弱な姉様が羨ましかった
めらめらと嫉妬が燃え上がる
太陽の如き私の心は
きっと醜くてあさましいんでしょうけれど

でも、姉様?
お母様の御心も、
そしてあの方の御心も、
貴方にかかりきりなのよ

だから姉様
ずっと消えないでいて

消えてしまっ

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【詩】黒い花火

【詩】黒い花火

花火と手をつないで
夜空に打ち上がってしまいたい
ぱっと弾けたら消えたふりをして
そっと君の白シャツを火薬色に染めてやる
#シロクマ文芸部 に参加させていただいております。 #花火と手 #詩

【掌編】狸の夢

【掌編】狸の夢

夏の雲は空を流れて何処へゆくのだろうか。

弥助は、墓地が見える丘で寝転がりながら煙草をくわえた。紫色の煙が空に向かって昇ってゆく。 
お盆だというのに、この墓地には人っ子一人いない。貧しい弥助は、お下がりを頂戴しにわざわざやって来たのだったが、あてが外れてがっかりしていた。

「一体どんなやつが眠ってるって言うんだ?」
弥助はふらふらと立ち上がって、お盆参りにも来て貰えない仏たちを興味本位で見て

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