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詩集:自家中読

14
生活の中から生まれた言葉を縫い止めた刺繍。つれづれ。記録。
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#言葉

つもり、だった

つもり、だった

それなりにがんばってる
つもりだった

仕事して
子どもたちと過ごして
家事やって

たまに体力もたなくて
寝落ちて起きて
夜中にキッチン片付けて

そこで限界が来て
床で寝て
お風呂入れなくて
朝4時にシャワー浴びて
また一日が始まって

うまくいかなかったことも
ちょっとした不安も
見えない先のことも

連絡する余裕もなかったら
相談する余力もなかったら
いつの間にか無関心だけが返ってきた

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第九、うれしみをうたう

第九、うれしみをうたう

ゆうべの夜空を見上げし君と
月影、背に浴び駆け行く僕は

スピカ目指せば
結ばるだろうか

レグルス胸にいだきて走るよ

翼なくとも
翔べるかのような

逸りて行かんよ
その手を取りに

忘れじ
(彼の道)
迷わず行けよ

もしもし、ほんね

もしもし、ほんね

うん
あー、元気
(胃が痛くて毎日薬飲んでる)

特に変わりないよ
(消えたいと思う日もあるよ)

ちょっと…そうだね、落ち着いたら
うん、また行けたらと思ってる
(行けない。顔を見たら糸が切れそうで)

え?うん、子どもたち?
元気だよ、全然、もう背だって追い越されそう
(独り立ちまで指折してる)

そうだねー、仕事忙しいみたい
なかなか、休みも疲れてるみたいだし
(知らない、もう業務連絡以外し

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とまれない。私たちは

とまれない。私たちは

いいんじゃないかと思う

たとえ今日
一歩も進めてなくても
何ひとつ成し遂げてなくても
筆が進んでなくても
心が動いてなくても
隣のあの子より問題が解けてなくても
笑ってなくても
泣いてなくても
別れられなくても
届かなくても
言えなくても
怒れなくても
悲しめなくても
歌えなくても
満足な呼吸ができなかったとしても

放っといても、周ってるし回ってる

全部投げ出して停まっても

この惑星にいる

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さらば 遠心力

さらば 遠心力

25時の電話で思いを伝えあった
あのときの私たちに
信じられるだろうか

爛れた20時の朝食に笑いあった
あの日の私たちに
伝わるだろうか

あのころ私たちを隔てていた
物理的な距離は
無意味なマイルだったのに
いま
近くにいたはずの私たちの心は
月まで届くほどの場所で
さみしい岐路に立っている

写真で届いたオリオンの光を
なによりあたたかく感じた夜
同じ星をどこかで見上げあっていただけで
幸せ

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せつぞくしのタンゴ

せつぞくしのタンゴ

何度も
思い出してしまう
他愛ないやり取りだったのに

お守りのように
見つめてしまう
無機質な着信の文字を

近づけない距離だから
むやみに考えてしまう
でも
届かない手だから
むしろ安心してしまう

なのに
ガラス越しの横顔が
電話越しの声が
業務連絡の文字が
私を揺らすのは事実で
細胞の振るえを起こすのも事実だ
そして
この思いに先がないことも
紛れもない事実

だけど
行くあてのない思いだ

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