人がキレるとき何が起きているのか。
今回は、「人がキレるとき何が起きているのか」というお話しをしていくんですが、
パートナーに限らず、子ども、親、その他の家族、恋人、友人、会社の人たち・・・あらゆる人間関係に当てはまるお話です。
そして、自分は違うけれど、近くにイライラしたり、キレやすい人がいるという方にも読んでもらえたらいいなと思っています。
イメージしやすいように具体的な事例を使いたいんですが、今回の事例は、さまざまな過去のご相談を断片的に切り貼りして、エッセンスをぎゅぎゅっと凝縮したフィクションです。
まれに「わたしのことですよね?笑」と言う方もいるんですが、了承なくセッションでお伺いした個人的なお話を掲載することはありません。
「わたしのこと?」と感じた方は、こういうのって自分だけじゃないんだ、解決の視点は一体どこなんだろう・・・という気持ちで読み進めていってくださいね。
さて、
Aさん42歳は、中堅企業に勤めるしっかり者で、常識や、中長期的な計画性を重んじる勤勉な女性。
幼少の頃、家庭の都合で経済的な困難を経験しており、おとなになってからは、再び経済的困難に陥ることがないよう、経済的自立を第一優先に、スキルアップ、貯蓄、運用を手堅く行ってきた。
でも、どんなにお金を増やしても、経済的な不安が消えることはなかった。
とにかく、老後が不安で不安で仕方がなかった。
その上・・・
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
夫とは5年前に結婚した。
キャリア優先で、自他ともに認める堅物、べきねばの強いわたしに対して、
彼は楽しいことが大好き、気前が良く、細かいことは気にしないおおらかな性格で、小さなことでくよくよしがちなわたしを、いつも「大丈夫、大丈夫」と言って、笑って安心させてくれた。
仕事も真面目に頑張っているようだし、この人となら、協力し合って、ささやかだけど、精神的にも経済的にも安定した家庭が築けるに違いない。
本当に幸せだった。
結婚後ほどなくして、夫の借金が発覚した。
複数のクレジットカード会社からの借り入れが300万円。
趣味や遊びに注ぎ込んだお金だそうだ。
ファッション、車、旅行、飲食、交遊費・・・
身の丈を完全に超えた、見栄のための借金。
今思えば、収入の割に高級志向で、「ん?」と違和感を感じたこともあったが、当時は恋愛感情に流されて、ないことにしてしまった。
わたしは逆上した。
毎日毎日、夫を責めて、責めて、責めまくった。
もうあなたのことは信用できない!
これからの人生、老後のことはどう考えているんだ!
こんなことならあなたと結婚なんかしなかった!
ふざけるな!と。
幸いにもわたしたちには定職があるし、わたしにはそれなりの貯蓄もある。
300万円はとんでもない大金だが、それで人生が終わるようなことはないと頭ではわかっている。
夫も反省した様子で、謝り、これからはきちんとすると言ってくれている。
でも、この腸が煮えくり返るような猛烈な怒りが収まることはない。
いや、むしろ激情はどんどん増していった。
ついに、わたしは夫に手をあげた。
人格否定の言葉もぶつけた。
通帳もカードも取り上げ、彼の自由になるお金をなくした。
当然のことだと思った。
それが、彼を「更生」させ、二人が幸せにやっていくための唯一の方法だと思った。
罰と叱責。
痛く、怖い思いをしなければ人は変わらない。
事の重大さを彼が理解するまで、本当に変わったとわたしが納得して安心するまで、監視し続けなければならない。
それなのに、あろうことか彼は、わたしのことをDV妻、モラハラ妻だと言って反撃してきた。
は?
悪いのはあなたじゃないか・・・
わたしは妻として当然のことをしているだけのに!
あなたには再教育してくれる人間が必要なんだよ!
それなのに、なぜわたしが悪者扱いされないければいけないの!
わたしが主導して、専門家に相談しながら、無理のない返済計画を立てた。
各種事務手続きも、主体はわたしだった。
当の本人は他人事のような態度で、まるで拗ねきった思春期の少年のようだ。
こんな男をつかまえてしまった自分に心底腹が立つ。
よりによって、こんなに経済観念も計画性もない男を・・・
わたしが人生で一番避けたかったことじゃないか!
あとは、何年かに渡って、彼の給料の中から地道に返済していくだけという段になった。
しかし、金利のことや、何より、そんな忌まわしい借金がこの世に存在しているというストレスに耐えかねたわたしが、結局、全額一括返済した。
彼から、わたしに返済してもらうという形にしたのだ。
ようやくと一段落したものの、残ったのは、家庭内別居のような殺伐とした空気と、必死の思いで貯めた大金を失った恨みだけだった。
あれから4年、今だにその状態が続いている。
夫の浪費癖は、改善傾向にはあるが、まだまだ油断はできない。
でも・・・
夫は根っからの悪人ではない。
優しいところもあるし、楽しかった頃のことを考えると離婚にも踏み切れない。
今だって、歩み寄ろうとしてくれていると感じるときもあるし、彼なりに頑張ってくれていると思う。
本当はわたしはまだ彼のことが好きなのだ。
だけど・・・
どうしても許せない。
今もあのときの怒りがぶり返し、事あるごとにきつく当たったり、ちくちくと嫌味を言ってしまう。
本当はやめたいのに、身体が勝手に反応してしまう。
彼が無感情になり、心が離れていくのがわかる。
彼の顔がどんどん死んでいく。
もし、仲直りできるなら・・・
でも、どうしても許せない・・・
もう頭の中がぐちゃぐちゃだ・・・
こんなはずではなかったのに・・・
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本当にきついですよね。
女性読者のみなさんの、「キレて当然!離婚だ、離婚!」という声が聞こえてきそうです。
あるいは、「彼も極悪人じゃなさそうだし、反省もしているんだから、そろそろ許してあげれば?」派も多いと思います。
わたしもですね、一友人としての立場であれば、「なにそれ、マジでないわー」と共感しきりに不平、不満、愚痴を聞き、束の間のストレス発散に付き合うのかもしれませんが、
心理セラピストとしての視点はちょっと違うんですね。
解決の方向性は、彼の再教育でも、効率の良い返済でも、老後資金を増やすことでも、離婚するしないでもなく、
Aさんが「落ち着いて、考えられるようになる」ことです。
え?そんなこと?
凡庸過ぎる?笑
いやいや、侮ることなかれ。
これ、結構深い話なんですよ。
続く・・・
https://note.com/purification009/n/n69160cbe5c3d
心理セラピスト石橋亜紀
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