- 運営しているクリエイター
2020年4月の記事一覧
短編小説 パーティー
お菓子を食べたくて食べたくて仕方ない日があって、それが今日だった。
カフェでパフェを一つ、というわけにいかないのがこの感情の厄介なところで詩乃はコンビニに寄った。買い物かごを持つとスイーツコーナーにあるシュークリームやチーズケーキ、大福などを一つづつ全てカゴに入れた。お菓子のコーナーに行ってチョコレートと書いてあるものもカゴに入れた。ついでに甘いカフェオレと炭酸飲料も。五千円弱、これが今日の夕飯に
短編小説 海からやって来る
赤ん坊がいた。赤ん坊は月のカプセルで育てられた。海のような乗り物に乗って、子供のいないつがいのもとに届けられるのである。種族差別が存在するので、一つに限って嫌いな種族を選べる。赤ん坊がやってきた後は両親が祝福をして、カプセルは海のように帰る。
熊と人間のつがいが居た。一緒に暮らすうち子供のいないことが哀しくなり月にお願いをした。しかし赤ん坊は一向にやって来ない。熊は伏せり、人間は不幸を嘆いた
短編小説 Haircut
ハサミを持った妻が鼻歌を歌っている。椅子に腰かけた俺に頭から真ん中をくり抜いたゴミ袋をかける。床にはもう新聞を一面に敷いてある。
妻に髪を切ってもらうのは初めてだ。妻の方は幼い娘の髪を切っているので自信満々である。だから良いかな、と軽い気持ちで頼む気になった。
ザシュッ、と背中で音がした。
「なに、今の」
「断髪式よ、おすもうさんだって最初は長いところから切るでしょ?」
妻の鼻歌は止まらない
短編小説 ニブンノイチ
悠は瑞希の咥えているポッキーを反対側から摘んで折った。瑞希のポッキーは半分悠のものとなる。二人は咀嚼し、同時に飲み込んだ。
「のどがかわいた」
甘いものが苦手な悠は瑞希の前からキッチンに向かって歩き出す。
「一本の半分だよ?」
信じられないといった声で瑞希が返すと小さく笑って悠はマグカップを二つ取り出す。悠はブラックコーヒー、瑞希は砂糖を入れないソイラテがいつものやつだった。
「一緒に暮らし