仲村ぷる #短編小説

1000字ほどの短編小説を月一くらいで投稿してます

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最近の記事

「真由はアンダルシアの夢を見る」は、にじむラさん主催の「闇鍋ブンガク」に出させて頂いた作品です。3500字位の短編小説です。

    • 短編小説 真由はアンダルシアの夢を見る

      「寒くなってきたから上着が欲しい」と言った事を覚えていたのだろうか。お母さんは真由にダウンジャケットをくれた。  焦茶色で、襟の部分にファーで縁取りがしてある古い型のダウンジャケットである。去年まではお母さんが着ていたダウンジャケット。お母さんは真由にお下がりをくれたのだ。  うちは母子家庭だが、貧乏な思いをしたことはない。修学旅行も行けたし、三食食べている。だが服に限ってはお母さんのお下がりしか貰った事がない。  玄関のハンガーラックには真新しいコートが掛かっている。ベージ

      • 短編小説 ロンサム・イマジネーション

         痒かった。風呂上がりは血流が良くなるので特に痒かった。義雄は首筋を掻きながらスマホの画面に見入っていた。  LINEのトーク画面を開き、眺めた。別れは会ってしたい、と善男は言い、七海はもう別れたの一点張りである。大方七海に好きな人が出来たとか、そんなものなのだろうが義雄の怒りは収まらない。別れを文字で済ますなど人として間違っていると思う。しかし七海の家まで会いに行って、家族に警察でも呼ばれたらと思うと義雄の足は動かない。  七海は若い。義雄より十は若い。気の置けない仲間と

        • 1000字で短編小説を書いていたのが100作目になりました よろしかったらご覧ください!

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        • 短編小説
          2本
        • 短編小説1000字2つ目
          1本
        • 短編小説1000字
          100本
        • エッセイ
          5本

        記事

          短編小説 他人の女

           西陽が車の中に差し込み、藍はサンバイザーを下ろした。赤信号の間ぼんやりと横断歩道を歩く親子連れを見ている。 「結婚したの」と連絡を寄越した元カノは、別に幸せそうじゃなかった。懐かしいね、としおらしく切り出せばランチの誘いにホイホイ乗ってきた。  後ろの車のクラクションが鳴る。藍は車を発進させると舌打ちをした。景色の流れる速度は遅かったが無用にアクセルを踏んだりはしない。  シャンパンをグラスで飲ませた。元カノと付き合っている時にはこんな風にカッコつけた事はなかった。昔

          短編小説 他人の女

          短編小説 マッチの男

           随分と肩身が狭くなってしまったが、良樹は喫煙者だった。子連れの母達が生活圏のトイレの場所を把握しているように喫煙できるスポットを良樹は知っていた。  この小さな公園に隣接するコンビニには、細長い灰皿が置いてある事は知っていた。ただ、いつ撤去されたのかは知らなかった。 「まいったな」  この辺りの吸える場所はあとは個人経営の喫茶店だけでそこのマスターは話好きなのだ。良樹が煙草を吸いたい時は、大体精神を集中させたい時で、話好きと喫煙は相性が悪い。 「あれ?」  向こうからやっ

          短編小説 マッチの男

          小説よりエッセイの方が読んでもらいやすいのかな でも短編小説頑張ります

          小説よりエッセイの方が読んでもらいやすいのかな でも短編小説頑張ります

          決まったハッシュタグを付けて4本以上記事を書くと、抽選で10名にnote限定グッズをプレゼントというイベントに参加したくてエッセイを書きました。 当たるといいなー🥰

          決まったハッシュタグを付けて4本以上記事を書くと、抽選で10名にnote限定グッズをプレゼントというイベントに参加したくてエッセイを書きました。 当たるといいなー🥰

          #散歩日記

           いつだったか散歩している時、カラスが鳴いていたんですね。ただ鳴いていたわけじゃなくて発情しているような、ねっとりしたカーアカーアっていう声で。  住居の敷地に大きな木があって、そこの枝に巣を作っているのがわかりました。おもわず微笑ましくて眺めていたんですよね、歩きながら。  通り過ぎた辺りで、カラスが私の頭スレスレを飛んだんですね、びっくりしました。こんな近くを通ったということは威嚇されたんだと思いました。  カラスも子育て中で警戒してたんでしょう。ひえー、ここを歩くの

          #うちの積読を紹介する

           私は小説も買いますが、時々でしかも買ったらすぐに読むことが多く、積むことはあまりありません。  何が積読になるかというと、語学の本です。特に台湾華語の本は見つけると買ってしまいます。  辞書、漢字ドリルから始まり漫画風語学入門、台湾の屋台の本、台湾ご飯のレシピ本、これさえ言えればOKなフレーズ本、単語の本、果てはるるぶまで……と台湾が付けば何でも手に入れたくて仕方なくなるのです。  こんなに本を持っていれば少しくらい話せてもいいような気がします。でも私は発音で何年も止ま

          #うちの積読を紹介する

          #私の作品紹介

           私は月一くらいで1000字くらいの短編小説を書いています。気軽に読んでもらえて自分が更新しやすいのがいいかな、と思いこの形に落ち着きました。 結婚適齢期 https://note.com/pul_t/n/n97feaf103110 これは最近書いたもので、スキが多いものです。おすすめはこういったものを選べばいいのかな、と載せてみました。 明日を超えて https://note.com/pul_t/n/n11d7f0cd4c2b これは私の好きなタイプの小説です。芸能人

          #今日のおうちごはん

           私は外食が好きです。自炊はあまり好きではありません。けど、栄養やお金のことを考えると自炊ばかりになっています。  なぜ自炊が嫌なのかというと、母親が自炊しかしなかったからです。外食は悪とばかりにご飯もおやつも自炊でした。  少し大きくなると友達と遊びに行き、一緒にランチを食べる事も必要になります。マクドナルドでジュースを飲むのが私の憧れでもあったのです。幸いお小遣いを貰って友人とファストフードへ行く夢も叶ったのですが、私は今でも外食が好きです。  私の母親は過保護でした。新

          #今日のおうちごはん

          短編小説 運命の人

           鼻の大きな人だった。鼻の左横にはおできのような大きなほくろもあった。奈津子は卓司の鼻から目が離せなかった。  じっと見ているのが失礼な事だとわかっている。だが駄目だと思えば思うほど、卓司の鼻が気になる。大きな鼻が好みな訳ではない。ただ、顔の真ん中で主張する鼻が奈津子の心を掴んだのは確かだった。  卓司は微笑んだまま、スープを飲み、サラダを食べ、肉を咀嚼し、時々他愛ない会話を奈津子に振った。奈津子は気が気ではないまま卓司に遅れないよう食事を取った。会話など相槌を打つのが精一杯

          短編小説 運命の人

          短編小説 結婚適齢期

           アニサキスを見たのは初めてだった。切り身の鰤に塩を振る時に気がついた。キッチンペーパーを一枚取りアニサキスを引き出す。節のないミミズのようなそれを取り除き、手順通りに塩を振る。行洋は無の境地でそれを魚焼きグリルの中に置いた。火をつけると次第に鰤の焼ける良い香りが立ち上ってくる。しかし食べる時にアニサキスの事を忘れられるだろうか。  行洋が自炊を始めたのは不摂生が祟り健康診断でCを貰った為だったが、料理とはなかなか楽しいものだと気付いた。季節のものは安いし、美味い。趣味と言

          短編小説 結婚適齢期

          短編小説 デビュー

           今日もチケットは売れない。タクミはあと二十枚ほどある自分のライブのチケットを眺めながら短く息を吐いた。  売れる人には売ってしまった後である。初めは付き合いで買ってくれる人もいてなんとか捌けた枚数だが、毎回となると厳しいのである。タクミは月一でライブをしている。  弾き語りのアコースティックなライブである。いつかはバンドを組みたいが、まだいい出会いがない。何曲かはカバーをやるがオリジナルで勝負したい。タクミはチケットをしまいながら再度、ため息をついた。  路上で歌って、数

          短編小説 デビュー

          短編小説 愛を教えなかった女

           心は目の前にいる愛すべき汚れた男を睨みつけた。鳴海は首を横に曲げ遠くをぼんやりと眺めている。反省しているようには見えなかった。ただ、この嫌な空気が流れている瞬間をやり過ごしているように見えた。 「言い訳くらい、してよ」  心はやっとの事で声を絞り出したが鳴海はどこか他人事だった。 「言い訳、しないよ。浮気というか……」 「向こうが本気だってこと?」 「いや……何というか。みんな同じというか」 「二股?」  心は問いながら鳴海の言葉を補ってあげている自分に情けなさを感じた。

          短編小説 愛を教えなかった女