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蝉の声—七月二十一日
まるでひかり
のようにふりそそぐ
こえ
ぼらけ あさ
ひとり
ぶらつく町並み
しずけさとあつさ
まだじっとり 寝汗
べたべた じっとり
おはだも じっとり
おでこも じっとり
じっとり 鼻のした
素晴らしいなんて知らなかった
夏が
軽井沢の風景
ヴァカンスというやつ
響き始めるまで
がやがやと
たわむれる 老婆
わちゃわちゃ のっそり
ちょうのように
舞う
しずんで
反響
ひかれあい
『人間の朝はなかなかに遅い』
切り裂くような、
感電的な、
暴風が、
東鞍馬口の通りを、
過ぎ去っていったのち、
ほんの少しの間、
神が莨を一服すると、
もやが、
狸谷山不動尊のあたりを、
駆け下りてゆき、
末広がりに町中を、
駆け巡ったのち、
朝というものが始まった。
コツコツコツコツ、
ハアハアハアハア、
コツコツコツコツ、
ハアハアハアハア、
プシュー、プシュー、
ばたん、ばたん、
タタタタタタ、
タタ
ペアレンツ・コンプレックスについての一考察
引き続ける親父
引かれ続ける母親
これが私の両親の抽象的表象のようだ
俺という存在は押しつぶされ
まるでゴミムシのよう
これがペアレンツ・コンプレックスというやつか
つまりは一つには
ゴミムシのようにつぶされること
二つには
ゴミムシのように這い上がること
息子はいつまでも呪縛から解き放たれない
現れは様々だ
一般的に
普通の存在者としてある場合
いわゆる引きこもりになる場合
はたまた有名企業の
詩を作るということについての一省察
全く無感覚な人間どもの遠吠えが
臆面もなく響き渡る世の中で
俺は俺という死骸を一つ見つけた
縮こまり暖かく純粋で
開かれたまなこは木々の揺らぎを見る
まるで赤子のように
やわらかい頬がふんわりと
産毛がすべてを覆い手は泥だらけ
涙がみずみずしく流れる
墓石たちを見て
遠くのビル群を見て
俺は
両手で顔をおおった
さらば今日、来たれ明日
光りの満ちる川辺で
俺は一人真実という釣り糸を垂らす
俺は大人になってしまった
それしかない、という感覚を失ってしまったようだ
若者の文化、それらを受け入れられない自分に気づいてしまった
考えて見れば、あの遠い羨望のような——あの何もなかった——永遠を知っていた——そんな時代に
限られているという事のなんと素晴らしい事か!
私にはこれしかないと信じられることのなんと素晴らしいことか!
恐ろしげな微笑が頭をもたげ始めてから
そしてそれが自分にいつの間にか乗り移ってしまってから