『人間の朝はなかなかに遅い』
切り裂くような、
感電的な、
暴風が、
東鞍馬口の通りを、
過ぎ去っていったのち、
ほんの少しの間、
神が莨を一服すると、
もやが、
狸谷山不動尊のあたりを、
駆け下りてゆき、
末広がりに町中を、
駆け巡ったのち、
朝というものが始まった。
コツコツコツコツ、
ハアハアハアハア、
コツコツコツコツ、
ハアハアハアハア、
プシュー、プシュー、
ばたん、ばたん、
タタタタタタ、
タタタタタタ、
カツカツカツカツ、
カツカツカツカツ、
シュー、シュー、
シャー、シャー、
キャキャキャ、キャキャキャ、
ワーワーワーワー、
キャキャキャ、キャキャキャ、
ワーワーワーワー、
(老婆がおじきを、
ランナーはハイ、
ドアたちは猛り、
サラリーマンが 急ぎ足、
車が十字に走ったら、
そのあと子らが 騒ぎ出す、
朝の始まり 人の始まり。)