救済についての一考察

十字架に括りつけられた女が
憎悪のまなざしで群衆を見る時
一匹の白鳥が
彼女の上空を舞った

火はつけられ
ただれていく表皮を見つめながら
そして口から泡を噴きながら
女は罵倒の声を聞いたのだった

『いい気味だ
お前のような少女が神を語るなど
千年早い
この地上に神が来るのは
もっと先でいい
縄を引きちぎってみろ
その十字架を砕いてみろ
お前が神の代行者だと言うなら
やって見せろ』

突如として十字架は薙ぎ倒された
女の体は下敷きになり
人々は半ば炭になりながら震え睨みつける
白濁した眼球を見た

口から臓物が飛び出し
(人々の中には後ずさりした者もいた)
痙攣かそれとも彼女の意志か(それとも寒さのせいか)
彼女の激震はとまらなかった

神よ
私に人々を愚弄させてください
高笑いという名の救済を
(そう言うと彼女は再び業火の中に身をやつしたのだった)




明くる朝
炭となった彼女の肉体を
痩せこけた子供たちがくだらなそうに
裸足で弄くりまわした

そして
一人の少女が冬の冷気に晒された手を
そおっと自らの額に当てた
神秘が受胎した瞬間であった

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