四時限目、自然科学
これは私が高校生の頃に選択し受けていた授業「自然科学」の話です。
学生の頃、もしくは現役の学生は学校にいませんか?こんな先生。
自然科学
これは私が高校三年生の頃の話です。
確か1週間に1回だけ、どこかの曜日の四時限目にある選択式の授業の出来事だったと記憶しています。私は「自然科学」という科目を選択しました。
この自然科学ではどのようなことを学ぶのかというと、おそらく自然や科学といった理科系のことを学ぶのだろう(そのままだな)という、かなり適当な選び方をしました。
しかしこの授業、
先生が独特で「あの授業は意味不明なことを毎回しているらしい」という妙なウワサが学年中に流れ、他の授業を選択している生徒からも非常に注目されていました。
友達からは毎週授業が終わる度に
「今日は何をしたの?」と聞かれるほど。
この教師は男性で当時年齢は60代くらい。背は少々低めで顔の印象ははっきりとは憶えていないのですが、太眉で目が離れている感じの顔だったと思います。
自然科学の何が意味不明なのか。
おぼえている限りの不思議な授業内容をお話したいと思います。
雑草の研究
春の暖かな季節。
「今日は校内に生えている雑草をとってきて、品種を調べましょう」という先生の説明により、私たちは授業が始まり5分後には外に出ることになりました。
しかしここであることに気づきます。
“キュイーン”と機械音が聞こえてくるのです。
実はその日は雑草の刈り日で、既に業者が校内に生えている雑草を一掃したところでした。
「しまったー!雑草が刈られているゥ」と、典型的なマンガの図のようにして手で頭を抱えている先生の姿を見て、私たち生徒は
「あるのかそんなことが」と。
365日あるうち、刈るのは年に2回程度なのに。
この自然科学の授業を選択している生徒は2クラス分合わせて15人ほどおり、15人は先生の後ろをピクミンのように連なって、雑草を求め校外へ出かけました。
果物の研究
「今日は果物の研究を行います」という先生からの説明を、私たちは席について聞いていました。
先生「しまったー!果物の用意を忘れていたァ」
生徒「え?」
先生「今から買いに行ってきます!!」
生徒「!?」
授業中であるにも関わらず先生は急に果物を買いに行ってしまい、結局授業の時間内には戻って来ず。
終業のチャイムが鳴ったと同時に生徒の一部はお昼休憩に行き、一部の生徒だけで先生が戻ってくるのを見守りました。
映像を観る
「今日は映像を観ます」と先生が言うので「何の映像かなぁ」と生徒同士ソワソワしながら話していました。
先生「あれ?映像がつかないぞ?」
生徒「......」
先生「あれ?あれ?あれェ~」
30分経過。
やがて髪を金に染めた、少しばかりヤンキーに見える男の子が
「なんで毎回毎回!授業をきっちり始めろよ、準備しておけよ!」と言いながら線を繋ぎ、映像を観られる状態にセッティングしてくれました。
教室内で拍手が起こりました。
肝心の映像ディスクはありませんでした。
マンナン
先生が何らかの液体が入った瓶を見せながら「今日は実験を行います」と言いました。
実はこの回の前に火花が散る爆発系の実験を行ったのですが
「この授業で実験かよ、シャレにならないくらい怖いな」と、かつてないほど生徒は怯えていたばかりです。
この日も引き続き授業内容は実験で、取り扱う内容は液体とのこと。
しかし考える間もなく
パリーン!!
という音と共に、先生が手に持っていた瓶が割れて何らかの液体が教室に流れ出しました。
生徒「ギャァア」
先生「落としちゃったァ、これはマンナンです!」
生徒「知らねーよ、信じられないくらい臭いよ!!」
ちなみに“マンナン”とはこんにゃくの原料で、マンナンそのもののニオイは腐臭のようなものがして強烈です。食用のこんにゃくの袋を開けた時に独特のにおいがすると思いますが、イメージはあれを凝縮したものです。
生徒15人は臭いに耐えきれず避難のため教室から出たのですが、先生はひとりで処理を行っています。
すると一人の男の子が鼻を指でつまんだまま
「クソッ......しょうがねぇ奴......」と、まるで最愛の彼女を助けに行くかのようなことを言いながら、マンナンの処理を手伝いにもう一度教室へ入って行きました。
女子生徒「〇〇くんっ!!」
男子生徒「アイツ......やっぱりモテる男は違うな......!」
ゲホゲホ!!
ゴホゴホ!!
イモ掘り
先生「今日はみなさんが一年かけて育ててくれたイモを収穫します」
イモを育てたおぼえはない。
生徒一同、イモを育てていたというのはこの時が初耳である。
外に出ると「イモ堀り」の看板が。
土を掘り起こすと大小異なる大量のイモが。
学校敷地内にこんな立派なイモが植わっていたとは、驚きでした。
ちなみにこの授業で唯一教わった知識はこのイモの回で、「さつまいもは小さい方が甘い」
その日提出したプリントに私が書いたコメントは
「育てたおぼえはないが、いい思い出になりそうだ」
テスト
自然科学のテストを行いました。
テスト用紙を見ると、植物や実験のことなどこの授業の集大成とも言える質問内容が書かれていました。
しかしはっきり言って、この授業内容でテストは解ける気がしません。
テスト用紙が採点され、返却された時は驚きました。
「80点」
クラスの平均点数も80点ほど。結構優秀な生徒たち。
先生「三角は丸です」
生徒「じゃあ、丸は?」
先生「丸も丸です。たまに二重丸と花丸です」
......だから点数が良いのか。
私が入部していた部活動の先生の話によると、「自然科学の先生は何らかの研究成果を収めたすごい先生らしいよ」とのこと。
天才ということもあってか、授業を行うのは少々苦手だったのかもしれません。
この授業で何を学んだのかと聞かれると
「何事も準備はしっかりしておくことが大切であるということ」といったところでしょうか。
意外と、他のどの授業よりも学ぶことがあったような気がします。
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