- 運営しているクリエイター
2021年10月の記事一覧
それがそこにあるということ「星の歌」13
after
季節が巡り
雪は溶け 花は咲き 葉は茂る
――鳥の姿はそこにはなかった
森は噂する あの鳥はまたどこかに旅に出たのだと
川は囁く あの鳥は星になったのだと
その鳥の行方を 風だけが知っていた
鳥はまた旅に出ることにした
虹でもなく 星でもなく 何かを探して
ふと立ち寄った崖に
一本の木が佇んでいた
その木にとまり 夜空を見ては
木の葉の囁きに耳を澄ませて 何かを歌うように鳴
それがそこにあるということ「星の歌」12 その2
after
雲の下から見下ろした世界は
どこまでも続いていて それが全てだと鳥と石は思った
石は星ではないということが あの星のように輝くことはないということが
この旅でわかっただけでも 充分だったのかもしれない
鳥が地面に降り立った瞬間 突然だった
石は嘴の先で砕けて 風に塵が運ばれた
本当に星でなくて よかったのかもしれない
彼方の星だったら こうして旅をすることも なかったのだから
それがそこにあるということ「星の歌」12 その1
雲の下から見下ろした世界は
どこまでも続いていて それが全てだと鳥と石は思った
地面に降り立った瞬間
突然だった
石は嘴の先で砕けた
風に塵が運ばれた
鳥は必死に探した 呼びかけた
どこにも見つからなかった
誰も 何も 答えなかった
風が一際強く吹いた
石の声が聞こえた気がした
探して ないて ないて 探した
雨の日も 風の日も 晴れの日も 雪の日も
それがそこにあるということ「星の歌」10~11
after
10
森を見渡せば 一面の緑の海原のようで
風が吹けば海の波のようにうねり そよぎ 小波のように揺れた
雲は刻々と形を変え 空の色は変わっていく
それでも山だけは何も変わることなくそこにあり続けた
鳥は風に乗り 石は鳥に乗り 風は葉を運んだ
励ますように 鳥が迷った時は石が助言をした
石が判断できない時は風に乗る葉が先を示した
山に登ればきっとあの星に届く 石も鳥もそう思っ
それがそこにあるということ「星の歌」10
after
森を見渡せば 一面の緑の海原のようで
風が吹けば海の波のようにうねり そよぎ 小波のように揺れた
雲は刻々と形を変え 空の色は変わっていく
それでも山だけは何も変わることなくそこにあり続けた
鳥は風に乗り 石は鳥に乗り 風は葉を運んだ
励ますように 鳥が迷った時は石が助言をした
石が判断できない時は風に乗る葉が先を示した
山に登ればきっとあの星に届く 石も鳥もそう思っていた
それがそこにあるということ「星の歌」9
after
一面の砂はどこまでも広がっていて
まるで海みたいだと 鳥は思った
鳥が呟いた海という言葉を石は尋ねた
こんなふうに一面に水のある場所だと鳥は答える
鳥はかつていた森を懐かしむように語り聞かせた
その旋律がとても心地よく石の胸で波打っていた
空を奏でる虹 海の響き
木々の囁き 川の静けさ
歌いながら鳥は 旅そのものが目的になってきている気がした
虹はもう どうでもよかったのかも
それがそこにあるということ「星の歌」8
after
目覚めると空には海で見た道標が瞬いていた
風もなく静かな夜だった
雲一つない夜空に鳥は飛び立つ
耳元で囁くような 励ますように風が吹き始めた
風は弱まったり吹いたりしながら 風の歩幅に合わせるように
木の葉は地面に落ちたり 空を舞ったりをくりかえしていた
小石のそばに木の葉が舞い降りた時
突然現れた木の葉に思わず小石の胸は高鳴った
乗せてくれないかと木の葉に話しかけるも
頷く
それがそこにあるということ「星の歌」7
after
眩しさで目覚めたら
木の葉が空を横切っていった
風は颯爽と葉を運んでいく
またどこかで会えるといいね
そんな声が聞こえた気がした
風が羽を押した
小鳥は羽ばたくも
長くは続かなかった
岩に影を見つけて
小鳥は潜り込んだ
岩は小鳥に話しかけた
どこから来たのかを聞かれて
小鳥は海の向こうの森からだと答えた
岩は森を知らなかった
知っているのは砂と 太陽と 月と 星だけだった
それがそこにあるということ「星の歌」6
after
それはとある木の葉の夢だった
木に繋ぎとめられて
守られていた時のこと
散ることは死ぬことと同じだと思っていた
でもそうではなかった
木から離れた葉っぱはひらひらと落ちていく
その景色の鮮明さを 一生忘れないだろうと思った
水面に落ちてからが
本当の始まりだった
before
葉は夢を見た
かつて木に支えられて
守られていた時のこと
散っていく時のことを思い出した
散
それがそこにあるということ「星の歌」5 その2
after
小鳥は浜辺に降り立った
振り返れば海があって
目の前の砂はどこまで続いているかもわからなかった
行き先を探すように空を見上げると
星は変わらず 遠くで待ってくれているようで
星たちに囲まれるような空の下で
小鳥は束の間の夢を見る
before
鳥は愕然とした
辿り着いた場所は一面の―砂だった
そんな世界を今まで見たことがなかった
星は変わらず
遠くで待ってくれていた
それがそこにあるということ「星の歌」5 その1
辿り着いた場所は一面の砂だった
そんな世界を今まで見たことがなかった
振り返れば海があって
目の前には砂がどこまで続いているかもわからない
小鳥は行き先を探すように空を見上げた
星は変わらず 遠くで待ってくれているようだった
小鳥は星たちの下で眠る
その光は不思議と優しく見えた
それがそこにあるということ「星の歌」4
after
風が砂漠の砂粒を巻き上げる
一つの石が吹き飛ばされて転がっていく
それは風に運ばれて旅をする石
行き先を委ね
抗うこともせずに
その石は砂漠しか知らなかった
海も知らなければ 雪も知らない
川を知らなければ 虹も知らない
でもその石は星を知っていた
夜 見上げれば
そこには光があったから
その石は星になりたかった
でも石は知らなかった
憧れる彼方の星々もまた
他の星
それがそこにあるということ「星の歌」3
after
――突然
虹が消えてしまって
小鳥は呆然としてしまう
ここは見渡す限り
海だったから
羽を休める場所も
心が安らげる場所もなかった
限りのない空と海が
果てしなく続くだけ
やがてその青も赤く染まり
いつのまにか暗く溶けていくかのようで
いよいよ小鳥はどこへ行けばいいのか
心細くなって分からなくなってしまった
呼ばれた気がして見上げたら
煌めく星を見つけた
その時夜風が励ま
それがそこにあるということ「星の歌」 2before/after
after
風が吹いて 森の木の葉が一斉に揺れる
とある木にとまっていた小鳥は 空に架かる橋を見上げていた
背中を押すように 風が吹いて
羽ばたいた先は 彼方の虹
風に 導かれるように
before
小鳥はそよ風に身を委ねて飛び立つ
空に架かる橋を見上げて
鳥は あの橋を渡ってみたいと思う
背中を押すように 風が吹いた
鳥は空に向かって羽ばたいた
彼方の虹に向かって
鳥は迷わなかっ