それがそこにあるということ「星の歌」4

after

風が砂漠の砂粒を巻き上げる
一つの石が吹き飛ばされて転がっていく

それは風に運ばれて旅をする石

行き先を委ね
抗うこともせずに

その石は砂漠しか知らなかった

海も知らなければ 雪も知らない
川を知らなければ 虹も知らない

でもその石は星を知っていた

夜 見上げれば
そこには光があったから

その石は星になりたかった

でも石は知らなかった
憧れる彼方の星々もまた

他の星に照らされているということを

before

風が砂漠の砂粒を巻き上げる
一つの石が吹き飛ばされて転がっていく

――それは風によって旅をする石

元々は岩だった

朝と夜
太陽のような暑さと月のような冷たさを経て
風によって 日々体を削られて
やがて小石程度の大きさになり
―風に運ばれていく…

行き先を委ね
抗うこともせずに―淡々と

その石は砂漠しか知らなかった

海も知らなければ 雪も知らない
川を知らなければ 虹も知らない

でもその石は星を知っていた

夜 見上げれば そこには光があったから

あんな遠いところに自分の仲間達がいる
その点の光は自分と同じくらい小さな光だから

石は夜空に願う

石は星になりたかった
あんなふうに輝きたかった

でも石は知らなかった

憧れる彼方の星々もまた
他の星に照らされているのだということを




詩人です。出版もしております。マガジンで書籍のご案内もいたしております。頂いたサポートは出版の費用にさせていただきます。