それがそこにあるということ「星の歌」7

after

眩しさで目覚めたら
木の葉が空を横切っていった

風は颯爽と葉を運んでいく
またどこかで会えるといいね

そんな声が聞こえた気がした
風が羽を押した

小鳥は羽ばたくも
長くは続かなかった

岩に影を見つけて
小鳥は潜り込んだ

岩は小鳥に話しかけた
どこから来たのかを聞かれて
小鳥は海の向こうの森からだと答えた

岩は森を知らなかった
知っているのは砂と 太陽と 月と 星だけだった
でも岩にとっては それで十分だった

暑さに慣れない小鳥に
岩は日が沈むまで待つように言って
珍しい客人に空に浮かび上がる星を目指せばいいと道案内をする

小鳥は羽を畳んで 目を瞑る

ずっと何かを追いかけていた
それが最初は虹だったことを
長らく―忘れていた…

その先には何があるのだろう
何があったのだろう
それだけで旅に出るには十分な理由だった

before

葉は再び風の旅人となる
またね
どこかで会えるといいね
風は颯爽と葉を運んでいく

見送った鳥の心に穴が空く気がした
鳥は――でも
一緒に行くことはしなかった

それは葉だけの道だから
分かっていた
自分には自分の道があることが

たまたま一緒にいるだけ
ずっと一緒にはいられないということ

風が羽を押した
行くよ
その風は力強く言う

空を滑空するように
鳥は飛んだ

でもそれは長くは持たなかった

ここは暑すぎる
休まなければ体が保たない

そんな時に岩に引っかかる葉を見た

また会ったね
葉は笑った

その後ろの影に鳥は潜り込んだ

岩は話しかける
どこから来たのかを

鳥は答える
森から

葉は答える
海の先から

――森――と――海……

岩は森を知らなかった
知っているのは砂と 太陽と 月と 星だけだった
でも岩にとっては それで十分だった

岩は教えてくれた礼だと言って
導を鳥に教えてあげた

日が沈んでから行くといい
空に浮かび上がる星を目指せばいい

今は休むといい
また長い旅が始まるから

鳥は翼を畳み
目を瞑る

ずっと何かを追いかけていた
それが最初は虹だったことを
長らく―忘れていた…

ずっと何かを追いかけていた
でもどうして追いかけているのか
ずっと―忘れていた…

その先には何があるのだろう
何があったのだろう



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