それがそこにあるということ「星の歌」9
after
一面の砂はどこまでも広がっていて
まるで海みたいだと 鳥は思った
鳥が呟いた海という言葉を石は尋ねた
こんなふうに一面に水のある場所だと鳥は答える
鳥はかつていた森を懐かしむように語り聞かせた
その旋律がとても心地よく石の胸で波打っていた
空を奏でる虹 海の響き
木々の囁き 川の静けさ
歌いながら鳥は 旅そのものが目的になってきている気がした
虹はもう どうでもよかったのかもしれない
鳥は石の夢を見るかのように
彼方の星を見やる
その瞬きは淡く
空に沈んでいこうとしていた
地平を走るように
光が空の色を塗り替えていく
朝日が昇る
砂漠の先に広がる森が姿を現し
その向こうに 山が聳(そび)えていた
before
一面の砂はまるで海のように広大だった
どこから来たのか 石は鳥に尋ねる
鳥は答えた 海の向こうからだと
石はまた尋ねる 海とは何かと
鳥は答えた こんなふうに一面に水のある場所だと
それはどんな場所なのか 石は問う
鳥は歌うように聞かせた
空を跨ぐ虹を
海の静けさを
木々の囁きを
川の美しさを
石は多くを知っているわけではなかった
ただ―あの星に近づきたいだけだった
緑の海から虹を追いかけて
砂の海へと辿り着いてしまった鳥は既に旅自体に喜びを見出していた
移り気な鳥と違って一つの場所に留まり
気の遠くなるほど変わらない願いを持ち続ける石に―鳥は再び歌い聞かせた
―なれるよ
―きっと
鳥は石の夢を見るかのように
彼方の星を見やる
砂漠の先に森が見えた
朝日が昇る 地平に走るように
光が空の色を塗り替えた
星の瞬きは 影に隠れるように その身を空に沈ませた
どうしてだろう
星が見えなくなるのは
鳥の呟きに 石は話す
あまりに強すぎる光は 他の光をかき消してしまうから
あまりに広すぎる闇は 光を浮かび上がらせるから
闇だから光ろうとするのであり 照らすためにこそ光がある
それは言い伝えでしかなく
石はその意味を本当に分かってはいなかった
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