一般教養としてキリスト教をまなぶ。
海外の文学や哲学書を読んでいると、キリスト教に関する知識があったほうがいいな、と思うことが多々ある。
私はクリスチャンではないが、文学を読む時の「参考書」として使っている、聖書やキリスト教関連の蔵書を手元に何冊かもっている。
手元に置いていて、便利だなと思ったキリスト教関連の本をいくつか紹介してみたい。
キリスト教用語の辞書として
高尾利数(著)「キリスト教を知る事典」(東京堂出版)。この本は、キリスト教の歴史や思想史、日本とキリスト教との関係などを、学術的に正確にコンパクトにまとめている。文字通り辞書代わりに使える。とても重宝している。
へルマン・ヘッセの「車輪の下」を読んでいて「堅信礼ってなんだ?」と思ったり、ドストエフスキーを読んでいて「ウルトラモンタニズムってなんだ?」と思ったり、思想書を読んでいて「グノーシス主義ってなんだ?」と思ったりしたことはありませんか?
この本は、そういったちょっとした疑問に、ほとんどこたえてくれます。ほんとに便利です。
出典が気になったとき
やはりキリスト教を知るのに欠かせないのは「聖書」。特にオススメの聖書は、「聖書」(新共同訳)。
ご存知の方も多いと思いますが、「旧約聖書」のほとんどは「ヘブライ語」で書かれ、「新約聖書」は「ギリシア語」で書かれました。
また、キリスト教は大別すると「カトリック」と「プロテスタント」に分けられます。
同じキリスト教といっても、翻訳の仕方が異なることがあります。また、一般人が日本語で聖書を読むとき、どの聖書を読めばよいか?、と迷うことがあります。
「新共同訳」は、プロテスタントおよびカトリック両教会が、お互いに見解の相違があるにもかかわらず、互いに一致できる「聖書」として、共同で訳したものです。その意味で、日本語で読む聖書として、非常にバランスがよいと思われます。
英語学習としての聖書
英語の慣用表現には、聖書由来のものが多いです。英訳聖書を読めば、どういう文脈で使われたかと学ぶことができます。
しかし、英語で聖書すべてを読むことは、時間もかかりますし、誤解する恐れもあります。
「英語表現」を学ぶために読む本として、分かりやすいのがこちら(↓)。
この本の副題は「現代英語を読む手引き」。新聞・雑誌、演説で使用された現代英語を素材に、聖書由来の英語表現を解説したもの。
このような表現は、自分で使うかどうかはともかく、英語を聞いたり読んだりするときの理解を深めるものですね。
(↑)は、私が高校生のとき、日本国際ギデオン協会からいただいたもの。
私は県立高校に通っていたのですが、学校で希望者に配っていました。
文庫本サイズで、英語と日本語の対訳になっていて、今でもたまに読んでいます。長編小説を読むのが億劫な暑い夏には、適当な場所を開いて読める聖書や論語は、ちょうどよい読み物です。
文庫本でキリスト教を学ぶ
◎関根正雄(訳)「旧約聖書『ヨブ記』」(岩波文庫)。
→文学のモチーフになることが多い「旧約聖書」の「ヨブ記」。学術的な注釈もあり、理解に役立つ。
◎トマス・ア・ケンピス
(大沢章・呉茂一[訳])
「キリストにならいて」(岩波文庫)。
◎マルティン・ブーバー(植田重雄[訳])
「我と汝・対話」(岩波文庫)。
◎レッシング(篠田英雄[訳])
「賢者ナータン」(岩波文庫)。
→岩波文庫の「赤」。対話形式(戯曲)で書かれている。物語として読むことができる。岩波文庫のほかに、「光文社古典新訳文庫」でも読むことができます。篠田英雄先生の翻訳より、読みやすいかもしれません。好みに合わせて選ぶとよいと思います。
◎矢内原忠雄
「キリスト教入門」(中公文庫)。
→特に前提知識を持っていなくても通読できる。キリスト教に対する素朴な疑問を分かりやすく説明している。
◎曽野綾子
「『いい人』をやめると楽になる」
(祥伝社黄金文庫)。
→クリスチャンである作家による人生相談。
◎ヒルティ(草間平作・大和邦太郎[訳])
「眠られぬ夜のために」(全2冊)
(岩波文庫)
→1日ちょっとずつ読める。やや説教くさいところもあるが、そういったことをあまり気にしなければ、至言の宝庫。
大学書林版では、本書の原文のドイツ語と日本語の対訳新書(抄訳)が出版されています。ドイツ語の学習にも最適では?、と思います。
まとめ
宗教と聞くだけで、嫌悪感を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、教養としてある程度、聖書に親しんだほうが、文学を鑑賞する楽しみは増えると思います。
「豚に真珠」「目から鱗が落ちる」(**サウロがパウロになる瞬間の表現)など、日本語に定着した聖書由来の表現もあります。英語をはじめとするヨーロッパの言語を学ぼうとするならば、キリスト教とシェイクスピアは無視することは出来ません。少しずつでも理解できるようになれたら、と思っています。
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