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スマホを子どもに与えるのは年齢が高ければ高いほど安全な件

▼スマホでゲームにはまると、目も当てられない事態になる。知り合いにゲーム依存症になりかけたケースがあり、2019年5月26日付「毎日新聞」の記事は他人事(ひとごと)とは思えなかった。

〈ゲーム依存 若者にリスク/WHO、疾病に/攻撃性高まる例も/治療法開発に期待〉

〈世界保健機関(WHO)が25日、最新版の国際疾病分類で依存症の一つに位置付けた「ゲーム障害」は、なりやすい対象が未成年層だという点に大きな特徴がある。オンラインゲームなどの人気の高まりに専門家が警鐘を鳴らす中、ゲームは若者に支持された新たなスポーツとしての市民権も既に獲得しつつある。【金秀蓮、小川祐希】〉

▼社会問題になっているゲーム依存が、いよいよ病気に認定されたのだが、ネットではこのニュースに対する感情的な反発もあった。

▼この対策で有名なのは、国立病院機構・久里浜医療センター院長の樋口進氏。2017年に受診した患者のうち、〈ほぼ全員がはまっていたのは、広大なネット空間でプレーするオンラインゲームだ。

傑作アニメ「攻殻機動隊」の主人公である草薙素子は「ネットの海は広大だわ」とつぶやいたが、この「未知の海」で溺れてしまう子どもが続出しているわけだ。

▼厚生労働省いわく、中高生の「7人に1人」がネット依存の可能性あり。

鹿児島県で調べてみると、ネット依存、ゲーム依存の疑いは、小学校低学年男子で20%、高学年男子で18%。

▼以下の記事が衝撃的だ。

〈乳幼児5202人の保護者への調査では、1~6歳の全年齢で3割以上が1日にスマホを1時間以上触っており、6歳児は4分の1超がゲームを1時間以上していた。

 発達段階にある子どもの脳は未熟で、大人よりゲームの刺激を受けやすい。しかも依存に陥るスピードは速く、逆に回復はしにくい。久里浜医療センターの樋口進院長は「ゲームに触れるのが幼いほど危険性が高く、一気に依存症に進む。スマホやゲームを与えるのは遅ければ遅いほどいい」と強調する。〉

▼日本でゲーム依存、スマホ依存の対策の第一人者が語る、

ゲームに触れるのが幼いほど危険性が高く、一気に依存症に進む。

スマホやゲームを与えるのは遅ければ遅いほどいい

というコメントが重要だ。しかし、それは理想論だ、と感じる人も多いだろう。

▼20世紀には、おもちゃが「ある」ことが豊かで、「ない」ことが貧しい、というわかりやすい構造だった。しかし、スマホゲームが隆盛を極めている今、「ある」ことが心身の貧しさや病気に直結してしまう、新しい種類の貧困問題が生まれているのかもしれない。

たとえば、両親と子どもだけ、という家族で、親が共働きの場合、どうしても育児の手が足りず、機械に頼ることが多くなる。テレビしかり、ユーチューブしかり、タブレットしかり、スマホしかり。

とにかく楽なのだ。

富裕層の子どもと、貧困層の子どもとの比較調査を見たいものだ。

スマホのゲーム依存は、新しい格差社会の芽を生んでいる。その影響はまだ広く可視化されていない。スマホ会社とゲーム業界にお金を払いながら、いわば壮大な社会実験をしているようなものだ。

▼「科学」「技術」の進歩に人間の「心」が追いついていない、という指摘は、20世紀から言われ続けていることだが、この人類の傾向が、乳幼児を侵し始めたといえる。どんな社会問題も、最も弱い人が最も大きな影響を被(こうむ)る。この問題について、その被害者は貧しい家庭の乳幼児だ。

(2019年6月1日)

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