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舞い上がれ‼️2025/02/05水曜日から四日間リアルタイム日記📔📓&…「黒影紳士ZERO 03:00」ー八重幕➖総集編SP
2025/02/05水曜日は紳士の立ち振る舞いって?に答えるよ〜着地🪶
ところで、紳士好きと申しておりますが、紳士ってそもそも何ぞや?
な、人に…紳士的な振る舞いとは何か、お話ししましょう。
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勿論、レディーファースト。子供もです。
言葉遣いは素直ですが、丁寧かどうかは人によります。
紳士も喧嘩はしますからね。
手袋を相手や床に投げ付け、怒りを出します。
決闘の合図みたいなものですね。
上流階級が多くなってから、紳士クラブは娯楽場として賭博も盛んになります。
つい、数年前まで女性は立ち入り禁止でしたが、男女平等の時代になり、初めて女性がクラブに入りました。
段差の際に女性に行うのはエスコートですね。
さらに、女性より目立たない事が大切とされ、服の色は黒、灰色、ベージュ等の茶色が多い。
その代わりに、個性を出せたのが時計や小物になりました。
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特に懐中時計には拘りがあり、ハット同様に身嗜みとして持っていました。
これは、遅刻しないのも当然と言う考えもあります。
清潔感は勿論、爪だけでは無く、ハットやコートには丁寧にブラシを掛けます。
当時は、それだけで女性が紳士的とみるか、見ないか程違います。
馬車や雨が多いイギリスならではですね。
馬の毛を使ったブラシで泥をきちんと落とします。
階級に拘りは無く、立ち振る舞い、名誉、活動が称賛される人格者で無くてはなれません。
誰もが何時でも思った時に目指し成れるのが、紳士の魅力の一つかも知れませんね。
自分の生まれや境遇も関係ない。
成ろうと志した瞬間から、紳士なのです。
僕の書く、黒影と言う紳士も生まれも境遇も最初は悪かった。
けれど、事件を通して、人の死をたくさん見て、人を想う事を考え始めたんですね。
素直に人と向き合い、本気で真っ直ぐに怒る時も、悩む時もある。
僕はそんな理想的な紳士が書けて幸せです^ ^
夢から始まる…ちょっと紹介させてね♪
さて…先日、
僕はある日長い長い夢を見たのです。
その夢は此の身体を蝕み、力尽きた僕はある一人の女を助けられずに
無念にも沈んでいくのです。
これは僕の見たほんの夢。
長い長い夢ですが、もう一度僕はあの夢に帰られるのならば
見知らぬあの女を助けたかった。
その未練を一緒に断ち切りに行っては貰えませんか……。
これは小説ではありません。
輝かしいものはなくとも、「夢」に相違ありません。
🎼この世界ではフリーBGMが流れています。
音量は夢に丁度良い様に、調節をお願い致します。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173189173/picture_pc_df05faf4ef8e7da2a5edfd13b2d4989e.png?width=1200)
リンクのある場所で音楽を切り替えると、より夢の臨場感に没入できるとか。。
前回はイラスト無しにしましたが、総集編としてイラスト込みでご紹介致します。
先ず、読み方が一つだけルールがあります。
本文に入ったらお淑やかに。
一冊は日にちが幾ら空いても構いませんから、飛ばし読みは、単に気持ち悪いので止めてください。
感想もコメント欄で結構ですが、荒らし、冷やかしは規約に則り、報告し予告無しに削除します。
誤字脱字報告はどの辺りか、分かると有難いです。
気に入りましたら、スキ❤️を押して下さると、今後の活力になります。
旧作をお読みの方で、新作を推したい場合は、出たら入って数秒待ち、スキを押して出るだけで十分です。
アクセスとスキ貢献になります。
新作は次回作発表に影響が出ますので、出来れば早めに…突っ込む勢いで来て下さい。
noteでは最初に上げてから直ぐに一定に上がると、継続でオススメに出易くなります。
ご協力をお願い致します。
では、改めてnote機能を120%楽しんで読む黒影紳士をお楽しみ下さい。⬇️YouTube音楽、挿し絵等、エンタメでお送り致します。
場面場面の切り替えに「ーーー」を使用し、音楽や絵で切り替え、休憩をし易くしてあります☕️
さぁ、音楽🎧を聴く準備は良いですか?よーい、どん!ww
第一章 寒桜咲ク
そぞろ寒さに肩をすくめ
漆黒の紳士、現る。
甲高い硬い靴音を鳴らし
家族や仲間の為へと
鮮血よりも深き紅の
大輪の冬薔薇を慈しむ様に抱き締めて
ちらりと寒椿の垣根に目を移した。
「……早く、帰ろう」
浮つく華心、再び薔薇を見詰め正し……
長い長い垣根の横をシルクハットを目深に下げ
足早に通り過ぎ様とする。
薄っすら白い煉瓦の歩道。
其の冷ややかさは、触らずとも浮立つ白さに垣間見えた。
『……こっ……此処にいる……。僕は……貴方だけを待っている……』
空からか、将又脳裏に降って来た、聞き覚えのある声。
「おい!如何したんだ!?」
黒影は寒さにすくめた身体を伸ばし、美しい青く澄んだ冬空を仰ぎ叫んだ。
何年も聞き慣れた、創世神の声だったからだ。
然し、創世神は舞い降りもせず、返事も無い。
……気の所為か……?
そう思われた時、横から吹く冷たい風に立て襟が揺れた。
寒さに一度、長い睫毛を下ろし、風が和らぐとゆっくりと再び上げた。
鳳凰の魂を宿した其の美しい赤い瞳の上を、流れる様に淡紅の桜の花弁が、通り過ぎて行くではないか。
「何故……こんな所に寒桜が……」
思わず黒影は我が目を疑った。
青空を通過して行く桜の花弁は、寒ささえ感じなければ、まるで春其の物。
日本でも温かい地域には此の時期に咲いてもおかしくは無い。
然し、幾ら何でも黒影の住まう付近には、寒桜が在るとは思えない。
何処から飛んで来たのだろう……。
そう思い、辺りを見渡そうとするのが当然である。
其れ程に珍しい物が、花弁が舞い上がる程の大輪の花となっていると想像しただけで、見に行きたくなるのが人の常。
黒影に至っては、探偵なのだから余計に好奇心には勝てない。
だが……黒影は桜の流れて来た先へ、帽子の鍔先を向けると微動だにしない。
先程迄は漆黒のロングコートを靡かせ踊らせた風も、止まったかの様に見える。
黒影は其の視界に映った物に驚き、身の回りを確かめようと、足元を確認した。
「何だ……此処は……?」
自らを見てみても異変は無かったが、足元から静脈の様に、燻し銀の固い大地に、青と赤の光が遺伝子配列の様に絡み合い、広がっては消えるを繰り返す。
「まさか近未来でもあるまい」
黒影は苦笑したが、其の光の流れは、黒影が一歩一歩と踏み出す度に、振動か生命反応をして発せられている様に見えた。
夢では無いかと手元を見ても、真紅の薔薇が変わらずに在る。
黒影は状況を飲み込めないだけに、息が上がり少しだけ揺れて見えた。
「落ち着こう……。此れはきっと、また新しい「世界」に飛ばされたに違いないんだ。だから、創世神が書き上げて驚かせようと、先程の様な変な言葉を言ったに違いない!……もし、もしもそうじゃなくても……たかが、違う世界等……そんな線引きは今更僕には何とも無い。どんな世界でも、僕は僕として……生きる以外に他は無い」
そう自分に言い聞かせたが、再び薔薇を見れば刹那そうに微笑む。
「待っているんだろうな……。また厄介事に巻き込まれてしまった。心配さていなきゃ良いけど……」
其処迄呟き、家族や仲間を想った後、ふと……先程の言葉が頭を過った。
「此処に……いる。貴方を……待っている」
創世神の言葉を反復したのは、其の気持ちに気付いたからだ。
創世神が誰を待っていたのか、気付いたから。
……家族……だ。
黒影は其の時、絶望の様な物を感じた。
何時も一人、書く時間の長い創世神に何かあった事だけは分かる。創世神の大切な人が……いないのだと。其の状況すら分かってしまった。
「だから……僕なのか……」
黒影は静かに言った。
だから……書いたのだと気付いた時、早く向かわなければと思った。
其れなのに!
「一体、何だ此処は!」
当て付ける様に、此の見た事もない世界で、黒影は叫んだ。
戻り方も分からない、創世神の身に何かがあれば二度と、家族や仲間のいる「黒影紳士」の世界にすら戻れない。
何をするべきかも分からぬまま、残酷にも其の叫びだけが、得体も知れぬ涙すらない、鉄の様な大地に共鳴する。
「……さ……くら?」
不慣れな地を足元や辺りへと、キョロキョロと視点を変えては進んでいると、こんな無機質な大地から捻り出される様に、銀の幹から大輪に咲く桜を見付けたのだ。
根は銀色の大地から、黒影が歩く度に出現した物と同じ、静脈の様な赤と青の交差する光が、花へと伸びては消えて行く。
其れを見た黒影は突然、響く程の足音を立て、大地を思いっ切り片足を上げたと思うと、踏み付けたのだ。
「やはり……そうか……」
思わず黒影は生唾を呑み、帽子の先を下ろした。
此の大地は……生命反応で光っているのではない。
生命力を吸い、他の生命力へ流す。
詰まり、此の世界は……生命力の奪い合いで成り立つ。
「共存と言う……生優しい物でも無さそうだな……」
黒影がそう悟って口にした直後だった。
「誰だ!」
何者かが走り近付いて来る音に、黒影はコートをバサッと鳥の羽ばたきの様に鳴らし、振り返る。
息を切らして走って来る一人の女……。
ブロンドの髪が長く美しい、ヨーロッパ系の女性に見える。
成人ぐらいには見えるが、日本人よりかは大人びて見えるのが普通なので、実際はもう幾許か若いかも知れなかった。
「タスケ……テ……」
……あれ?日本語か?
黒影は其の女が慌ててそう言い、黒影の後ろに逃げたので、辺りを見渡す。
「貴方、何人?」
と、聞いてみるが、其れに関しては答えもせず、何故か人を盾にしていると言うのに、未だ怯え切っている。
……まぁ、日本語は難しいと言うから、そんなには話せないのだろう……と、悠長に考え様と思った時だ。
強い殺気を感じ、思わず黒影は漆黒のコートを広げ、背後に隠れた女を包み、殺気から避ける。
ほんの僅かな一瞬……真っ黒な黒い手が伸びて消えた様に見えた。
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「あれは何だ!?」
黒影は直ぐに消えた其の腕が何かと、匿った女に未だ警戒も崩さずに尋ねる。
「貴方も……見えるの?」
其の女は驚いたかのか、目を見開き黒影に言った。
「ああ……さっきの黒い手だろう?」
と、黒影は答えた。……少し考えて……、
「貴方……も?と、言ったか?……創世神の相変わらずの誤字脱字じゃなければ、もう一人はさっきの奴が見える人がいたと言う事だ。何故……其奴に助けを求めずに、また助けられる人物を探していたんだ?……誰だ!先に君を助けようとしたのは?!死んだんじゃないだろうなぁ。助けてやるから、先に案内しろ!」
黒影は同じ目に遭ってたまるかと、先に助けたであろう誰かの安否も気にしつつ聞いた。
「私……一回、死んだの。だから、覚えていない。見ていないから」
「えっ……」
其の言葉に、黒影は焦りも何もかもの戸惑いも消え、一瞬止まった。
「……一回……死んだと……言ったのか?」
黒影は真っ白になりそうな頭を、何とかフル回転させた。
大地が生命力を奪い続ける……だが、コンテニューの様に生命力が無くなった方へ循環させている世界……。
「……まさかっ!」
黒影は青褪め、其の女から一瞬離れた。
……此の世界の中は其れで循環しているが、余所者が入った時は違う。
循環が補えなくなる。だから、余所の世界から来た者からは、生命力を奪い続けている。
大地が僕の生命力に反応していたのは、吸っていたから。
其れを此の地に元から生えていた桜が吸い上げた。
此の女も……あの桜と同じなんだ……。
女は黒影が此の世界の事を知ってしまったと悟り、少し悲しそうな顔をした。
「……それで?解ったからと言って何になる」
黒影はコートのポケットに軽く指を掛け、桜を見上げて言った。
「……えっ?怖く……無いの?」
女が、小声で黒影の背に聞いた。
「……勘違いしないでくれ。怖がっていたのは君の方じゃないか。僕は何処にいても探偵。……困っているなら話を聞くし、何とかしてみせる。……否、しないと気が済まないたちでね」
と、黒影は言った。
苦笑にもならない。笑えない……現実の中。
八重の桜から一匹の小鳥が羽ばたいた。
風切り羽は機械的に銀色に光り、生命力を受信しているのか、羽周りに赤と青の光の線が交互に揺れる。
送信と受信の切り替えで、光の色が変わっている様だ。
黒影が飛んだとて、膨大なエネルギーを放つ鳳凰の力すら、吸われてしまう。
一歩歩く事でさえ、躊躇する此の世界で……。
僕は未だ……無謀にも、走ろうと言うのか。
此の世界で唯一、美しいと思えた花に、黒影は心で問うた。
目を落とせば、手元には愛しい日々への薔薇の花束。
此の薔薇を……守ろうと思えば良いのだ。
肌身離さず、何よりの御守りになる。
何故ならば……此の薔薇が枯れ行く時、己の生命力も枯れると、気付く時だろう。
命の期限……動ける時間は……時でも無く、此の世界では此の薔薇のみが知る。
――――――
「あー……先輩!ねぇ、先輩ってば!」
黒い大型バイクのエンジンを切り、サダノブがバイクを引いて、遠くの寒椿の垣根の横を歩いている黒影に声を掛けた。
黒影はサダノブの声にも気付かず、何か空をずっと凝視し、見上げているではないか。
「……何しているんだ?」
サダノブは何かあったのかと、黒影に更に近付こうとした時だ。
「何だ?」
冷たい風が吹いたかと思うと、こんな時期に桜に似た何か(サダノブだから分からないんですね、残念ですby著者)を見て不思議そうにぽかーんと口を開けた。
……ああ、先輩に聞けば分かるか。
と、何時もの調子でサダノブは思い、一枚の桜の花弁をひょいとジャンプし掴まえると、黒影の方へ走り出そうとした。
「あれ?先輩?!」
だが、今迄目の前に在った筈の黒影の姿が無いのだ。
黒影がいた辺りを見渡しても能力者どころか、人一人歩いていない。
とても、黒影が誘拐など素直にされるタイプでは無いのは分かる。
能力者による、見えない攻撃か何かとも考えた時だ。
悩み歩道を見下ろすと、今度は一枚の薔薇の花弁(そのくらいは分かるようだね。良かったby著者)が、ひらりひらりと舞い降りて来たではないか。
「先輩…………?」
黒影が持っていた真紅の薔薇。思わず、上を見上げた。
「はぁ?えー、何これ、何だこれ!?」
突然サダノブは両手を空にパタパタ振り、馬鹿みたいに慌てて……そう、多分後ろから見ると、阿波踊りの様な状態だ。
サダノブの目に映ったのは、銀色の赤と青い線の光が交差して光る何か……。
ある意味、「未確認に飛行する物体」である事から、「UFO」と言っても過言では無い、大きな大地が通過するのだ。
其処に何故か、鳳凰の翼も出さずに吸い込まれる様に上がって行く、黒影を目撃したのだ!
「先輩!何やってるんすかーー!先ぱぁあーーい!」
サダノブは精一杯ジャンプするが届く筈もない。
……影でも使って上がったのかな……。
そう思って、其の「UFO」が行く先の方角を見る事しか出来なかった。
慌ててバイクへ戻り、エンジンを掛け走り出す。
飛べないサダノブにとって、今は此の事態を他に知らせる事しか出来ない。
悔しさに下唇を噛めば、吹き込んだ冷たい風が、当たった。
――――――
「風柳さん!白雪さん!」
サダノブは一目散に、風柳邸にズカズカ上がると、息を切らして、のんびりお茶の時間を楽しんでいた二人に言った。
「何よー、忙しない。黒影なら、お花を買いに行ったわよ?」
と、白雪はロイヤルミルクティーを飲んで言った。
「事件か?今日は何の予知夢も、黒影からは聞かされていないぞ?兎に角、事務所じゃないのだから、靴を脱ぎなさい」
風柳にそう言われて、サダノブは慌て過ぎて土足だった事に気付き、スニーカーを脱ぐ。
「だって、こーんなでっかいUFOに、先輩がすぅーーって、吸い込まれて行ったんですよ!」
と、サダノブは横いっぱいに手を広げて説明するのだ。
「危ないよ」
風柳が屋内だからと、注意する。
「ええ、危ないわ。いーい、サダノブ。夢でも見ていたんじゃないの?其れとも何?私の旦那さんが牛にでも成ったと言いたい訳?」
白雪に至っては、眉を顰める始末だ。
「ええ?!何で信じてくれないんですか?緊急事態でしょうよ?」
と、サダノブは見て来た儘を言っているのに、上手く伝わらない事がもどかしく、ダイニングテーブルにバンッと、両手を置いた。
「今度はUFOと闘うのか……」
風柳は「黒影紳士」ならば、無くもないかと半ば諦めムードで、天井を見上げた。
「キャトルミューティレーション?」
白雪が、紅茶を飲む手を止め、思わず呟く。
「キャト……キャトル……何ですか、其れ?」
と、サダノブは白雪に聞き返した。
「キャトルミューティレーションよ。UFOに牛が誘拐されちゃうって話しよ。実際は家畜がアメリカで大量死した事件で、UFOとの関連性は如何だかねぇ。誘拐される事をキャトるとも言うわ。後はそうね……女からなら、誘惑としても使うわ。詰まり……サダノブが言いたいのは、黒影がキャトられたって事でしょう?」
と、白雪がサダノブに説明する。
「そ、そうなんですよ。キャトられるのを、見とるってたんすよ!」
と、サダノブは其れだ!と、言いたかったらしい。
「日本語変よ、サダノブ。先ず其のUFOの報告なら私、聞きませんから。探偵なら、先ず其れが何かを調べるものでしょう?未確認なんて報告は要らないわ。黒影だって、同じ事を言うわよ」
白雪は、黒影の事は心配なものの、黒影が自分に一つ一つからだと言い聞かせていたのを思い出す。
ある日、白雪が裁縫で絡まってしまった縫い糸を、黒影が器用に解いていた時に話していたのだ。
「一気に解こうとすると、余計に絡まってしまう。糸と言う物を一本にするには、一つずつの小さな絡まりを先ず解して、其れから一気にストーンと……ほら、出来た。……何事も、コツコツと一つずつが、遠い様で一番の近道さ」
と、解いた糸を見せ、白雪に微笑んだ。
……神経質な人と何時も言ったけれど、私が近道を探して転んでも、きっと大丈夫にしてくれる気がした。
全然似合わないぐらい、貴方に追い付けない。
だけど、気付いたら何時もの立ち姿で待っていてくれる。
どんな日も、微笑んで。
「……サダノブ。……仕方ないわね。今、白梟に成るから、黒影に聞けば良いのね?」
白雪は、時計を見て確かに少し遅いと、黒影を心配した。
「そう、其れ!俺、飛べないんで助かります!」
と、サダノブが言うでは無いか。
白雪は其れを聞いて、
「ねぇ、其のUFOって本気?悪魔とか天使とか飛行機じゃなくて?」
真面目にサダノブが言っていたのだと気付き、思わず聞き返した。
「そんな風に見える……何かですよ、何か」
と、サダノブは思い返して答えるのだ。
「……じゃあ……今の所……」
風柳が思わず言う。
「未確認な飛行……物体」
と、思わず白雪も、想像するのであった。
ーーー
「君は何に追われて、僕は如何君を救えば良い?いずれ僕も力尽きる。其れ迄に出来る事は在るか?」
黒影は女に振り返り、ストレートに先ずは知っている事だけでもと、聞く。
「あれは、此の世界が吸った、他の世界の人の屍。此の世界を恨んでいる。だから、此の世界に住んでいる私達を襲う。死んで埋葬した時、一部の外の世界の人だけが、此の大地から生命力を吸い出し始めたの。けれど、其れでは此の世界の大地はバランスを失う。だから人に戻り掛けの影に見えるの」
と、女が答えるのだ。
「ならば、何故他の世界からの侵入をもっと防がないんだ。先程から見る限り、此の世界の人には未だ君以外に会っていない。随分と住人は少ない様だ。
大地に対して此の人口ではエネルギー効率が悪すぎる。此れは僕の知り得る世界では、移動型の小さな世界……「領域」に酷似している。死に絶え易く、此のシステムにしたのだろうが、考え方が逆だ。先ず死に絶える状況を改善するのが先なんだ。僕が守ると言ったからには、次にコンテニュー等無いと思え。死んだら最後だと思って、逃げて闘うんだ。必死にならない限り無駄に何度でも死ぬ。ただの人生の暇つぶしならば、僕に助けを求める必要も無かった筈だ。変えたいと……願っているんだな?」
黒影は最後に意思を確認する。
守るにも選ぶ権利はある。
同じ、行き倒れでも……違う結果を出せなくては、足掻く意味も無くなる。
大事なのは……後どのくらい時間があるか無いかでは無い。足掻く程の価値ある道であったか、否かであると。
最後に笑うって言うのはな……足掻ききった奴程笑うんだ。
「……願っても良いのでしょうか?変えたいと……願わなければ、他の世界の人を早く動けなくさせる事も無かった。私は知らない。何時だって……。どれだけ長く此の世界にいても、他の世界から来た人がどんな風に亡くなって行ったかも、見た事が無い。其れが当たり前だと聞いたし、侵入者の生命力が無ければ、もう此の世界古来の生命力維持は不可能だとも聞きました。だから、部外者をあえて受け入れて来たのだと思います」
と、女は思い返す様に言ったのだ。
「……其の、「聞いた」とは、誰から?どのくらい前に?そんなに詳しい人がいるならば、先に話を伺いたいところですが」
黒影は、何故先に会わせないのかと言わんばかりである。
「彼此……三年前です。他の人と会ったのは。嬉しくて、お互いに知っている事を話し、暫くは一緒にいました」
女は困惑気味にそう答えるではないか。
「そんなに同類と会う方が難しいのか……。詰まり、生命力の供給が逆転しつつある」
黒影はある事に気付いた。
「逆転?」
其の女の言葉に黒影は深く頷いて、
「此の世界は、既に生命エネルギーの供給バランスが取れないと見定め、古来の人類を捨てた。僕が此処に来た時と同じ様に、他人種を一旦殺し、最小限のエネルギーで動かす……そう、まるでゴーストを産み出した。此の世界は、既に貴方方の物では無い。生命力を与えられた屍の為の世界にシフトチェンジしようとしているのですよ。……此の世界自体が、世界を守る為に……」
と、辛いであろう現実を伝える。
「……時に……世界もまた……人を選ぶのです……」
そう黒影が付け足した時、まるで此の浮遊世界が騒めき立つ様に、一陣の風を吹き込んだ。
黒影は滑る大地に足に力を入れ、帽子を取り女の後ろに立つと、コートをバサバサと広げ鳴らす。
女の身体は後方に流れ、黒影に当たり止まる。
世界が……私を……殺そうとしている。
其の恐怖に顔は青褪めた。
黒影の言葉は其の突風にも消えず、深く恐怖として刻まれて行く。
「失礼。……驚かせてしまった。君にも名前ぐらいはあるのだろう?僕は、黒影だ」
黒影は一歩引いて、何もしないと両手を軽く上げ言った。
「……セナ。……黒影ならば、私を違う世界に連れて行ってくれる?此の世界に来て、此の世界を知る前に、皆んな消えた。もう其処迄分かっているならっ……!」
セナは黒影の顔を見上げ、両腕を掴み揺らす。
「……すみませんが、過度な期待はしない方が良い。其れとも其れが探偵の僕への依頼ですか?生きるか死ぬかの瀬戸際なんだ。依頼書が如何とまでは僕は言わない。……だが、セナさんは先程、同類を見たと証言した。他の僅かとは言え、残った同類は此の際、関係者ないとでも?」
其の言葉に、セナは両手を離し息を呑む。
「でも……また会えるかすら……生きているかも分からない」
俯いたセナに、黒影はこう言った。
「僕はこう思います。死にそうな瀬戸際にこそ、己に「生きろ!」と、強く……。こう言う駄目な時と言うものは、誰にでも平等にある。偶然……脱出する回数は同じでも、一人でも複数でもまた同じ事。此れから僕は、出来るだけ此の世界を死ぬ迄の個人的趣味で調査させて頂く。其の途中で出会ったセナさんの同胞には、其れに付き合って頂きましょう。
もしも僕が突破口である、脱出経路を見付けられず力尽きた場合は、即座に出来るだけ散り散りに逃げて下さい。集まっていると、今後後から出現した人種……即ち、ゴーストと仮に呼ばせてもらいます。其のゴーストが一斉に狙って来る可能性が高くなる。
……もしも、一本の真実の道が見付かったならば、其の出来るだけ多くで此の世界から脱出しましょう。此れが集団避難の基本です。
セナさんにとっては、僕より長い人生が此処には在るかも知れないが、現時点で僕の残りは僅かだ。残り僅かでセナさんと出会い、僕は此の世界を知り尽くしたい。序でに脱出出来たらラッキー程度に思って、最後の調査ぐらいは好きにさせて頂きたいものだが?……其れでは何かご不満かな?」
厳しい様で、黒影はそうは言ったが、セナが顔を黒影に向けると微かに笑った。
「……其れでも良いわ。もう逃げ惑わなくて済むのなら」
今迄、何人の外界の人を盾に生きて来ただろう。
永遠に続くと思っていた。
消えゆく外界の人達に、何も思わなくなったのは……何時からだっただろうか。
消えた悲しさも、恐怖も無く……盾にしてしまえば良いと、物の様に見えていた。
だから……此の世界の事すら、自分の事さえも……何も知って貰いたいとも思わなくなった。
瀬戸際にこそ……生きろ……
そんな言葉が、消え行く時間に呑まれつつある、目の前の偶然居合わせた男が変えて行く……。
諦めばかりを知り尽くした私には、其の消えゆく生命力の姿が、輝かしく見えた。
足掻いても……此の黒影と言う男が力尽きてしまったならば、私は久々に人を悼む気持ちに涙するだろう。
其れでも構わないと思えたのは、黒影が最後迄諦めないと、こんな世界で伝えてくれたからだ。
名残惜しや……人の……心……。
「僕に課せられた、動ける時間は後……どのくらいだ?」
黒影はセナに残された時間を問うた。
「此処に来てから約一日。……翌日には……消えてしまうわ」
セナは、小さな声で後半は怯え乍らも、答えた。
「一日で事件解決……。容易いな、僕には。其の代わり、忙しなく動くぞ。見失わない様に……行こう」
黒影はセナの怯えを見て、そう言って笑う。
「行くって、何処へ?」
セナは気を取り直し、黒影に聞いた。
「そんなの……」
黒影は其処迄言って、空を見上げた。
「そんなの?」
セナは不思議そうに首を傾げて聞く。
「新世界に来たら、先ずは冒険に決まっているじゃあないか」
黒影はそう言い切ると、少年の様に目を輝かせ、セナの手を引いて走り出す。
立つ者の生命力を奪うだけだった大地が、黒影を讃える様に光り、足跡の軌跡を刻んで行く。
絶望的な世界だからこそ、輝く物がある。
其れはまるで……光と影の様に……。
――――――
「……黒……影……」
……此処は!?
夢から覚めると、僕は何時もの天井を見上げて横になっていた。
身体中に酷い倦怠感と、四肢にジリジリと小さく焼け付く痺れを感じる。
夢の中では書いたのだ。
だが、現実に目覚めてみれば手に筆も紙も無い。
起き上がる事も出来ない僕は、大切な人の名を……声を振り絞って出す様に、二回程呼んだ。
もしも、隣の部屋にいたとしても届きはしない程、掠れた僅かな声。
辺りの物音を確認して行く……。
……そうだった。こんな時に……。
大切な人が、今日は買い出しに行くと言っていた事を思い出したのだ。
何たる事か。
此の儘何かの間違いでぽっくりいってしまうかも知れないと言う時に限って、紙と筆が無いなんてっ!!
創世神、一生の不覚!
ああ、失礼。脱線してしまった。
それにしても、変な夢を見ていた。
「もしかして、貴方……あの影が見えているんですか?」
と、外国の人か異星人にも見えなくも無い女が話し掛けてきた。
夢であるから、勝手な物で日本語ペラペラである。
「確かに影は見えるが……」
と、黒影とは全く別人の影が見えた事から、全ては始まるのだ。
黒影が何時も見えるぐらいなのだから、そんな「影属性?」の、何かも見える事もあるのだなぁ〜と、不思議ながらにも思った。
其の女は何故か、影共に追われているらしい。
此処は乗り掛かった沈没船……否、タイタニック……否、船。
夢だからして、乗っかるしかないのだが、其の迫り来る影の腕や足の強さと言ったら、とんでも無い!
僕の書く腕が、へし折れてしまいそうな程、剥がすだけでパンチの連打に、回し蹴り、跳び蹴り数回に、仕舞いには噛み付いてやっと……一時退散したのか、消える程なのだ。
女と逃げに逃げ、来る度に其の見知らぬ影と闘っていた。
軈て気付き始めたのだ。
夢なのに……何だ?……此の強い疲労感は……と。
ーーーと、まぁこんなものを書いている人でした。
やっとキーボード⌨️ペアリング出来たお話しとご飯、料理🍳
まだまだ頸椎を護る為の、デスク周りの改良が続いています。
今日、スマホ📱用のマルチマウスを頼んだんだけど、妻様はいっぱいあり過ぎて分からないって。
仕方無いので、散歩がてら電気屋さんにまた行ってきます。
今日はイラスト沢山描きました。
同じ1作ですが、手入れをしてやると、また楽しいものですね。
夜はガストのもつ鍋〜⬇️
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173245426/picture_pc_befdd45d3a3687beb21dd628de51891d.jpg?width=1200)
プルプルはね…少ないf^_^;
だけど、付いて無いのはほぼ無かったからまぁまぁじゃない?
お出しとちゃんぽんの麺も相性良かった。
あんまり食べると怒られちゃうから、僕には丁度いいかもね。
キャベツも沢山、お野菜摂れました♪
後で食べるのは此方⬇️
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173247852/picture_pc_119f57248f0e76a8ce003cfd510184bf.jpg?width=1200)
緑黄色野菜のグリルチーズチキン🍗🧀
1️⃣ブロッコリー🥦、人参🥕、チキン一口大をスチーマーで500wレンジ17分。
2️⃣粗挽き塩🧂胡椒をして、耐熱皿に入れ替え、とろけるチーズ🧀、マヨネーズ、粉チーズを掛け、オーブントースターで五分。
チーズに焼き色が付いたら出来上がり^ ^
ハッ‼️2025/02/06木曜日へ着地🪶
おやつ。⬇️
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173318562/picture_pc_e4bb1a66404c95efd2d2209f4b43f8b6.jpg?width=1200)
寝起きは珈琲に限る‼️☕Time
ーーー19時🕖
https://www2.elecom.co.jp/search/link/search.asp?kataban=M-XGM30BBSKBK&link_type=2&elparam=r_mq570
Xにて👆のマルチマウスを🖱️お試し会。
これが、スライド反応速度を最大にしても、全然リポが速く出来ない。
マルチキーボードとも相性が良くなかった為、Xは未だ少しは速いイラストに使用しているマルチペンを使い、折角なので此方はタブレットPCのマウス🖱️に使います。
整形外科医監修の、今流行りの山形の握った感じの形。
サイズも選べて、僕はロングベースが弾ける程掌は大きいですが、少し余裕のあるMサイズにしました。
かなりフィット感が良いですね。
Bluetoothマルチなので、少々お高めでしたが、長く執筆するには良いかも知れません。
使い込んでまたレビューしたいですね^ ^
ーーーー
僕が言えた事では無いし、全てだとは思っていませんが……
今回は総集編として、イラストが無かったままの更新となり、改めて何故日記で本編を其の儘、ご紹介するに至ったのか、素直な気持ちを書かせて頂きます。
これはあくまでも僕の思う、感じた事であり、皆さんがそうであるとは思っていません。
スキ(Xで言ういいね)を皆さん欲しい。
沢山あればコングラ(Noteさんからもらえる#毎の賞の様なものです)も貰える確率だって上がるのではないか。
一度にNoteではXとは違い、スキをおせる数が限られています。
再び押せるまで、コメントをしたり、記事を上げる事でスキの回復を早める事はできますが、大体は約6時間後にはほぼ全回復するので、皆さん待つ方が多い様に思えます。
読んでいると言えば、スキを沢山貰えるかも知れませんが、僕はタイトルが気になって……偶然からハマった……ざっとしか何時も読めないけれど、偶に週末読みますの方が、押しつけがましく無くて好き。
普段の日記だって読んでないじゃない。
読んでいるの、読者様ぐらいじゃない。
観ているのは、パッと見の写真じゃん。
でも、スキし合うじゃない。
写真好きでも構わないのだから。
ただ、何でもスキをするのに構わないはずならば、何故!
何故!小説だけはよけるんだ⁉
読んでいないと思われるのがそんなに、気まずいのか?
他も気にならなければ読まないのにか?
本物の元担当付きのプロが無料で書いている事が、そんなに腹立たしいか?
今は一般人だよなぁ?何が違うと言う?
小説は一万文字、日記は時に一万文字を超えるのにか?
いいか!
FF様は大事にしたいと思っている。
だが、その中で小説だけを故意に飛ばしてスキをする輩が出て来た。
そんなんだから!そんなんだから!
同じ読み物であるのに、垣根を作って差別化し合い、それぞれの創作文化を狭くして衰退させるんだよ!
そんな人に返すスキはない!
長い執筆で負傷した手も、それでも待ってくれている読者様の為にある。
日記は、校正作業し本を作るまで、読者様に今日も元気ですよと、伝えたいだけの為にある。
読み物や芸術を差別するような者へ書く手など持ち合わせていない!!
または、新しく読み始めた誰かに、読書の合間に今日の夕飯の提案をしたり、花で癒されて欲しい。少しでも笑顔になって欲しい。
それだけの為に日記を続けた。
確かに、Xはそろそろ長くなった方で、応援屋だから詳しい。
混乱があれば、日記も其方の話題に切り替える。
ビジネスのためでは無いのが、そんなにいけない事か⁈
読み物をジャンルだけで差別するような人間がいるようだ。
この手は読者様の為にある。
代弁して言うならば、今回の分かりやすい小説よけに憤慨している一部の読者様も出てきている。
其の理由は、Xの本垢に行けば分かる。
出版社も、エディタも小説投稿サイトも新しきも古きも、決して差別しなかったあの平等の場所は、現代の日本でさえ本を買えない人の為、病いで中々本屋にも行けなかった自分を重ね、こんな手になっても作ってきた場所だ。
現在、不在が多くはなっても、あの場所のルールを誰一人破らず、どの出版社でも審査員でも自由に出入りし、大切にしてくれている。
どんなに立派な先生も守っているのは、平等に誰もが読める為……それだけだ。
僕は……物語を守るためにだけ、辞めたから、何処にも属していないから自分に出来る事を心得ているつもりだ。
勿体ない。
運営がこれだけ小説を誘致しようとし、機能も申し分ない。
だが、分け隔てがなくならなければ、大賞の時だけで停滞し向上しない。
物書きが読む量を知らないのか?
僕は……書いてばかりだが、僕の読者様の大半は書き終えてのんびり読みにきていますよ。
そんな普通のブログの読み強を外すなんて、愚か。
そんな寓者に日記で語る気も無いので、平等の意味も分からないのならば、
黙って出て行って頂こうか。
日記に小説を載せるなんて騙された❓
ああ、騙してやったよ!!
こう言うどんでん返しの騙しも書けないんじゃあ、ろくな推理小説も書けないんでね!
騙されたと思ったらスキもしなくていいから出ていってくれないか。
騙されて良かったと思うならば、君に悪意は無い。
これからも、どうぞ宜しく。大歓迎する。
文句があるなら日本国憲法から読み直せよ。
差別はすんなって、最初の方に書いてあるよ。
ーーーーさぁ休憩☕は大丈夫かな?
2025/02/06 木曜日ですよ。🎧のスタンバイ🆗❓2️⃣だよ。
着地ではなく、行形舞い上がれ‼️🪶
僕もバリバリスタンバイしたよ^ ^
第二章 大空にて
「貴方!」
唸る僕の姿に気付いた君は……両手の買い物袋を放り出す様に置き、ベッドの脇まで走り座ると、顔を覗き込んだ。
「……夢なんだ……。夢なんだけど……」
僕は夢の話をして、疲れ切った身体では起き上がる事さえ出来ないと、君の手を借りた。
……君がいて……良かった………。
たかが夢であるのに、そう思い君が淹れてくれた珈琲に口を付けた。
何時もと変わらない……柔らかな薫りと温かい味。
少しずつ癒されて行くにつれ、僕は大変な事に気付いてしまったのだ。
「ちょっと、出掛け出来ます!」
慌てて僕は支度を始める。
「何処へ?」
勿論、君はそう聞いた。
「黒影の所だ!」
そう答えると、君は呆気に取られ、溜め息交じりにこう言った。
「もぅ……急に走り出すのは、誰かさんと一緒ね。……さっきまで倒れていたんですから、気を付けて」
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173437463/picture_pc_abf32a407fc3f4a52629782fc74851f1.png?width=1200)
君は決して、走り出す僕を止めた事は無い。
苦笑う君に、申し訳ないと思い乍らも、君が見守る此の道を……ただ、只管に僕は走って行く事に変わりは無い。
どんな筆でも置き忘れては不成
物書きならば「責了」を迎えるまで。
君が心配をするから、僕は最も弱い筆を一本だけポケットに閉まった。
此れを守り切った時……
僕自身の身と、「黒影紳士の世界」を守れると分かっていたからだ。
空高く翳せば、彩の光の線を引き美しく輝く……
硝子の筆(硝子ペン)だ。
――――
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『ガラスの輝きはそのもろさを偽るものだ』
「賢者の教え」/著バルタザール・グラシアンより抜粋
硝子が割れるのは、物質の中でも固いからである。
されど、美しく割れ易いと知った時から、大切に扱うと言う事を知る。
人の心もまた……時に美しく、時に些細な事で傷付いて壊れてしまうものだと、僕は此の言葉に……時々、己と為人に釘を刺される。
――――――――
「えっと……目撃情報は……」
サダノブは先ず、あんなに不審な未確認飛行物体(今のところUFO?)が、浮かんでいたのならば、白雪の言う様に其れが何か、現在何処の上空を浮かんでいるのか調べる。
衛星画像と、目撃情報を照らし合わせ映してみるが、目撃情報が遅いのか、上空を探しても見当たらない。
「ねぇ、未だ見付からないの〜?」
白雪はそうは言いつつも、黒影が心配な様だ。
白梟に変化して、黒影にコンタクトを取ろうとしたものの、テレパシーで会話するには、距離か何かが問題なのか出来ずにいたのだ。
「今、探してますって!」
思ったより移動速度が速いのかも知れない……。
サダノブが思わずそう焦って口にした時だった。
『あけおめ、あけおめ!お疲れさんっ!……サダノブ、白雪に当たるのは止めなさい。黒影に後でこっぴどく叱られてしまうよ』
おっと、この……専用『』は…………。
サダノブは、其の声だけでギョッとしてタブレットPCから手を話し、即座に振り向いた。
(サダノブ)「あれ?」
(白雪)「あら?」
二人は意外な姿にポカンと口を半開きにして、創世神を見た。
「明けましておめでとう御座います。……其れにしても、何時もと服装が……」
と、風柳だけは何だと、特に気にせずに読んでいた新聞を置き、言った。
黒袴には赤い矢の柄が入っている。黒ケープコートは裏地が赤紫に揺れる度に艶やかに光って見え、裾には牡丹の和柄の細かい刺繍が入った服を着ていた。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173406278/picture_pc_91506cf2df2c736b2fc89e9821c5fdf8.png?width=1200)
『あぁ……これは、正月用だ。一応、僕にだってそんな服ぐらいはあるよ。此方の世界の神にも挨拶せねばと思って……。急いで其の儘来たら、この格好だ。……気にするな。正月過ぎて呑気に先勝待ちしていた、詫びだ』
と、ズカズカ入るなり黒田家の神棚に挨拶をしている。
「ちょっとぉ〜、何処も年末年始にSPみたいに出していたのに、いないと思ったら其れ?!……どうでも良いから黒影は何処?また、始まって直ぐに主人公誘拐なんて、冗談じゃないわよ!」
白雪は勿論、創世神なのだから何でも知っているのだと、早く黒影を返せと八つ当たる……の、だが……。
「相変わらず、怒っても可愛いなぁ〜」
と、何時もの調子で愛情表現が……今年も、めでたく……狂いまくってます。(良かったですね〜。安心しましたね、読者様by著者なる者?)
『……其れが……分からん』
そう付け足すでは無いか。
「えっ?創世神さんでも分からないんですか?!」
サダノブは驚いて聞いたが、創世神はケープのポケットに手を入れ、あの硝子の筆を握り締め、静かに瞼を閉じ一呼吸置くと、
『……僕は……「世界構築」に、失敗した……』
と、確かにそう言った。
……失敗……神が?……
其の言葉に、其処にいた三人は耳を疑わずにいられなかった。
「何か……他の著作を書いていたって事ですか?」
サダノブは何が何だか分からずに聞く。
『夢だ。……夢で、書いていた。夢から目覚める寸前に、僕は息絶えると思って、思わず黒影に助けを書いてしまったんだ』
と、創世神は答える。
「……って事は……詰まり?」
気不味そうな創世神に、風柳は嫌な予感しか無く、白状しなさいと言わんばかりに、白い目を向けて聞いた。
『だぁ〜かぁ〜らぁ〜!夢の最後の最後で想像した挙げ句に黒影に助けを書いて呼び出し、「一つの物語の世界」としてだけ、認識されてしまったんだよ。自分だけ書くだけ書いて、筆を納めずに目覚めた……と、言うか……。悪気はなかったんだ、御免なさいっ!』
創世神は流石に刑事の風柳の目だけは誤魔化せないと、全部白状して謝罪した。
「書き……捨てちゃったんだ……」
白雪も白い目で如何してくれるのかと、仁王立ちする。
「酷い……。先輩がどさくさに巻き込まれて可哀想……。其の瞬間を見たから、俺の目には先輩が目の前でキャトられたみたいに見えたって事?」
サダノブも、やってくれちゃったな〜の白い目を向け、腕組みをした。
『嗚呼〜ゾクゾク、ワクワクする、其の白い目で注目してくれていると思うと……♪晴れ姿で来た甲斐があった。サダノブ……珍しく、ご名答!今年はサダノブの頭も冴え渡るなっ』
と、創世神は笑うではないか。
「嗚呼!獅み付かないで!穂さんに怒られるでしょー」
サダノブは創世神からの壮大なハグダイブから逃げ回っている。
「……そんな事より。如何するんだ、本当に……。遊んでいるって事は何か策でもあるんだろう?」
唯一まとも?な、風柳がきちんと進行はしてくれる様だ。
『勿論だとも!世界の事と言えば、彼奴を呼べば良いのさ』
創世神は風柳の声にピタッと止まり、笑顔でそう答えた。
……あの地に……私は、再び舞い降りなくてはならない。
君が今も……体力を失いつつ在るのが、分かるから。
例えどんな事があろうとも……私には書いている者の意地って物がある。
次の創世神である黒影を失う訳にはいかない。
今迄の全てが「黒影紳士」に在る限り……私は其れを許しはしない。
愛する此の世界と共倒れでも、私は……最後の二文字さえ書ければ「君」を呼ぶだろう。
『もう手配してあるよ』
と、創世神は言うではないか。
「まさかっ!」
サダノブが創世神を見詰めた。
「嘘でしょう?!正月が終わったばかりなのに大掃除なんて!」
白雪はムンクの叫びの様に、頬に両手を当て口を開けた。
『良い反応をしてくれるじゃあないか。今度は二人共、ご名答。……そうさ、世界の事と言えば「大図書館(グレータライブラリー」の悪魔さ。……何、心配は要らない。本人を呼んだ訳ではない。「世界地図」を送って貰う様に、先程書き込んで頼んである』
創世神は此れで如何だと、満足そうな笑みを浮かべる。
「……と、言う事は……今回は登場の真っ赤な薔薇の花吹雪は無いのかい?」
と、風柳は少し寂しそうに言った。
「無くて良いのよ、風柳さんっ。大体ねぇ〜、創世神さんが設定にそんなド派手な物を付けるから、毎回大変なのよ。分かる?此の、主婦の敵っ!」
白雪は全く反省の無い創世神に暫し御立腹の様だ。
『……そんな事を言われても……初期設定で、もう登場してしまっ…………』
たのだから、仕方無いと続けようとした時である。
「夢が無〜〜い!」
と、サダノブが其の続きを掻き消した瞬間でもあった。
風柳邸の玄関の扉が急に開き、強風でバタバタと音を立て始めたのだ。
一斉に其処にいた皆は、玄関の方を不気味そうに見た。
冷たい風が勢い良く入って来て、思わずサダノブも創世神も、臨戦態勢に入り両目を塞がぬ様、肩腕だけで風を防ぎ、目を細めて何事かと、緊張の糸を張り巡らせる。
「きゃーーっ!」
其の絶叫の主は白雪であった。
パニエ入りのスカートが揺れてガサガサと小さな音を立てる程の突風だ。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173437538/picture_pc_ab87d2ae6c321f56a48667dd4d5349dc.png?width=1200)
風柳も思わず席を立ち、小さな身体の白雪が飛ばされない様に、前に立ちはだかる。
『来てます、来てますよ〜〜』
と、創世神はニヒルな笑みを浮かべ、何故だか両手を上げて、まるで呪(まじな)いでも、始めたかと思われた。
「其れって……真っ黒なサングラスを掛けている人ですよね?」
サダノブは其の風が何だか分かった途端、大きな溜め息を付いて、仕方無く……可哀想なので……触れてやる。
『ギリだよ、ギリ〜。やってみたかったんだよねぇ。瀬戸際遊び』
創世神はそう言って苦笑うと、自分でやっておきながら照れた様で、髪の毛の後ろを軽く掻いた。
「照れるなら止めれば良いじゃない。結局はこうなるのね……」
白雪は吹き込んで来た突風と共に、リビング中に舞い上がった薔薇の花弁を見上げて言う。
『ああ……それでも、綺麗には変わりはないだろう?』
そう、創世神はリビング中に未だ舞っている花弁を満足そうに見上げた。
誰が悪魔だから冷たい……醜いと言うのだろう。
人の心に、常に巣食っている物だと言うのに。
名称はあくまでも名称……。
人の心と同じく、変われば全く違うもの。
初めから弱点一つ無い人間等いないのだ。
書くと言う名の下に……其れもまた自由で平等に成る生き物である。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173410750/picture_pc_df1276fe9ce2eb713fdc109b9bc674da.png?width=1200)
「……此れが、世界地図か?」
風柳が阻塞さと玄関へ見に行き、一冊の分厚い本を拾って来た。
『ああ、此れが注文の品だ。貸し出し中じゃなくて良かったよ』
そう言い乍ら、創世神は風柳から受け取ると、其れダイニングテーブルの上に起き、全員に見える様に広げた。
「あれ?……何だ、此れ?……動いてません?」
広げた地図を見て、サダノブが不思議がる。
よく見ると、小さな島の様な物が点々と描かれているが、其れが僅かに動いている気がするのだ。
眩暈か何かかと思ったが、何度も瞼を開け閉じして見ても、やはり徐々に動いている様に見える。
『良く気付いたな。此の小さく動いているのは「領域」だ。特に定位置の無い世界の欠片となる。……此処に……ほら……いたよ』
創世神は、一箇所の領域よりもやや大きい点を指でなぞり追った。
「速い……。先輩が消えた先も速くて追えなかった。此れは「領域」の大きいのですか?」
サダノブが創世神の顔を見て聞いた。
『否、違う。先程も言った様に「世界」の成り損ないだ。未だ誕生するだけの「調和」が取れていない。だから成長が止まっている。僕は……此処へ行って、再び書かねばならない。此の未完成な「世界」の姿を書かなければ、此の世界は崩れる……』
と、創世神はそう説明したのだ。
「待て!今、崩れると言ったのか?」
流石に其の言葉に、風柳は反応した。
『ああ……均衡の保てない世界は、どの「世界」でも崩壊へと進む。黒影には悪いが、先に行ってくれたお陰で、均衡の崩れの原因に気付き始めているかも知れない。……合流するぞ』
そう言い終えると、創世神はサダノブの目を真剣な眼差しで見詰め返した。
穏やかな何時もの笑みは消え、立ち向かう覚悟すら見えた。
……ただ、与えられた此の世界を愛すると言う事。
軽んじては毎日、捨てた様に生きていても……誰一人、例外無く……己のいるべき世界で、命を全うする。
多くの世界が見えたとて、其れに変わりは無い。
いるべき場所を選び、其の場所を守ろうとする。
日常を守るのと同じ様に。
少しだけ……守る場所が広いだけ。
私はそう……思っている。
「風柳……。前々から僕は貴方に聞きたい事があった」
創世神は改まって、風柳の方を向いて言う。
「俺で答えられるのならば、なんなりと」
と、風柳は珍しい事もあるものだと一瞬は思ったが、少し考えてそう言った。
『僕の肩の荷は……重過ぎるだろうか』
風柳は其の質問に思わず微笑む。
……人生の重荷は軽い方が良い……
そう黒影に言った日を、思い出したからだ。
「黒影と大差無い。……創世神さんは、見える範囲を守るが同時に書いて守られている。生み出した「世界」にねぇ……」
そう答えるなり、風柳は再び自席に着席し、何時もの様にのんびりと茶を啜る。
『何時も通りが……心地良い』
小さな不安等、やはり創った世界の者が埋めてくれる。
其れで十二分過ぎる答えであった。
――――――
『行くぞ、サダノブ!何をもたもたしているっ!早く阿行と吽行の姿にならんか!』
さて……進む方角は分かった。
大体の速度も世界地図の縮尺から計算して叩き出し、創世神の翼を持ってすれば、何とか追い付けそうである。
なのに何か一悶着が始まった様だ。
「えっ……でも、其の……」
サダノブが顔を真っ赤にして、手をバタバタと忙しなく上げ下げし、如何やら拒否をしている様である。
創世神は其の姿を見て理由に気付くと、大きな溜め息を一つ吐き、馬鹿にした目を向けた。
『……其れとも此の儘、抱き付いて飛んでやろうか?未だ記憶が飛んでいる方が、幾分かマシだと僕は思うがな。ほれ……何方が良い?選ばせてやる』
創世神はそう言って馬鹿にしたが、やはり黒影が心配なのか空を見上げた。
……そうか。翼でさえ、あんなに速く移動しているんだ。覚悟しろ、俺!
サダノブはそう思い直し、バク転をすると二匹の真っ白な小さな狛犬に姿を変えた。
『気を遣わせて……悪かったな』
身体の周りをくるくると廻り喜ぶ二匹を一匹ずつ撫で、落ち着かせては両腕に二匹抱えて、創世神は青光りする黒い烏の翼を広げ、地面を強く蹴った。
『いざ、参る!』
上空は更に冬の寒さが凍て付く程である。
創世神は手にした二匹の狛犬を見詰める……。
阿行も吽行も、心無しか寒そうに首を縮め、おどおどと創世神を見上げた。
…………なっ!サダノブの癖に、可愛いだと?!
一度、二匹の可愛い視線を見なかった振りをして、創世神は暫し考える。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173437698/picture_pc_2040075f0b4d1e65b2fa2015f9ba3204.png?width=1200)
……まぁ、記憶が無いなら構わぬか。
『さぁ、押し競饅頭でも皆でしよう』
と、微笑んだ。
ギュッと抱き締めた腕の阿行と吽行だけが、柔らかい谷間の間に埋もれていたかも知れないと言う話は、此処だけの読者様と僕等の秘密と言う事にしておこう。
後でサダノブが知ったら……きっと卒倒するに違いない。
――――――
「……あれ?……」
黒影は何か胸騒ぎを覚え、遠くの空を見上げた。
「……如何しました?」
セナが急に立ち止まった黒影に聞く。
もう生命力が大分此の大地に吸われてしまったのではないかと、不安になったからだ。
……今……サダノブの絶叫が聞こえた様な……。
黒影は僅かに首を傾げるも、翼の無いサダノブが到底こんな上空には来れまいと、思い直して歩き出す。
「否、気の所為です。未だ動ける……心配は要らない」
黒影は命の時間を無駄には出来ないと、歩き乍ら話した。
最後になるかも知れない時の中で、共に闘って来た親友を想うのは仕方の無い事。
けれど……此処で大人しく尽きるなんて、考えやしない。
足掻くと決めた以上は、脱出経路を確保する気ではいる。気になる事と言えば……
「そうだ、セナさん。先程からかなり歩いたが、一向に一人もセナさん以外に先住人を見掛けない。もう……亡くなったと言う可能性は有りませんか?」
と、黒影は聞いてみる。
セナは暫く考えて、
「そんな……。私が以前出逢った方は、私より少し年上か同じぐらいに見えましたから、私と同じ様に外界から人が来る迄、何処かで隠れて逃げ切る為の体力を温存しているのかも知れません」
そう曖昧ながらも、想定出来る事を答えた。
「成る程……確かに、僕でもそうします。……雨風が防げて、隠れられそうな場所……か」
……さて、隠れん坊の鬼役になった気分だ。
当然、僕もセナさんが言った事と同じ事は既に考えた。
可能性としては十分有り得る。……が、一日も生きていられないとなると、もう一つの猜疑心が産まれる。
果たして……此の今、まさに手を繋いでいる「セナ」と呼ばれる人物は、如何やって今迄こんな生存すら難しい世界で生きて来られたのだろうか?
生命力が維持されているのならば「死」への概念は何をもって「死」と見做すのか。
生命力が満ち溢れても動けなくなった時……なのだろうか。
食糧は?……此の大地が吸った生命力が、この世界で生きているもの全てに供給されるのであれば、供給源は何か……。
まさか、本当に宇宙人の様に、体内吸収する訳ではあるまい。
補充場所の様な物が在っても良い気がする。
先程から僕から力を徐々に奪っている、此の大地を観察していた。
足を付く、離す……此の動作の時に、まるで電極のプラス、マイナスの様に、青と赤の光の筋が反転するのだ。
僕が思うに……此の世界は「電流」を下に、創造されている。
巨大ではあるが、中身を知れば簡単な事。
僕が歩く度に光るのは青ばかり。……これを生命力を吸収される時だとカウントするならば、セナが動く時に多く見られた赤い光が供給の流れだと予測している。
こうやって考え乍ら共に歩いている時点で、僕から流れた青の光が、セナに流れる途中で赤に切り替わったのを、何度か目認した。
生活感の今のところ見えない種族だ。
外界からの者を態と受け入れ、地面のシステムを使い、食糧の様に生命力を吸い尽くす為に、「追われている」などと言う偽装をしているかも知れないと言う、仮説が浮かぶ。
実は「追われているのではなく」、「追われている様に見せ掛け、早く動いて貰う為」の、一人芝居ではないかとね。
だが、今のところ確実な証拠も何もない。
推測域で人を疑うのも如何なものかとも思う。
本当に「助かりたい」と言う気持ちは……「変えたい」と言う気持ちまでもが嘘だとは言い切れない。
「あの……セナさんは、以前現れた外界の人と、何処で逸れましたか?」
……そう、自分の未来を知りたい様に見せ掛けて、本当は調べたい事がある。
「本当にセナさんは隠れていたのか?」と、言う事実確認だ。
何処に案内をしてくれるのか……僕はワクワクしている。
残された時が刻まれ始めた時から、僕は懐中時計を一度たりとも開いて見ていない。
残りを数える無意味さを知っているからだ。
人間の命の制限は必ず誰もにある。
たった一秒でも後悔したくはない。
諦めなかったと言う事実其の物が、僕の中では「後悔の無かった人生」として、刻まれる事が分かるからだ。
全く怯えが無い訳では無い。
だが、怯えている時間があるならば、僕は好奇心の赴く儘
に行動し、中途半端な終わりだとしても、精一杯は抗ったと、己を許してやれる気がするのだ。
大切な家族……仲間……今は見えなくとも、胸を張って最後迄、堂々と自分らしく生きる事が、今の僕に彼等へ出来る事だと思っている。
……我が人生……一片の悔いなし……
そう、言えたならば良いなと願い……迷わぬ様に、進む道がある……。
ーーー
「……確か……此の辺りです」
セナは大きな平らで丸い屋根の下の、ビル群や道路の暗がりに僕を呼んだ。
……元は此処が主要都市だったと想定出来る。
大きな巨大な屋根を見ると、まるで傘の開いた大木の様に、中心部から地面と同じシステムが構築されているのが垣間見えた。
然し、地表とは違い、既に作動していない。
随分と前に壊れた事で、此の街が今の変貌を遂げたのだろうか……。
「此のビルの前で見たのが最後です」
そう言ってセナが見詰めた先には、僕の世界と何も変わりも無い雑居ビルがあり、手入れもされずに崩れ掛けているのが解る。
此の世界の中では、かなり旧式でアンティークの様な建造物であるのは一目瞭然だ。
「では、先の外界から来た人と、此処に隠れていたのですか?」
僕は其の雑居ビルの扉のドアノブを捻り乍ら確認した。
「いいえ……。私は出来る限り其の人に、今度こそは長く生きて欲しいと思い、初めに事情を話し、本当に必要な時以外は助けを求めない様、此処から少し離れた場所で隠れていました」
と、セナは答えるではないか。
此の答えは如何にも本当に有りそうだが……。
僕は論より証拠だと思い、中へ入った。
閑散とした荒れ果てて、埃まみれの廃屋と化したビル内。
壊れて折れた机や椅子が無機質に転がっていた。
足元を見ると、分厚い埃を擦って行った様な、先人らしき足跡が確かにある。
其の疲れ切ったであろう……其れこそ、ゾンビか何かの引き摺った足の歩みの様だ。
僕も……こうなる運命(さだめ)なのかと、腹を括って辿る。
奥へ行けば、もう外からの光は、ひび割れた針金入りの曇り硝子越しで、僅かにしか届かない。
未だ然程壊れずに残っている机と椅子の所で、足跡は確かに消えているではないか。
其の儘下がって、床の埃に跡を残さず去る事も可能だが、其の利点は無い上に、其れをやると多少なり着地足跡が重なる為に多少のズレが所々に現れる筈である。
だが、其れも確認出来ない。
椅子が引かれ、恐らく此処で休憩を摂ったのだろう。
遠くからピシャリピシャリ……と、水が僅かに滴る音がした。
旧式だからこそ、水が在ったのだ。
だから、此処に逃げ込んだ。
其の人物とは……
僕は袖で埃を払ったであろう机の上に、見覚えのあるメモ代わりの紙切れと、ペンを見付け絶句した。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173437785/picture_pc_5483c946eb14225ec7e504b542d648fa.png?width=1200)
「……だから……あの時……」
僕は直ぐ様、其のペンをしかとポケットに大事に仕舞い、此の世界で息絶えるかも知れないと言う、弱々しい己の心を破り捨てた。
万が一すら、もう考えはしない……。
僕が考える事はただ一つ。
「真実のみで良い……」
小さく呟き、セナの待つビルの外へと戻る。
あの人の足跡を……辿って……。
――――――
「……如何でしたか?消えた人の行方……分かりましたか?」
セナから見れば、死んだも同然。
怯え乍らにそう聞いたのも無理は無い。
僕は此処にいた人物が生きている事を知っている。
だが、今は其れを教えない方が良い。
女性が男性の嘘を見破る時、瞬きの回数や僅かに広がる鼻等の小さな違いに気付くらしい。
白雪が何時も僕の嘘を直ぐ見抜く場所は教えてはくれないが、セナさんも女性であるからには嘘を見抜き易い。
嘘が滅法苦手な僕は、ひび割れた曇り硝子を見て、背を向けた。
「やはり、途中で痕跡が消えています。綺麗さっぱりと。……残念ですが……」
と……と……あの死に損ないの強運だけでしぶとく生きている創世神がと、ニヤニヤ笑い乍らお悔やみらしき言葉を吐く。
―――やっぱりこんな所迄来ても、くたばりもしない!
と、何時も病弱なのに、書くだけの為に生かされているような奇妙なあの人物を想像し、爆笑したくなる。
此れが普通の硝子ならば、笑いを押し殺している顔が映って丸見えになってしまうところであった。
曇り硝子で良かった〜と、思っていると…………?
此れは……。
笑った顔も、真剣な眼差しに変わった。
割れ方が妙だ……。
其の時、黒影の「真実の目」が、真っ赤に色付く。
……見えた……。此の……世界が。
窓硝子から視線を周りの壁、下の壁、床へと落とし、セナに視線を戻し、怖がらなくても良いと言う様に、微笑む。
だが、其の微笑みは薄く……長い睫毛が落とされたまま。
……真実は……時に、残酷である。
ーーー二時半🕝【御礼申し上げます】
【ワイズサポーター【about ' Chantilly ' 】様より
フォローにて、ご丁寧に紹介して頂きました。
今後とも宜しくお願い致します。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173437900/picture_pc_63e6c6fdca5b71714d33a042bf186559.png?width=1200)
各所御礼着順につき、追加御礼とご紹介させていただきました。↓↓
ーーー三時🕒過ぎ 例のろくでなし
以前、何と申しますか……報告しました事ですが、読者様にあんな駄目親父の所為で、心配をお掛けしているのも如何かと思いまして。
やはり、父は大袈裟に言って、甘えたかったらしく……(なんて情けない男だ!と、思っている)
僕に確定的に癌だと言ったんですよ。入院する直前に、半分キレながら。
癌だとしても切除は成功したのに、真夜中にLINEでですね、まだ悪性かもわからないとか言い出しまして。
はぁ?(*´Д`)
僕が我が家だと一番何も言わない、事なかれ主義なんですね。
多分、後妻に見捨てられ、後妻さんの娘さんにも、まともに育てていなかったらしいので見捨てられ、姉は毒舌なのできっぱり世話なんかみねぇよ!……と、言ったのは想像範囲。
で、唯一まともな叔父さんは、一人で長く癌だった祖母の面倒を最後までみていたのだから、そんな初期段階の小さな事でと、呆れてはいる筈。
だって叔父さんに祖母をずっと任せっきりで、飲んだくれて女と遊び惚けていたのだから。
……で、こっぴどく皆に日頃の行いと馬鹿にされて、最後に僕だよ。
僕に甘えたいし、心配しまくって欲しいし、皆に言われたからって八つ当たりすんのよ。
ばっかじゃないの?!否、馬鹿だよ。
とうとう天国の母さんも馬鹿って言った気がしてならない。
さっき一生懸命イラスト描いていたのに、
「切れたけど癌か細胞見ないと分からない(そうだよな、小さいんだし)。でも、大概そうだって医者が言ったからそうなんだ(でも切れたんだから何が言いたいんだよ)」
は~……だから、何?なってから言えよ。どっちにしろ切除出来たなら黙って入院してやがれ!転移するまで……否、しても二度と連絡するな←氷点下になった娘の瞬間;
これで『黒影紳士』終わったらどうしてくれんだよ!!(今ね、きっと読者様と声が見事に揃いましたねww)
可哀想……可哀想……なんてねぇ、毒親に思う必要は無く、被害者はこっちですから、勝手に知らない所でのたれ死んで下さい。
医療費がどうのと言い出したら、母さんが最後に残してくれた、裁判所認め済みの離婚協議で残してくれた印籠、こっちの今迄の医療費と慰謝料を請求するぞ!と、言って追っ払うので安心して下さい。
天国の母さん、マジで……後の事まで考えてくれて、ありがとう✨
でも、僕には父さんなんか、いなかった気がする。
姉貴も言っていた。
姉『なぁ……うちらに親父なんかいなかったよな?』
僕『ああ……いなかったと思うよ』
母さん御免ね……。でも、男運だけは悪かったと、母さんも認めていたよね。
待ってくれる優しい人達が今はいるんで……
バイバイ……ろくでなし。←lineから削除ww
ーーーー🌃🕡18時半
朝方まで眠れなくて、応援してから眠りした。
起きたら……ぁはっ(・_・;)💦夜だ~。
姉とlineして、本当に何かあった時は姉から連絡もあるし、安心してlineブロしました。
姉と僕が結託したら、誰もぐうの音も出ないので、もう安心です🎶
安心したら、沢山眠っていました(^^♪
現実も大切にしなくては良い物も書けないし、効率いい作業も出来ない。
これで少しずついつも通りになると良いな。
いつも通りの大切さは、僕が何時も繰り返し言う言葉です。
脆く、壊れ易いから、大切にしなきゃあいけない。
僕は……今ある家庭と、妻と約束したこの長い物語の記念本を作ると言う夢を守る……案外、それだけで精一杯なものです。
何故、父が見捨てられたかは、単に何も守らなかった。
だから誰も守ってくれない。
家族の誰一人が家庭を顧みない行動をすれば、簡単に家庭は崩壊し皆が幸せになれなくなります。
どんなに喧嘩をしても、立て直す気があるなら、皆が幸せになる。
母は残された女三人、何があっても幸せにすると、何不自由無く育ててくれた。
三人しかいないのだから、家族全員で協力するのよと……そんな言葉が口癖で。
直接は連絡は切っても、本当のいざという時の姉からの連絡を絶たないのは、母のそんな言葉の所為かも知れません。
葬儀も行けないので、せめて墓にマーガレットの花でも手向けに行きますよ。
母の大好きな花でしたから。
ろくでなしには、些か勿体ない花ですね。
ーーーーーー御礼💐✨26000スキ突破!
さぁ、そんな事をしんみり考えている暇もない。
見て下さい❣
FF様、読者様から活力がこ〜〜んなに届きました(^^♪🎩🌹
リアルタイム日記の楽しい所は、編集中にいきなり、良いお知らせが来る
w↓↓
![](https://assets.st-note.com/img/1738921422-k3XsEK4ly1QvmxJD2HcYbOFn.jpg?width=1200)
スキのパス有りきですからね。
僕が……ではなく、皆様に感謝して、貼っておきます。
皆で〜〜やったね🎶✌
ーーーーさぁ!此の儘、3️⃣が出現! 更に舞い上がるぞっ!!
第三章 漆黒の影
創世神が此の世界を訪れてからのセナさんと二人の行動はこれで把握出来た。
此の世界について、もう少し調べなくては解決の糸口は見付けられそうも無い。
「黒影さんっ!」
そう思っていると、横に歩いていた筈のセナの姿が、一歩強く引いた様に思い、其の声に咄嗟に振り向いた。
「……朱雀炎翼臨!(すざくえんよくりん)」
僕はセナさんの髪を引っ張ったり、肩に伸ばされた複数の黒い手を見て、即座に朱雀の翼を呼ぶ略経を唱えた。
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ただでさえ、鳳凰や朱雀の略経の力を借りれば、体力は消耗する。
鳳凰と朱雀は同じ物で在るとも謂れるが、朱雀は巨大な翼で地に影すら落とすとされている。
無論、大きく威力の強い朱雀の炎を操るには、朱雀の威力よりも何倍かのエネルギーを奪われる。
此の世界では、鳥さえも翼にエネルギー供給システムが反映し、吸収されるのは承知の上。
護りに強い鳳凰では出来ない、たった一つの事が在る。
そもそも神獣とは、護る為に在り攻撃的では無い。
鳳凰は平和と平等。朱雀は方角其の物を護っている。
影を使う事も可能ではあるが、現時点では先住人のセナが此の世界が求める「正しい生物」であるのか、将又此の黒い得体の知れない生物こそが「新生の此の世界が求める生物」であるかは定かでは無い。
何方かを消し、何方かを生かす……僕は、神では無い。
単なる探偵だ。
鳳凰と魂を偶然共にした、探偵である。
僕は真に此の世界が求めるものを、しかと真実として此の目に収められたのならば、其れで構わないのだ。
事件解決とは、常に勝敗が在る物だけとは限らない。
そんなものは、刑事の風柳さんがやる仕事だ。
そうもいかない面倒事こそ、民間探偵パワーの見せ所じゃあないか。
間ってものはね……物事には必要なものさ。
倒せないのならば……敵か味方も分からないのならば!
第三の選択肢へ突っ込むだけだ。
「……セナさん!屈んでっ!」
僕は真っ赤な炎渦巻く剣を手に、セナさんに叫んだ。
セナさんは必死で片手を離さなかったので気付いたが、此の黒い影は腕だけでも相当な引っ張る力があると分かる。
こんなのと一々戦っていたら……あの人が一日も保つ訳が無いんだ。
書いてばかりで万年運動不足の不健康がねぇ。
セナさんが屈んだ瞬間は、片手が下に引っ張られた瞬間で、見ずとも分かる。
「ぞろぞろ湧いてくりゃあ良いって物では無いよ!……邪魔だ、散れ!」
黒影はそう言い放ち、セナの手を一度振り払うと、両手で朱雀剣を構えて後方へと其の腕を引き、
「破ーーーっ!!」
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と叫んで、大きく野球のバットを振る様に、炎の渦毎斜め上空へと漆黒の影共を打ち上げたではないか。
「ホ〜〜〜ムラ〜〜ン♪」
そう満足そうに、影が吹き飛んで散って消えた姿を見届け、笑った。
「えっ、ええ?!」
セナは何があったかも理解出来ず、引っ張られる感覚が無くなると、キョロキョロと辺りを見渡し、最後に黒影の顔を見上げる。
下から見上げた黒影は、未だ影が飛ばされた先を凝視していた。
其の翼は真っ赤に燃え上がり煌めく。
翼にはあの……血管の様に見慣れた、青と赤の光が絶え間なく細い線となり、蠢いているのだ。
其れでも、何かを探そうとする瞳だけは、そんな世界でルビーの様に輝き、遠くを見据えている。
「……行きましょうか」
決して顔は合わせなかったが、またあの安心出来る手が優しく差し伸ばされていた。
……諦めない……此の世界を。
……もっと早く……此の手に出逢い、そう思えたら良かったのに……。
――――――
『在った!』
創世神は抱いた二匹の狛犬を、そっと其の大地に降ろした。
『すまない……』
そう一言だけ付け加え、愛しむかの様に。
二匹は黒影同様に、創世神にも良く懐く。
見慣れない地に好奇心の目を向け、創世神の思った通り……二匹で戯れ合い、遊び出してしまう。
何の敵意も無い人間だと思って……安心してそうしている姿に、創世神は心を痛め、睫毛を下ろした。
其の仕草に気付き……二匹は駆け寄り、創世神を見上げて座る。
『御免な……。此処は未だ安全な地では無い。此れから、安全な地にするんだよ。だから、サダノブに変わってくれないか……』
二匹の頭を交互に撫で乍ら、創世神は言った。
此の地の事を、未だサダノブには話していない。
きっと……分かってくれるだろうと、信じる事しか出来ない。
あの時……夢から覚める前に書かなければ……こんなに愛する者達を巻き込む事は無かっただろう。
二匹は仲良く一度吠えると、くるんと空中で回り、打つかると同時に強い光を放ちサダノブに姿を戻した。
「……寒っ、天空!」
と、戻って一発目にサダノブが言ったのは、相変わらずの寒がりの台詞だった。
「うおっ!?……何だ此れ?」
……馬鹿だからか、足元が光る事に気付き、何度も踏んで確かめ始めるではないか。
『ぁはは……サダノブは黒影と真逆で、警戒心の欠片も無いな。……余り余計に踏むな。生命力が早く吸われてしまうよ』
僕は今日は牡丹の花のコサージュのボーラーハットを、何時もの癖で下に下げ様と、手を添えて笑った。
何を隠すでも無かった……。
だから、黒影はサダノブを選んだのだと思い出す。
「……うっそ!そう言う大事な事は、普通〜先に言っておきません?」
サダノブは分かり易く硬直して、言う。
『先に言ったら如何だと言うんだ?……何も変わらない。黒影が瀕死になれば、サダノブは自然に呼ばれて此処へ辿り着いた。其れが早くなっただけであろう?』
創世神の言葉にサダノブはムムッと押し黙るのだが……
「そうやって、先輩みたいに難しく言えば済むと思っているでしょう?詰まりは、先に此処に来た先輩はピンチなんですよね?せめて、策でも考えてから来るとか……在りましたよねぇ?」
流石と言うか……黒影の忠犬だけはあって、黒影がピンチだと分かると創世神にまで吠えてくる。
……の、だが……
『だから、お前が必要なんだろう?』
と、創世神は一々其れが如何したと言わんばかりに、目をきょとんとさせ、サダノブに言った。
「あー、其の目!そう言うところは先輩とそっくりなんですから!今、思いっきり馬鹿にしましたよね!分かるんですから」
サダノブは見覚えの在る目にそう言った。
『さぁ〜てな……愛してはいるが、本気の馬鹿にするとは違うだろう?其れも馬鹿で分からんのか?』
と、創世神は片足を投げ、腕組みをしてそう答える。
「えっとお〜……前半は馬鹿にしてなくて、後半は馬鹿にしている感じ?」
サダノブは馬鹿重ねで、本気で頭が馬鹿になって来た様だ。
此れは拙いと、創世神は趣旨貫徹にこう述べた。
『良いか、サダノブ。サダノブが此の世界で生存するのに必要なんだ。何でも良いから、さっさと床に氷を張らんか!』
痺れを切らした創世神はそんな言い方をしたが、黒影に何時もコキ使われている、可哀想〜なサダノブには普通に聞こえるらしく、
「ああ、そっか。地面の上にバリア的な……」
と、氷を放つ姿勢になり、拳を振り上げた。
『そうそう……そう言う事だ。因みに此の世界の大気圏にも其れは及ぶ。元はそう言った機械構造の世界でしかない。出来る限り……ぶっ壊して進むぞ!』
創世神はそう言うと、ニヤリと唇の片方の口角だけ上げ、声も無く笑った。
「其れって……吸われ無くても、俺だけ体力を消耗するって事っすよねぇ?無いわ〜無いんですけどぉ〜。2025年、ペットを大事にしましょう、強化月間……勝手に開催中!うぉおおりゃぁああーーーー!!」
サダノブが勢い良く、此れでもかと言う程真っ直ぐに、ボウリングの球を投げ込む様な見事な手のスライドで、氷の道を築き上げた。
其の氷の道の両端はシステムがショートしたのか、小さな雷の様に時折バチン!と音を立てては火花を散らす。
『行くぞ、ポチ!』
創世神はそう言って笑うと、走り出す。
「嗚呼!其れ、先輩の台詞〜〜!」
サダノブはそう言いつつも、黒影に何時も付いて行く様に、足早な創世神の姿を追った。
何時も誰かを追っている。
突然、其の追っている者が何者か分からなくなったら、きっと不安になったんだと思う。
其れでも俺は……其の不確かな者を追いたくなってしまう。
唯一分かるのは……其の追い掛けている者の先には、知らない世界が待っていると言う事だけだ。
同じ好奇心を持つのに……前も後ろも関係無い。
俺は何時も……そう思って、気が付けば無我夢中になっているんだ。
――――
「そろそろ……行きましょうか」
廃墟を包む大きな傘の様な屋根の、中央の巨大な柱を見上げ、黒影は立ち止まった。
地面の青や赤の光の線は、其の幹の様な柱に集約され、密集してはより強い輝きを放つ。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173547934/picture_pc_04554634156674cc7c382d56a40be85a.png?width=1200)
身体中が重く感じ始めている……。
一歩進む事ですら、躊躇したくもなる。
然し、此の世界で引き戻ると言う選択肢は既に無い。
丁度良い……そう思った。
引き返す事も、たった一歩退がる事さえ安易では無い世界だからこそ、僕は真実と言う光だけに、惑う事無く突き進む事が出来る。
僕には……既に分かっている事がある。
僕は尽きるかも知れないが、寸前にサダノブが飛ばされて来るのが分かっているのだから、其れ迄に此の世界の理を、あの人に伝えて貰えば良い。
僕一人の人間からしたら、こんな冷め切った世界でも、世界は偉大だ。
例えただのメッセンジャーで終わっても、僕は大きな世界の一部に成る此の世界で、真実を此の目に出来るだけで本望だ。
最後の……大事な余力さえあれば、辿り着ける!
最短ルートで駆け抜けるしか無い!
「……えっ、何処へ?」
急にセナの手を引いたまま、黒影は走り出す。
「……真実を見に行くんですよ!」
走り乍ら、黒影は確かにそう言った。
生命力をかなり消耗したのか、肩で息をしているのが分かる。
一体……何が真実だと言うのだろうか……。
黒い影に一々捕まっていては、確かに体力は早く奪われるが、走っても同じ事。
何故、忘れられた筈の……今は誰も必要ともしない、中央都市を目指しているのかさえも、セナには理解し難かった。
此の黒影と言う男とも、明日には別れが来る。
信じて此の手を引かれてやる覚えも無いのに、何故か振り解こうとしても、望んではいないからか、吹き切る事等出来なかった。
一日ぐらい……そう、たった一瞬の出逢いと別れならば、信じてみても良いのかも知れない。
流れ行く、久々に見る懐かしい街並み……。
何故か一つ一つに思い出が在った様に思える程、どれも懐かしい……。
何処かに未だ同じ世界の人はいないのかと、黒影に手を引かれ乍ら探した。
辺りを見渡し、時々前を向く。
黒影が私の代わりに前を向いて走っているので、余所見をしても気にはならなかった。
……誰も……いない……。
中央都市部が近く頃、私は一人も此の世界の者に会えなかった事に、孤独を感じていた。
ずっと……慣れて来た筈のに……。
今頃……感じるなんて……。
「セナさん……。此の世界で吸収された生命力を束ねているのが、此の中央都市部だ。未だ……何か思い出せませんか?」
中央都市部へ辿り着いた私は、後退りした。
知らない……こんな……景色……。
広がる景色は辺り一面を覆い尽くす黒。
床はゴースト達が蠢いては波打ち、吐き気すら感じた。
ゴーストが犇き合い、薄いが強い白濁した膜の様な床を押し上げ様としていたのだ。
「ひいっ……」
私は恐怖に短い悲鳴を上げ、黒影の腕に獅み付いた。
黒影は其れでも、背中を軽く優しく押し、真横に来る様にと引き戻すとこう言った。
「此処から……動けるだけの生命力を奪った者だけが、ゴーストの中でも、セナさんや同胞達を死に追いやった。此れ程の数が……本当に外界から来て、此の世界で亡くなった方だけに見えますか?」
黒影は、空いているもう片手を広げ、聞いて来た。
「でも……そう聞いたわ……」
私は黒影の質問に、戸惑っていた。
「其の話してくれた人物像について、もっと詳しくお伺いできませんか。僕には……もう、分かっているのですがねぇ。見て下さい……確かに、セナさんが僕に話した様に、此の影の人々は明らかに僕では無く、セナさんに手を伸ばしている。先程の腕から先だけ生命力を受けた者も然り。此の時点で、ある一つの仮説……では無い。単純な事実としてお話しましょう。僕は此の世界で、はっきり言わせて貰えば、セナさんに関わらずに、ずっと一歩も動かない……若しくは、ある程度生命力を奪われる前に、此の世界の大気圏を飛び突破する事で、生存可能だった訳です。
……最初……僕に此の世界のシステムを話さずに、助けだけを求めて来た。……本当は……何の助けが必要だ、っ、た、のですか?」
黒影はあえて「だった」と言う過去形の言葉を強調して言った。
巻き込んだ私に、迷惑だと言いたいのだろうか……。
そう思うのに、怒りの様な表情は一切見せず、帽子の影を覗き込んでも、至って平然とした……すましたポーカーフェイスのままだ。
……そうだ。本当に其の通りよ……。
私がずっと隠れて、外界の人に気付いても助けを求めなければ、何人も無駄に消える事等無かった……。
私は……一体、何を諦めたのだろう。
目の前に本当の救いが見えているのに、私は……私の事が分からない。
「そもそも、外見的には多少の違いはあるが、何故……セナさんは、カラフルに見える僕を外界の人だと判断したのですか?生き残りの同類では無く。走って救いを求めて来た時、僕が此の世界の大地を踏むのを見ていた素振りは有りませんでしたが……。僕……難しい事を聞いていますか?」
と、黒影は不思議そうに言った。
そうだ。先ずは……私に話し掛けた、同類の此の世界の人の事から答えなきゃ……。
「……一つずつ……」
其処迄言って、私は止まった。
身体が止まった訳では無い。軽い眩暈の様な感覚がして、くっきりと思い出せない。
其のくっきりと思い出せない同類の姿は、随分前で記憶が曖昧になってきているのか、何だか……薄暗くぼやけて……特徴が見えて来ない。
「特徴……と、言っても……。同じぐらいの背丈に体格だから……声も、そんなに老けてはいなかったし、同じ歳ぐらいと思ったんです。……特徴が薄い人なのかしら?……何故かぼやけて、良く思い出せません」
と、私は其の儘に答えた。
眩暈は、思い出そうとすればする程、酷くなる様な気がして、其れ以上は思い出せない。
「其の後、確か行動を別にしたのですから、ゴーストの襲撃があったり、其の人が目の前で亡くなられたとすれば、ショックで其れ以上思い出せないのも無理は有りません。答えられる範囲が其処迄であるならば、僕は此れ以上詮索はしない。外界からの人間だとする判断基準の方は如何ですか?此れならば簡単な筈だ」
と、黒影は気にせず、簡単な方へと質問を切り替えてくれた。
そうね……其のくらいなら……其のくらいの事じゃない……。
「…………えっ」
私は眩暈を抑える様に、顳顬に手を軽く当て考え込んでしまう。
……そうよ。此の「黒影」と言う男を、何故私は外界人だと判断し、頼ったの?黒影だけじゃないわ。名前も知らない色んな……今迄の数え切れない犠牲は……何?
眩暈に悪寒の様な恐怖が重なって行く。
「……黒影さん……私……」
見えない記憶に、とうとう身体が言う事を効かなくなって来た。
セナはふわりとふらつき、黒影に倒れこんだ。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173548479/picture_pc_2d6c4390bb9affdf0b9e8a4364c0be86.png?width=1200)
黒影は慌てて何処にも打つからない様に、コートでバサリと包んだのだが、其の儘……黒影迄、床に落ちて行く。
音も無く、消える事も無い。
黒影はぼんやりと此の中央都市部を包む、大きな傘の屋根を見上げた。
……もう、動けない……。
出来る事は……最後の砦を創る事のみ!
「十方位鳳連斬(じゅっぽういほうれんざん)解陣!……全鳳凰陣炎柱(ぜんほうおうじんえんちゅう)……解放!」
と、二つの略経をこんな時に唱えたのだ。
其れが如何に残り僅かな体力でさえも奪って行くのかは分かっていた。
其れでも……必要だったのだ。
展開した鳳凰の護りの陣の、中央の鳳凰図……そして広がる内枠、外枠へと十方位一斉に炎が勢い良く立ち上る。
真っ赤に燃える炎の円柱は、あの傘の屋根迄届きそうな勢いだ。
中央の鳳凰図の上にいる、セナと黒影は燃える事は無い。
「セナさん……貴方は……亡くなっている…………」
黒影は息をするのもやっとで、其の言葉を最後に、静かに長い睫毛を下ろし瞼を閉じた。
鳳凰の翼から黒影の状態が深刻である事を告げる様に、羽根がはらはらと落ちては、周りの円陣から噴き上げる上昇気流に乗り、赤と金にキラキラと輝いて、上へ上へと流れて行く。
……此れで……良かったんだ。
……此れで。
思い出せる筈なんか無いんだよ、セナさん。
僕は創世神が居たとされる場所の、防犯用の針金の入った曇り硝子を見た時から気付いていた。
劣化ならば、周りからヒビが入る。
だが、不自然に真ん中に何かが衝突した跡が見えた。
其れを追うと、其の周り付近の壁にも同様、何かが擦れた跡が在った。
そして……下の壁から床に滑り落ちた何かの跡……直ぐに何度も叩き付けられた、人間の背中ぐらいだと気付いた。
壁にも跡が残る程の強い力でだ。
其の背中は……丁度、セナさんの体格程。
創世神が消えたと知っていたセナさんは、創世神に助けを求めようと、何度か訪れた筈。
もう、助ける事が出来ない……そう思った創世神は、最後の力で此の世界で……助けられなかったセナさんへの悲痛な叫びを、僕に託した。
僕の役割は……此の世界の解明と、セナさんを助ける事だと気付いたんだ。
ところが、やはり創世神が消えた直後……セナさんはゴーストからの攻撃を受け、何度も何度も……身体を壁や硝子に叩き付けられ……亡くなった。既にコンテニューは切れていたんだ。
だが、其れにセナさん自身が気付いていなかったんだよ。
逃げる事等無かったんだ。
昨日の敵は……今日の味方……。
ゴースト達が、攻撃で吹き飛ばしたりするのでは無く、引っ張ろうとしていたのは……
……同類よ……こっちへおいで……と、でも言いたかったのだろう。
此の世界に生きている生存者……ZERO。
未だ色が残っており、ゴーストの黒い影に成り切れていない者は、セナ……たった一人。
最後の力で鳳凰陣を展開させ、何者も寄せ付けられなくした。僕の仲間と認識する者のみが出入り出来る。
此れで……息絶えても、セナさんを助けたかった、創世神の気持ちを確かに受け取った事だけは伝わるだろう。
セナだけがゴーストと同じ姿にならない理由は…………
――――――――
『サダノブ、彼方だ!あの木みたいな屋根の中枢部を見ろ!』
突然、創世神がサダノブに叫ぶ様に言った。
創世神が指差す先を、サダノブはバッと見る。
「あれはっ!」
見覚えのある真っ赤な光に、金の火の粉にも似た羽根が揺らめく火柱が在った。
「先輩っ!」
サダノブは其れが直ぐに、黒影の物だと気付き、氷の道を其方へ向けて真っ直ぐに投げる。
障害物が有ろうともバリバリを音を立て、氷で容赦なく破壊して行くではないか。
『黒影の事……否、鳳凰の事となると、無茶苦茶だなぁ。鳳凰付きの狛犬ってのは』
そう呆れつつも、創世神はサダノブの作った道を二人で駆け抜ける。
――――――八重幕合流
観察力と洞察力……
探偵、黒影にとって必要な物とは、
多角的に物事を見る事である。
一方向からでは見えなかった細い道も
自らが動き、違う方向から見れば
其れが真実へ繋がる道かも知れない。
道は必ずしも一つとは限らない。
複雑な物が人間関係であり、事件でもある。
必ずしも、犯人がいたり、敵、味方が在る事だけが事件だとは限らない。
我々が今回目指す物は、「世界構築」と言う解決法……ただ一本と此の時点で成ったのだ。
――――――
創世神とサダノブは飛び込む様に、黒影が展開した鳳凰陣の炎の柱へと入って行く。
『黒影!……黒影っ!』
創世神は倒れた黒影を呼び、心臓を見て、腕を取り脈を計る。
『サダノブは其方の子を……』
そう言う頃には、サダノブは既にセナの意識確認に入っていた。
『何とか息はしている』
創世神が、黒影の腕をそっと下ろし、俯いて言う。
「こっちは……」
サダノブが珍しく言葉を濁すので、創世神はサダノブを見る。
サダノブは首を横にゆっくり振った。
『……良いんだ。僕が彼女を殺してしまった様な物だ。力尽きそうだった僕は、彼女の助けに応えてやる事が出来なかった。屋内から、外で酷い攻撃音がしたにも関わらず、殆ど動く事すら出来なかった。けれど……黒影が知っている。彼女と此処迄移動して来たならば、心臓が止まっても彼女が動けた訳を……。サダノブ、此処の床にも氷を貼ってくれないか。彼女の方は僕が担いだ方が気が楽だろう?』
創世神はそう言う。
「確かに其れは有難いですけど……。こんなに弱っている時に、氷の上に寝かせるなんて、体温が下がってしまう。本当にやばいですよっ」
と、サダノブは黒影の息が何時止まってしまうのではないかと、気が気ではない様だ。
『何を馬鹿な事を言っているんだ。世界を愛する此の僕が、世界に住まう黒影をみすみす死なせる訳が無いだろう?信じろ……黒影も、僕を信じて彼女を此処へ連れて来てくれたんだ。僕が出来なかった未練を、果たす為にね』
創世神はそう言って、視線を少し落とした。
黒影が自分の事を想い、やってくれた事だ。其れが分かっていても、心苦しかったのは確かであろう。
「分かりましたよ。信じますからね!」
サダノブは打切棒にそう答えると、セナを担ぎ上げ、もう片方の手で鳳凰陣中央の鳳凰図に触れ、氷を床に這わせ広げて行く。
床だけなので、上は相変わらず火柱が上がっている。
創世神はコートと脱ぐと、バサリと鳳凰図の上に広げた。
「寒くないんですか?」
サダノブは驚いて聞いた。上空何メートルであろうか……。
真冬の天空の風は強く冷たい。
『ん?寒けりゃ鳳凰陣の火が吹き出している方に移動すれば良いだけだ。其れよりも今は人命救助が先だ』
と、創世神は言うのだ。
サダノブは創世神の「人命救助が先だ」と言った言葉があまりにも自然だったので、キョトンとした。
まるで黒影の様だと。
実のところ、此の言葉は創世神の口癖である。
どんな時も、どんな人にでも、命在ってこその「世界」。
「世界」在ってこその人だと考えられがちだが、ならば逆も然りと言う事だ。
此の世界の様に、人を選ぶ世界も在るが、
世界を少しずつ変え、形成して行くのも人である
創世神はサダノブの背から、助けに来てくれた黒影を労う様に、大切そうに広がったケープコートの上に移動させ乗せた。
『聞こえるか、黒影?来たぞ……。もう安心して良い。サダノブもいる……。鳳凰陣はもう大丈夫だ。意識が在るのならば、封陣だけしなさい。此れ以上、体力を使うな。……生きてこそ、真実は見えた時、輝きを増す……』
そう創世神は黒影の耳元で、ゆっくりと一つ一つの言葉を意識が途切れてしまわぬ様に言い聞かせる。
「……ふっ……封……陣」
黒影は目は開けない物の、やはり耳は最後迄聞こえるとだけあって、途切れ乍らも封陣させた。
「……あの……ところであのキモいの何ですか?」
此の儘回復を待つ間に、サダノブは炎が収まり視界が開け見えて来た、地中に蠢く黒い大量の人影を不気味がり、そんな風に聞いた。
『あれが……此の世界の人々だ。まるで閉じ込められた様に一度は亡くなり、留まっているらしい。僕はてっきり、其処の女が普通だと思い込んでいた。黒影が此処に連れて来てくれた意味は、此れを知らせる為だ。変なのは黒影や僕が助け様とした、其の女の方だ。生命力の供給もまともに受けずに生きていた。つい、昨日迄は。亡くなってもなお、他の此の世界の人々とは違い、影の様な姿に成り、生命力の供給を受けていない。だから、其の女だけ他世界の人間を誘拐し、エネルギーを僅かずつでも受けなければ、生きていられなかった筈だ。……全ては……此の女が仕組んだ事……。そう僕は解釈したが……。なぁ、黒影……お前は、そう言えば狸寝入りも得意だったな』
と、創世神は最後に黒影を見て言ったのだ。
「あーあ、バレちゃいました?幾分か良くなったんですがね、未だ疲れが残っていたので、此の儘狸寝入りをしていたかったのですよ」
黒影は腹に置いていたシルクハットをスッと手に取り、上半身を上げ帽子は頭に被せた。
『……其方の特別なレディの話しだよ。もう解っているんだろう?』
創世神はニヒルな笑みを浮かべ聞く。
「そう言う貴方だって、解っているじゃあないですか」
と、黒影迄ニヒルな笑いで含み笑うではないか。
……何だ、此の二人!不気味な笑い迄そっくり!
サダノブは、流石にドン引きしつつも……
「また俺だけ何も知らないんですかー?」
と、知りたくて仕方無いので、何時も通りに聞いた。
(黒影)「では……答え合わせと行きましょうか」
(創世神)『其れもそうだな。せーのっ!』
(黒影)「此の世界の創世神」
(創世神)『創造者だ』
「うっそ……」
サダノブは二人の答えを聞き驚く。
まさか、創造者が亡くなってしまうなんて。
まるで世界だけが、本当に浮遊しているみたいだ。
「嘘では無い。だから、助けは必要か?と、聞いてみたのだが、残念な事に記憶が無い。聴き出そうとして思い出させ様とした途端、ふらついて意識を失ってしまったんだよ」
と、黒影はセナが倒れる迄に至った経緯を話す。
創世神……記憶喪失。
生体としては死亡。
失敗作の世界の人々を大量に、地中に一先ずは閉じ込めたものの……其の恨みで狙われ続けて今に至る。
何とも如何し様も無い、創世神もいたものだ。
愛情表現破綻でも、黒影は未だよく知る創世神の方が幾分かマシに思えてきたではないか。
「……創世神って……変な人ばかりだな……」
と、小声で思わず呟いたなんて事は……読者様も、サダノブも聞かなかった事にしておこう。
2025/02/08土曜日は激突寸前、勢い着地〜〜🎶
妻様に内緒で一個食べちゃう、Valentine用のチョコ♪
ん〜〜❣この背徳感、たまらぁ〜〜ん✨←こりっww
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173584376/picture_pc_8ec765f4d1f01bdb09139664f5ee3958.png?width=1200)
今夜はシンプルに和風チキンスープ
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173584381/picture_pc_cbbcaf86f1f1814834b4d53ad8d25c20.jpg?width=1200)
沢山作ってご飯と食べて鶏肉を崩しても良し。
シチューやカレーの素を入れても良し。
カレーならお蕎麦屋さんのカレー風味になる。
コンソメでももちろんあり。
スチーマーでレンジ500Wで20分だから、お箸で崩れる柔らかさ。
同じ野菜で、味付けとお肉を変えるだけで、簡単丼の具🌟
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173584982/picture_pc_c6fee121f715421a0bc212a37d3aec61.jpg?width=1200)
スチーマーにお肉が下、上にお野菜を乗せ、お肉がぱさぱさにならないようにします。
調味料は砂糖多めに、味醂、醬油の順番で入れて、具材が浸る少し手前まで水。
余計なものは後は入れない方が、失敗しません。
少し揉み込んだらまたお肉を出来るだけ下にして、2〜3人前ぐらいで、500Wレンジ17分。
少なければ分数を減らして下さい。
出来上がったらお肉が固まっているので良くほぐしてお召し上がり下さい。
保存の際は、粗熱が取れたら保存容器かラップをして冷蔵庫で数日持ちます。
濃いめにしてネギや半熟卵とも相性が良いので、色んな丼ものアレンジをしてみて下さいね🎶
三日目は何時も長く最後まで読んでくれる、読者様スペース♪
だからご機嫌なんだよ〜〜♪
どうしても、記事を分けて読んで欲しくないの。
その理由は、出来ているかわからないけれど、自分の中ではきっちり構成があるし、推理小説においてはどんでん返しや、伏線回収等があり、あれ?!って、思わず前を探したりする……そんなお話しも書きたいんだ。
目次機能があっても難しい事だとは思っています。
その古典的なクラシックミステリと、ファンタジーやライトに推理やミステリに入れる、入門でいたいとは何時も考えています。
初めて推理やミステリを読んだ。
難しいと思ったら楽しかった。
単純に読者様が口々にした其の言葉が嬉しかったです。
自分が楽しいと思うことを、誰かと共有出来たら楽しいですよね(^^♪
大体、一日1章でここまで来ました。
音楽あり、無し、文章だけ……如何でしたか?
イラストを重んじてくれる人がいるように、僕は文章を重んじてくれる人も同じ読者様だと思っています。
楽しみ方が違うだけで、読んでくれている事には変わりないです。
沢山の書いている先生や、絵師さんに愛された、ちょっと漫画かアニメのような……変わったお話しなのかも知れません。
音楽をいれてみたのは、これが初ではなく純文学系ヒューマン小説で、景色への没入感として、一記事に一曲を採用しました。
中々の好評でしたので、戦闘シーン等が多い「黒影紳士」では?と、考えたのです。
まるでノベルゲーム実況のYouTubeでも見ている気分にならないだろうか?
と、言うお試しです。
あと、二日間……僕に時間を下さい←どっかで聞いたような……ww
正式には5日SPです🎶
だってバナーもタイトルもトリックみたいなものですから。
感想や、この総集編……毎回欲しいとか、ご意見があれば気軽にコメントしたり、スキで反応下さると分かり易いので、どうぞよろしくお願いいたします。
さぁ…4️⃣頑張ります!いざ、参る!!
長台詞を書いてみたい!と、書いてみました。
改行も「」内は、旧式の書き方でありませんが、滅多にWeb小説では読めない代物になってきていますので、若干字詰まりで読み辛いかも知れませんが、是非お楽しみ頂けましたら幸いです。
では、🎼音楽を聴く準備をして、行ってらっしゃいませ(^^♪🎩🌹
第四章 失われた記憶
「だからぁ〜、創世神は創世神じゃないか。何人いるんだ、一体」
黒影が苛々して腕を組み、片足の靴底をカツカツ鳴らして創世神に聞いた。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173606713/picture_pc_1b4642c793abceabc0f485369a7a3fee.png?width=1200)
『僕が、創世神だろう?ややこしいから、”創造者”で良いではないか!未だ主人公さえ決まっていないのだぞ?此の世界は。読者様が混乱する。よって此の「セナ」とか言う女の役職的には「創造者」で良い!……そもそも正確にとか言うがなぁ〜、此の世界は未だ構築もされていないのだぞ?』
創世神は、正しい「セナ」の表記は「創造者」で良いと言う。
「じゃあ、構築後は如何言うんですか?行形「創世神」に変えるんじゃあ、其の方が読者様から見て違和感がある!」
と、何と現創世神と次期創世神に成る予定の黒影の間で、一悶着が始まったではないか。
「先輩……そんな事より!」
サダノブが、黒影の肩を後ろから軽く叩き止めに入った。
「そんな事よりだと!?今、世界表記に関する、重要な話しをしているじゃないか!」
黒影は凄い剣幕でバッと振り向き、サダノブを睨んだ。
「……八つ当たりですって……。取り敢えずは構築迄は、二人もいたらこんがらがるから、「製造者」で良くないですか?馬鹿な俺に合わせると思って……」
サダノブは、自分を卑下してまでそう提案した。
「お前は、本当は賢いんだ。思考読みの所為で、普段は抑えているのだから、そんなに卑下する事は無い」
と、黒影は流石に普段から馬鹿呼ばわりし過ぎたと、サダノブを傷付けてしまったのではないかと思い、そう言った。
「ところで……そんな事より……何だ?」
そうだ。サダノブは何か言いたい様だったと思い出し、黒影は改めてサダノブに聞く。
「あの……其の「セナ」さん?って人、目が覚めそうです。記憶を失ったと聞いたから、俺で何か出来るかなって……。潜在意識領域や、反復した日常の記憶の思考を読もうとしていたんですよ」
其のサダノブの言葉に、
「やるじゃないか、ポチ」
創世神はサダノブの間にいた黒影の肩から顔を出し、サダノブを見て意外そうに言った。
「……でも、肝心な箇所を観る前に、意識が戻り始めて……」
其処迄サダノブが言ったので、黒影と創世神は横たわるセナに目を向けた。
確かに既に瞼を開き、呆然と上を眺めている。
「……気分は如何がですか?」
黒影が寒いだろうと、セナの床には創世神のケープコートを。上には黒影のロングコートが掛けられていた。
セナはゆっくり、無表情で辺りを目だけで見る。
其の視線が、心配して覗き込んでいる黒影の視線と打つかった時だ……。
「貴方…………誰?」
片眉を上げ、怪訝そうな顔でセナはそう言った。
其の言葉に、先に起きていた三人は目を合わせる。
「……覚えて……いませんか?」
黒影は静かに聞いた。
何故、こんなに記憶がすれ違うのかすら分からない。
旧多重人格……現在の解離障害の症状すら疑われた。
だが、
「……先輩、此の世界には元々は供給システムしか無かったらしんですよ。セナさんは後からもう一つの世界を生成するつもりだった。其処には全自動の生産性の高い自動エネルギー源だけが在り、其の世界と繋がる此の世界は「スピカ」と名付けられる筈だった。二つの星でそう呼ばれるから。もう一人……其の生命力補充の世界を作る筈だった……えっと…其の「創造者?」がいたんです。だけど、此の供給だけの世界を先に創造し、人々を配置してしまったが為に、大量の人が亡くなった。セナさんともう一人の創造者は、慌てて此の世界に生命力エネルギーを吸収するシステムを創ったんです。其れから生産を創るも、行き渡る筈も無かった。……其れに、生産エネルギーを司る世界を創る予定だった人物も、既に生命力が尽き亡くなっています」
サダノブは思考読みで見た、セナの記憶を話した。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173606930/picture_pc_d3c0b222b23de087693a03e2a93b9dc7.png?width=1200)
文字切れるww
「何故、失敗した?生産性は直ぐに追えずとも、此処では無く予定通りに其の亡くなった創造者が、他に生産世界を創れば良かったじゃないか?幾ら慌てていたとは言え、何故此処に変更したんだ?」
ーーー
其の黒影の答えには、セナが低い声でこう答える。
「あの人は悪くない……。計画は完璧だった。……二人の夢だったのよ。生命力の需要と供給により、永遠の安心を得る事が出来る世界。きっとそんな世界ならば、土地や食べ物を奪い合う醜い戦争も起こらない。……私達の故郷は小さいけれど、自然が豊かで貧しいなりに平和な暮らしが在った。私とあの人は、二つで一つの世界を創る事を思い付き、沢山勉強したの。……二人の夢だったからよ。けれど、陸続きだった私達の故郷は、隣国同士の争いにみるみる巻き込まれ姿を変えたわ。真っ赤な戦火と黒い灰だけが残った。計画を早くに踏み切ったのは、生き残った私達の故郷の人達を早く連れて来なくては行けなかったからよ!あんな急な争いが無ければ、此の世界は成功した筈なのっ!……他の世界にも誇る技術で、どの世界の人も羨む二人の技術で!」
セナは後半はもう……悔しさに震え、一筋の涙を流した。
けれど其の涙とは裏腹に、怒りにも思える……世界其の物さえも恨む、憎しみの目をする。
「だが!……急いだから失敗したんじゃないか!救うどころか君達は大量の折角生き残った同胞を、剰え死に至らしめたのだぞ!?世界を創れるのならば、ただ逃げると言う選択肢だって在った筈だ!先ずは安全を確保してやるべきではなかったのか。此処ぞとばかりに自分達の技術に驕り、実験台にした様な物だ!こんな世界だと知っていたら、誰も来たがりはしないよ。幸せに成ろうだなんて、笑わせるな!踏み入れるだけで死臭を放つ様なこんな地に、誰がいたい等と思うんだ!完全なる、失敗作じゃないか!」
黒影は、争いが起きたのを機に、実験台にしただけだと、此の世界の創生に苛立ちを隠しはしなかった。
世界を統べる者の責任も取れずに、何を言うかと思ったからだ。
「……バビロン(またはバベル)よ……」
セナが黒影を睨み言った。
「バビロン?……あの……斜塔か?」
黒影は急に何かと思ったが、再確認する。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173607303/picture_pc_ad1164faf0772c7168efca9304a9a7f8.png?width=1200)
「ええ……そうよ。神に近付きたくて、人間が驕り、怒りに触れ、言葉が其々違う。同じ「人間」と言う生き物でしか無いのに。此の世界では、常に外界から来た者と会話を合わす事が出来る。変換して聞こえ、耳に共鳴し届く様に成っている。……其れもまた、私達の理想だった。……私達は何とか火の海を逃げ切り、安息の地に辿り着けたと思っていたわ。けれど、言葉だけが通じない!「分からない」「教えて」も通じない、まるで異世界よ。其処で意思疎通も出来ない、常識も無い、郷にも従わない、迷惑な輩として私達を追い出そうとした。謝りたくても、何が違うのかさえも分からないのによ!……散々な迫害を受け、幾ら働いても奴隷の様に低い賃金で、折角生き延びたのに……なのに……今度は飢餓で死に、誰も綺麗な墓にすら入れず、花束さえ贈れない!」
セナは恨んだ全てを吐き出す様に話した。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173607349/picture_pc_3b02601e8a07c0fd98d2ed4644cbfdef.png?width=1200)
「……セナさん。急いだ事情は確かに分かった。然し、万人の幸せや平和は総て同じ物では無い。中央都市部の君が連れて来た生き残りだった人達にとって、ギリギリでも……未だ生きられる可能性が在ったならば、何れ違う道を其々が選べたかも知れない。生存の可能性はZEROでは無かった。だが、此処に来て……其の未来すら、失われた。残念ですが、可能性と言う希望までセナさん達が奪ってしまった事には変わりは無いのですよ」
黒影はそんな風に言ったが、創世神は違った。
『良い加減認めなさい!世界を創る者で在るならば。此れは明らかなる失敗作である。其れに多くの人々を未完成の状態で配置する等、もっての外!理想と夢が在って創った筈じゃなかったのか!大事な事を、恨みや妬み……不幸で掻き消したところで、君が人殺しで其の逃げる原因となった戦争並みの被害を此の場で創った事は、紛れもない事実だ!亡くなった人を悼む事もせず……君を恨んで追い掛けているのが、未だ分からないのか?同じ世界を統べる者として、僕は此の世界を此の儘放って置く事は、己の信念に反し赦し難い!申し訳ないが、此の世界……改めさせて頂く。僕が此の世界に再びを足を踏み入れたのは、其の為だ』
と、創生する者として、同情の余地も全く無く、厳しくそう言った。
「さっきから大人しく聞いていれば……失敗作?私と彼が創った此の世界を愚弄するの?……たかが外界からの死に行く者に、一体何が出来るって言うのよ!此の世界を変える?私とあの人の大切な思い出を?…………ない……許さない……そんな事……」
セナは上半身を起き上がらせた。
「なっ、何かいる!?」
サダノブは、セナの背後にいる黒影とは違う人影を見て怯えた。セナより一回り大きな恰幅の男に見える。ゴーストだ。
「サダノブ……此の影が此の世界の先住人だ。既に亡くなっているが、僅かな生命力だけで姿も完成されず、影になってしまったんだ。仮に「ゴースト」と呼ぶ事にした。だから余り失礼な事を言うな。……で?セナさん……其れだけの記憶が戻って、僕の名前を忘れたと言う事は……ちょっと失礼」
黒影はそう言うと、セナに掛けた己のロングコートをバサッと取り上げた。
「やっぱり……お迎えが近い様ですね」
セナの足が、徐々に黒ずんで行くのを見て言う。
「だから何?私は影の姿に成っても、此の世界を変え様とする者を許さない……。他界から来た者等、私達の餌に成って終われば良いのよっ!」
セナは鬼の様な剣幕で、黒影に飛び掛かろうと手を伸ばす。
後ろにいたゴーストは恐らく、セナが記憶を失った時、唯一……襲わずに過去の記憶を教えた者……。
詰まり、もう一つの生命力の生産を担う世界を創る筈だった「創造者」。
ーーーー
創世神は険しい顔で、ポケットから硝子の筆を光に翳した。
其の光はセナの瞳を直撃し、突然の目眩しに動きを止め、目を塞いだ。
後ろの「影の創造者」がセナを庇い、代わりに黒影に襲い掛かろうとした時である。
黒い影の伸ばした腕の手前で、創世神が振り翳した筆が、創世神が何時も操る、中央線が入った剣へと形を変えたのだ。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173607569/picture_pc_cdb8598b5365138c68b0c855402518dc.png?width=1200)
何時もと違っていたのは、剣の中央線は金色な筈なのに、透き通った虹色の輝きの線が在る。
黒影が思わず、迫り来る黒い腕を前に一歩下がろうとすると…
『敵前で下がるな、黒影!堂々としていれば良い!』
創世神はそう叱ると、一気に剣を其の腕へと、振り下ろした。
創世神の力は、黒影に比べたら軽い物だ。
然し見事に、其の影の腕がばっさりと一刀両断され、ぼとりぼとりと床へ転がったではないか。
「そんな!幾ら創世神だからと言って、先住人を殺すつもりか!」
鳳凰の魂が止めさせるのか、黒影は怒りに満ちた声で、創世神に叫んだ。
『何を勘違いしている。鸞(らん※黒影の一人息子)と同じ。光で影を一時的に切り落としただけだ。また再生する。此奴等が影で在る事には変わりは無いと気付いた時、僕は何よりも弱い硝子の筆を持って来た。軽いが、割れ易い。……其の変わり割れる迄、より滑らかに一線を引き、光を乱反射させる。美しく脆いが……物は使い用って事さ。僕の愛用の筆を此の世界に忘れてしまってなぁ。……此の筆……否、剣ならば、そんなには長くは保たないが、割れる迄は影を切れる!』
と、創世神は黒影に言って笑った。
「尖った硝子程、鋭利な物は無いですからねぇ」
黒影は呑気にそう答えているが、サダノブの顔は青褪めて行く一方だ。
「世界構築するったって、如何するんですか、此れからっ!」
サダノブにはセナの後ろから、まるでセナを今度は守る様にウゾウゾと出て来た「ゴースト」の数に怯え言った。
「もうセナを守ったところで、此の壊れた世界を直してくれるでも無いのに……馬鹿馬鹿しい……」
と、黒影は呑気に言うだけである。
「だから、先輩!」
サダノブは何方に氷の道を作れば良いのか、戸惑っている様だ。
「あの中心部の幹みたいな所だよ!此の世界を直してやりゃあ良いんだろう!全く一文にもならない肉体労働だっ!」
と、黒影は嫌味を言った。
『そう言う事だ。追っ手は僕が引き付ける。早く故障原因を解明してくれ!黒影が機械弄りが趣味で良かったよ……破ッ!』
黒影に向かっている「ゴースト」共を、創世神は話している最中にも、何体か切り倒して行く。
『走れ、黒影!』
止まっていれば、「ゴースト」が溜まり、硝子の筆から出来た剣が耐え切れなくなる。
割れる前に、此の世界を修復しなければっ!
「分かってますよ!サダノブ、行くぞ!」
黒影はサダノブに、さっさと氷の道を創る様に言った。
「二人して人遣いが荒いんだからぁーーー!ペット愛護月間だっつーーーの!」
と、サダノブは文句を言いつつも、道を創る。
黒影は何も後ろを見やしない。
ただ只管に走る。
後ろから、剣が下りる高音が、風を切って聞こえて来る。
信じる者がいるから、僕は前を見て……やっと走れるんだ。
――――――
地表のシステムが、一度此処で束ねる様に集約されている。
人間の血管で言えば、最も詰まり易い、要でもある。
例えば、首の様なね。
大概の大きな建設物と言う物には、必ず弱い部分と強い部分が出来てしまう。
弱い部分に補強を入れるのが普通だ。
此れだけの地上で集めた生命エネルギーを、一度束ねて上の市街地全体の傘迄噴き上げていたと成ると、ポンプの様な役割の何かが、勿論幹の下辺りで必要に成る構造なのだ。
上へ流すと言う行為は、簡単な様で逆流を防いだり、其れだけ大きなエネルギー消費をしてしまう。
だから、セナは先住人のご遺体を上にでは無く、幹の周りに埋めた。
エネルギーを横や下に流すならば、水流と同じで、エネルギー消耗も少ない。
此の辺りに、管理パネルか何かが有るのは間違いない。
『黒影、未だか?!』
創世神は黒影の背に、翼を畳んで着地した。
力は黒影よりは無いが、筆一本で書くだけで、黒影の使える技を総て使える。よって、黒影は何も心配をする必要も無い。
「さっき、貴方の大事な筆、見付けておきましたよ。硝子の筆じゃ、使い勝手が何時もと違うでしょう?渡しますか?」
黒影が幹の周りを悠長に観察し乍ら聞いた。
『敵では無い。黒影が持っていろ』
あくまでも時間稼ぎにしかならない硝子の筆を選ぶ創世神。
「あり余る武器を持ってしまえば、使いたくなる……。貴方らしい」
と、黒影はクスッと笑うと、一見何も他と変わらず湾曲している鉄の様な幹の一部を押した。
『わぁー!ちょっと……先に何か言いなさい、黒影!』
人の出入りで手垢が僅かに残っていたので、黒影は何となく押してみただけだ。
如何やら其処が此の世界の中核のシステムの部屋だったらしく、黒影が入ると同時に、創世神は背中合わせだったので転がって入って来る。
「わぁああー!あの、足!足っ!」
サダノブはそう言うと、耳を赤くして創世神を見なかった事にして背を向けた。
『ん?ああ……。……今回は空中線じゃなくて良かったよ。すっかり忘れていたが、此れ……袴ではなくて、袴風に見せ掛けたロングスカートだったんだよ』
と、創世神は呑気にロングスカートを直して、黒影の横に立つ。
黒影は生足を見てもいないし、システム構造を観るのに夢中なので、何も気にしない。
「サダノブがお子様だからだよ。案外、穂さんと出逢う前にはチャラ男だった癖に、免疫力低いな……」
黒影はそう言った。
『年増でも美脚は健在だからな』
と、創世神が笑うと、
「そりゃあ、ミニスカと間違えて履いて来なかっただけ、マシと言う事にしておきましょうか」
黒影はそう冗談を言う間にも、バサッとロングコートのヒラを広げ、小さなマイナスドライバーをコート裏の無数のポケットから取り出していた。
一々見ずとも、何が何処に入っているのか、コートを新調する度に自ら取り付けている黒影には分かる。
パネルを数箇所開き、生命力を奪われるリスクも省みずに、赤と青の光の蛍光灯の様な、太く光る供給と吸収システムの中枢に手を置き、目を閉じた。
「蒼炎(そうえん)……赤炎(せきえん)……十方位鳳連斬……解陣!」
青い影に特化した鳳凰陣と、赤い何時もの鳳凰の陣を重ねて展開させた。
黒影の翼からはらはらと羽根が落ちる。
対して回復もしていないのに、此の二枚の陣を出すと言う事は、鳳凰の奥義を出す事に匹敵する程の、体力を使う。
慌てて閉じた扉を外から探しているのだろう。
「ゴースト」達が体当たりをしているのか、バタバタと強い激突音が絶えない。
有象無象のゴーストが、次第に集まって来ているのが分かる。
「先輩っ!」
サダノブは、扉が外側からボコボコにされて行くのを見て、気付かれたと黒影に伝える。
『しっ!……黒影なら分かっている。今は其れよりも、自分の陰陽の気を其々に此のシステムに流して、破損箇所を調べているんだよ。此の世界の理は相反する二つの流れ。……電流のプラスマイナスに近い構造に成っている。黒影の陰陽に其れは限りなく近い』
創世神は黒影が何をしているのかを、サダノブに教えた。
「けど……まさか、此の世界中に張り巡らされたシステムを追っているんじゃ……」
サダノブは床に流れる様に落ちて行く、鳳凰の羽根を目の前に、不安そうな顔をする。
鳳凰が唯一飲める、回復にも成る霊水は持って来ていない。
鳳凰の力を使い切ってしまえば、黒影には「影」の術しか残らない。
「影」は肉弾戦だ。今の黒影の体力が保つか心配に成ったのは当然の事である。
『……だから、僕が来たんだろう?ただの美脚の年増じゃないんだ。少しは安心しろ』
と、創世神は笑った。
「ああ……そっか。創世神……ですよね、一応」
と、サダノブが思い出したかの様に言う。
「サダノブ、失礼だぞ。……そう、見える「威厳」が、全く無いだけなのだから」
黒影は終わったのか、振り向きそう言った。
『黒影が一番酷い事を言っている気がするが。……で?如何だった?』
創世神が聞くと、
「やはり、屋根の傘迄は届いていない。だから、中央都市部は壊滅した。中央都市部の此の周辺の地面の「ゴースト」には、若干の生命エネルギーは流れている。……だから、此処周辺が埋葬地だった。記憶が在った頃、セナさんは失敗はしたが、出来るだけ此の世界の人を生かしたかった……恐らくは。然し、滅び行く事は止められずに、共に世界を創る筈だった「創造者」まで失ったんだ。後は滅びしかない……自分だけが、永遠に生き残る世界で……記憶等……長い悲しみでしか無かったのかも知れない」
黒影が目を細め言った。
「では……破損はもう直らないんですか?」
サダノブが聞く
。
そうとあれば、此の世界を諦め、さっさと逃亡するしかない。
此の世界の誰もが死んでいる。
其れでも俺等は生きなくてはならない。
其処に同情等しところで、何も変わりやしないんだ。
”……これから……安全な地にするんだ……”
そんな声が聞こえた気がした。
「これから大丈夫になるんだ」と何時も言う、先輩の言葉に似て……
そう、成ったら俺だって良いと思うよ……
そう、心で毒付いた。
___
「誰が直らないなんて言った?だからサダノブは諦めが早過ぎると何時も言っているんだ。セナさんは僕等より若いが、諦めてはいなかったぞ?若さに失敗したら、”はい、さよなら”と……そんな大人に成るのか?僕はもし鸞だったらと思うと、お節介だが放ってはおけないな。……何の利点も無い事を、これからする。だが、僕は其の方が満足だ。此の儘の方が……後味が悪い。人は間違える。……大人に成っても、子供でも。間違いを正せるなんて、大それた事は思っちゃあいないが、其れが僕では無くても、間違いを正せるのも人しかいない。……何処かで此の世界の中に、動脈瘤の様に吸収したエネルギーが詰まっている箇所が在る。セナさんが本当に忘れてしまったのは、きっと其の場所だ。だからこそ中央都市部周辺に隠れ、逃げ込んだのさ。「ゴースト」から近い墓場にいたからこそ、余計に狙われ続けた。外界からの人間が来れば、此の張り巡らせたエネルギーシステムはセナさんの血管の様な物。……自ら産んだ大地に張り巡らせたシステムの異変で外界人の侵入に気付き、助けを求めた。記憶を失ってもなお残ったのは……本当に救われたかったのは……セナさん自身では無い。彼女は此の世界で亡くなったとしても、追われる事もなくなり、孤独も終わるだけなのだから。やはり……今の「ゴースト」と化してしまった先住人を助けたい……其れが、本当の願いで、独り記憶を失っても足掻いていたのだと思う」
黒影は、今迄の見解をそう話した。
扉は其の間も少しずつ変形し、外の光が僅かに差し込んでいる。
『其処迄解ったのならば、行くしかあるまいな……』
創世神が静かにそう言うと、ニヒルに笑った。
「その様ですねぇ……」
黒影もまた、帽子の鍔先を摘み下ろしたが、其の下にはギラ付く程の好奇心を浮かべた瞳で、真っ直ぐに扉を見詰め、ニヒルに笑う。
「まさかっ!他に逃げ道とか、無いんですか?」
サダノブは嫌な予感がして黒影に聞いた。
「無い!今、陰陽を流して見たが、此の中核部は元は生命エネルギーのタンクの様になっていたみたいだが、「ゴースト」に分けるだけで供給が追い付かず、ただの伽藍堂さ」
と、黒影は空洞が在るだけだと言う。
「だったら何で彼奴等、あんなに元気なんですか?何かさっきより増えてません?」
サダノブは、扉の先を考え、多数の破壊音に怯えて言った。
「……僕の鳳凰の陰陽の力さえ、今……まさに吸収したからさ。翼も使えない……。此の世界に辿り着いた時から、退く道等無い……ならば!」
『突っ込むぞ!黒影ーー!』
剣を構えた儘、創世神が扉へ向かって走り出す。
「サダノブ!……突破するぞーーーっ!!」
黒影が勇ましく吠えて、扉が壊されるのも待たずに、ロングコートを広げに広げて、大きな回し蹴りをし、其の儘体当たりで外側に扉を薙ぎ倒し、突っ込んで行くではないか。
「ぅおーー!何、やってんですか、二人共!」
とは言ったものの、此処で一緒に出なければサダノブだけ取り残されて餌食になるのは、馬鹿でも分かる。
「行くっきゃない、行くきゃない!乗り掛かったタイタニック……否、海賊船……否……此れ、如何見たって、幽霊船じゃないかーー!!」
暴れ狂う二人の後ろで、黒影が展開した鳳凰陣に冷気を纏った拳を当て、目も開けれずにサダノブは突っ込んで行く。
氷の逆さ氷柱が鳳凰陣で連結され、「ゴースト」を地上から次々に吹き飛ばして行った。
(創世神)『やれば出来るじゃあないか』
(黒影)「分かるのが遅いんだよ、行くぞ!」
と、二人は待っていて振り向くと、サダノブに微笑んだ。
俺達は何に向かって走っているのだろう。
我武者羅に何時も……何時も……。
答えが有るのだとしたら、
「誰かが助けを呼んだから」
「誰かが困っていると言ったから」
もし、そんな事を言われなくても、きっと走っていた。
何を突破したのかと言えば……
単なる扉や「ゴースト」の山では無く
其々の恐怖心や不安よりも
もっと信じたい物を見付けた時
恐怖や不安を捨て去った
捨て去った分厚い壁が
己の足元に崩れ塞がない様に
走り続けるのだ
突破して行くのは……
何時だって……自分自身の弱さだったに違いない
ーーー恐らくラストから数分音楽が余ります。
宜しければ、次の五章ラストスパート(最終回)に、この世界が平和になりますよう……黒影達に音楽に合わせた手拍子で、応援して上げて下さいね(^^♪🎩🌹
2025年2月9日(日曜日)最高の読み時だね(^^♪🎩🌹総集編につきSP拡大四日目発動❣❣✨5️⃣出現✨着地♪
さぁ、徹夜さんだが、夜が来るほどぐっすり眠ったよ。
少し息抜きに、また地味ゲーを見付けてきた。↓↓
お花を集めて、
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173743093/picture_pc_1fbb531fe34c5b743bd0eedf26853d63.png?width=1200)
今日は此処までお部屋も改造♪
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173743136/picture_pc_2144f64ee4680c2ad764d29511be7437.png)
偶には可愛いお部屋にしたいと思ってね。
更新はきっと朝だろうか。。
頑張ります!!
準備は良いかい❓さぁ……お手を……。
ラストスパートだ!!一緒に駆け抜けるぞっ!!
第五章 狂い咲け!
『黒影、宛ては在るのか?』
息を切らして、創世神が黒影に聞いた。
「最初の地に行くんです」
黒影も流石に息を切らしている。
サダノブですら、連続で氷の道を作っているのだ。
体力が奪われない訳ではない。
上空の乾いた空気は冷たく、顔が凍て付く様だ。
「力尽きる前に、凍死しちゃいますよ」
サダノブは思わず泣き言を言った。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173741330/picture_pc_a8ec709d3e38bd6872c0bb5bb09feaf5.png?width=1200)
「もう少しだ……。乗り切るぞ」
黒影がそう言った時だ。
背後からセナが……もう、漆黒の影の姿に成り果て、スーッと此方へ追い付いて来るのが見える。
「私の……夢みた……世界……」
そう呟く様に言って、黒影達を機械的な赤い目でぎろりと見詰めると、地上から少し浮いた儘の状態で、ゆっくり手を広げて行く。
其の広げられた腕の間から見えて来たのは……
何と、あの地底にみっちりと犇き合っていた大量の「ゴースト」ではないか。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173741378/picture_pc_7bf2dd4192acae0da12f28c33761c862.png?width=1200)
まるであの「ゴースト」の墓を盾に、中央にセナが守られるかの様に浮かんでいるのだ。
地底の「ゴースト」達を抑えていた膜が、次第に破かれて、一体一体と、滑り落ちる様にズルりと粘膜の様な糸を引き、下へ転がっては、ゆらりと立ち上がった。
「あれが人?!もう、ゾンビでしょうよ!」
サダノブは黒影の両肩を後ろから掴み揺らすと、早く逃げ様と必死だ。
「……悪いが、サダノブ。僕はもう走るのもしんどい。翼も出せない。諦めろ」
黒影は「ゴースト」を見詰めるだけで、そう慌てもせず、さらりと言うではないか。
「野犬に変化しても、先輩だけなら未だしも、創世神さんまで背中に乗せて此の世界で走って逃げられる自信なんて、無いですよぉ」
と、サダノブは情けない事を言うので、創世神は大きな溜め息を吐いた。
「レディファーストだろうがっ、其処は!全く無礼なポチだ。黒影……僕の大事な筆を此処迄有難う」
創世神はそう言うなり、剣で宙を切って硝子の筆に戻し仕舞うと、黒影に愛用の筆を渡す様にと掌を見せた。
「はい……しっくりくる方ね」
黒影が創世神へ愛用の筆を渡すと、創世神はやはり嬉しいのか、朗らかな笑顔を見せる。
そして呟く様にセナに言った。
「……夢……理想……。残念ながらそんな綺麗事だけで世界は出来ていない!現実的な惨さ、不条理……多くの相反する物の中に在る。本当に他界からの僅かな糧だけで、今……君を守ろうとする者達は満足出来るのか?……否、考えずとも答えはNoだ。君が変えてくれると思っている。何故ならば此の世界を創ったのだから、出来る。そう信じているから、君に加担し様と今はしているに過ぎない。何が言いたいか分かるか?」
創世神はセナの前で、何体もの「ゴースト」が産まれ様が、臆する事無く堂々と話す。
其の二人の間に挟むものは何も無い。
世界を創る者同士の話しである。
「なっ、何よ!また幾らでも創り直せば良いじゃない!」
セナは其の姿に、まるで注意された子供の様な気分になり、思わずそう言った。
「……嘘……付き……だな。創り直す事も嫌ぐらい、誰かに触れられ壊されるのも嫌なぐらい……愛していたのだろう?もう一人の「創造者」と、創り上げる筈だった世界は」
創世神はそう言って微笑むと、話を勝手に終えた。
敵前で背を向ける事は決してしない、創世神が……。
黒影は其の姿に、あんなにも「ゴースト」を従えていても、創世神には敵意の一つすら無い事を知る。
……そうだ。目的はあくまでも「世界構築」だったと、思い出すのだ。
世界を壊す、直す……では無く「構築」だったと。
『成る程……狂い咲きの桜もまた、美しい……』
追い詰められた最初の場所で、創世神は寒桜を見上げ言った。
黒影が其の辺りを調べ様とすると……
「止めて!其の桜はあの人と私が、初めて此処を創った時に植えたの!触らないでっ!」
一旦は大人しく成っていたセナが、急に逆上し叫んだ。
「此の世界を守る為に、あの桜を守りなさい!傷付ける者は生命力ごと喰らってやるが良いわっ!」
セナは黒影を指差した。
「何かヤバいっすよ、先輩!」
サダノブが慌てて退却しないかと、そう言った。
「誰がこんなところで引き下がる馬鹿がいるんだよ!……だから、此処を確かめないと話にならないんじゃないか。何処にいようが探偵だぞ?真実は近ければ近い程、危険を時に伴う物だ」
と、黒影は意地でも其処を調べる事を止めそうにない。
『十方位鳳連斬……解陣!』
創世神が、もう鳳凰の力すら使えない黒影に変わり、鳳凰陣を唱えた。
『サダノブ、黒影を信じろ!黒影が調べている間、我々で時間を稼ぐぞ!』
創世神はサダノブに叫ぶ。
サダノブは鳳凰陣中央の鳳凰図に入り、一斉に飛び掛かって来る「ゴースト」の漆黒の群れに、氷を放つタイミングを見計らう。
『サダノブ、一気に行けよーー!創世神必殺!「謹賀新年」!発動』
隣で集中しているのに、創世神が何かとんでもない事を言い出すではないか。
「きっ、きっ、謹賀新年?!……何、其れ?!」
思わずサダノブが、創世神を見て……見て……しまう。
……其の時……サダノブは……見た……!
「何ですかぁあ〜〜!!其のどデカい筆はっ!?」
思わずそうツッコミたくなったのも無理は無い。
身長程ある、わっさわっさの毛の、初書きショーでも始めるのか?と言う程の大きな毛筆を抱えているのだ。
『黒影、黒影……。取り敢えず、黒影もあやかっておきなさい』
と、創世神は呼んで振り向かせる。
其れを確認するなり、創世神はサダノブと黒影の頭上目掛けて、墨をたっぷりと含ませた大筆を振り、
『滋、養、強、壮ーーーっ!!』
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173741401/picture_pc_cf3cbc42dbee157d726b0658b586b45d.png?width=1200)
と、書くでは無いか。
「ちょっと、墨!墨っ!」
黒影は撥水加工入りのコートだったので、飛んで来た墨をピッピッと指先で弾き飛ばしたが、サダノブの方はモロにくらった様だ。
『元気に成ったー?ねぇ〜?年始限定だからねっ♪』
と、創世神はご機嫌そうに、満足気に満面の笑みを浮かべる。
「元気ですよ、ええ〜バリバリ元気ですよ。でも、何故がバリバリ元気のついでに、バリバリ怒りが込み上げた気がするんですよ。だぁーかぁーらぁー!何度言わせるんだ、ペット愛護月間でしょーーー!ぅうぉおおーーー!!」
サダノブが放ったのは、氷の大量の弓。
創世神は其れを見て、通常に戻った筆をくるんと一回転させ、
「朱雀剣!」
と、筆を炎の竜巻で出来た、朱雀剣に形を変え、氷の弓の後に一振りして、熱風で加速させた。
氷はやや溶けたが、刺さる威力は増す。
あくまでも時間稼ぎ。
「ゴースト」を市民と見るならば、大怪我はさせられない。
創世神なりの、「世界」に対する想いが在っての事だろう。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173741483/picture_pc_23c664cb5aa24dc90a364719a727a10f.png?width=1200)
「在った!此処だ!」
『見付かったか!』
黒影は桜の下の床を一枚剥がした、青と赤のパネルの光の線の前にいた。
創世神も地上から、中を除く。
確かに吸収のラインは正常に光ってはいるが、供給ラインの光が途切れ途切れに点滅している。
「……だから、此の桜は吸収ばかりをして狂い咲いていたんですよ」
黒影が創世神に言った。
「直るんですかぁ〜?」
サダノブも気になって、黒影を覗く。
「おぃ!お前はまた襲撃が無いか良く見ておけ。……一度システムダウンさせないと駄目だ。僕が感電してしまうよ。今、サダノブも創世神も暴れたから、ある程度中心部のタンクにエネルギーが行った筈だ。セナさん達を一旦其方に避難させてくれないか。彼方迄行けば、予備電源も在るだろう?此処が初めて創っただけあって、旧式で錆びて来ている。小さなラインの部品を削って、太いラインの補強に当てる。数分で済む様に準備をして、出来るだけシステムダウンの時間を短くはする」
と、黒影はこれから一旦生命エネルギーを止め、補修に入ると言う。
大事に大事にし過ぎて……
忘れられた宝物は
誰の目にも触れる事なく
……何時かは脆く崩れてしまうの……
其れを聞いていたセナは言った。
「皆んな、中央都市部で待っていて。私も……直さなきゃいけない事があるの」
と。セナは「ゴースト」達の黒い影が、次から次へと消えて行く姿を頬んで見送った。
一体だけを除いて……。
「行きましょうか……」
セナは其の一体と手を繋ぎ、黒影の元へと向かった。
「……懐かしい……」
そう言って、黒影が見ているパネルへと目を向ける。
「……セナさんも……皆さんと避難しなくて良いのですか?」
黒影はセナの声に、そう言って振り向く。
「眺めていたいの。あの桜を……」
と、セナは言う。
「……そう……ですか……」
黒影は気にも留めず、準備を黙々と始める。
一度此の世界で死んだ者が生きているのならば、此の供給が全く止まったからといって、永遠の死とは無関係だ。
だが、其処にそれなりの苦痛があるならば、其れは少なからず、本人のけじめの問題で、僕には関係無い。
そう思って作業を続けてみるものの、何かが気に掛かる。
「――――そうか……。形在る物は何時か無くなる。だからこそ……人は「儚さ」を美しさの中に感じる……」
たった一体の「ゴースト」が此の世界にいる。
他の「ゴースト」は名ばかりで、実のところ……此の世界の住人達で在る。
黒影はシステムを一時ダウンさせ、焦る気持ちを抑え修復して行く。
「セナさん!」
途中で、サダノブがセナを呼ぶ声がしたが、其れも無視した。
何かを救う為に、何かが犠牲に成る事が当然だなんて、思っちゃあいないよ。
其れでも目の前に在る、自分の出来る事を出来るだけ遂行し、生きる事以外に……一人の人間に出来る事は無い。
其の限られた範囲で、僕等は此の世界で毎日を生きて行くのだと思う。
ハラハラと花弁散り
淡く優しき色も既に白く
其れを見上げる二つの寄り添う影……
一つは揺ら揺ら春を待って消えて行きました
きっと其れでも私の中にいるのだと思っています
後は……貴方がもう一つの夢を叶えるだけでした
貴方が残した設計図を見よう見真似で創ってみても
貴方には成ってくれません
私はあれから決めていました
此の桜が散る時は
貴方と見た夢から目覚める日
此の世界は救い様も無い世界です
そして……救い様も無い……私です
貴方だけは……何時か馬鹿な事をと……嗤って下さい
今度は貴方と本当の理想郷を創れますか?
こんな失敗作の世界でも……
貴方と見た欠片が生きていた
此の世界に包まれ眠れるのならば……
黒影はパネルを閉じ、青と赤の光が一斉に流れて行くのを見たと同時に、指笛を吹いた。
転がる様に地上に上がれば、鳳凰の鳳(※ほう。鳳凰の雄の総称)が肩に乗る。
「鳳、翼にっ!」
黒影は鳳に、直ぐ様翼に化わる様に言った。
横たわるセナの姿へ一目散に駆け寄ると、弱った命の灯火が消え掛かっている様に見えた。
「……駄目だ!此れからなんだ、此れからなんだぞ、此の世界は!夢を見たんじゃないのかっ!救われたかったんじゃないのかっ!諦めるな!……諦めるのは今では無い!」
……此の桜が散ったら……私……貴方の下へ……参ります。
優しい微笑みで、何からも奪わず……息、耐え様とするセナの姿が在った。
黒影は出来るだけ鳳凰の強い生命力を吸わせ様と、セナを抱え上空に舞い上がった。
誰からも奪う事無く生きていられたら……
そんな小さな願いを……馬鹿らしいと、誰かが笑う夢を見てみたいと思ったからだ。
夢物語……綺麗事……。
「黒影紳士の世界」さえ無事ならば、其れで構わないじゃないか……。
そう吐き捨てられたら良いのに。
そうは出来無いのは、誰もがそう思ってしまったならば、争いは終わらないと、気付いているからだ。
一向に黒影の生命力さえ吸おうとしてくれない。
死んでもなお……死を望む。
世界の為に……。
『黒影……。其処できっと君は分からなくなると思っていた。だから、構築する為に僕が来たんだよ。其の儘……生命力を与えておいてくれ。……僕がセナの心に書き込もう』
と、創世神は黒い翼で黒影の前へ飛び、セナを観察し乍ら言った。
「然し……」
黒影は不安そうな顔で言った。
……セナは既に……生きる事を望んではいない。
望まない事を叶える事に等、意味は無いのではないかとすら思えたからだ。
『……願いと変わらん。……望みとは。時に見えず、時に……己でも見失う……。見失っただけでは、消えたのではないと思わぬか?』
と、創世神は黒影に問うのだ。
「……それは……そう言う理屈には成りますけど……」
そう黒影が困惑しつつも答えると、創世神は微笑み、
『否定出来ないのだな?黒影でも。此れはなぁ〜黒影の仕事では無く、僕の仕事でな。大事な事を忘れているよ、黒影。……此処にはもう一人、世界を創る……然も、達人がいるだろう?』
「……あっ……」
黒影はマジマジと目の前の……「創世神」を見詰めて言った。
「せんぱぁ〜〜い!こっち、また湧いてきましたよ!」
地上ではサダノブが何故かまた「ゴースト」共と一悶着して、暴れているではないか。
「何でしょうね……今度は?」
黒影は呑気に創世神に聞いた。
『創造者を奪われたと思っているのだろう?彼等からすれば、唯一の壊れた世界を直す希望なのだから。まぁ、実際に直したのは黒影だがな。……さて、僕は希望を見付けた』
と、創世神は何故か横の空を眺めるではないか。
黒影が其の視線の先に見た物は……
「ラピュ……」
「あぶなぁあーーーーい!!」
黒影が天空に浮かぶ長閑な小さな世界を見付けた時、何かを言おうと思ったが、サダノブが叫び乍ら吹っ飛ばされて来た。
「何で?!」
黒影は突如隣に出現した、天空の世界に驚いて創世神に聞いた。
『僕の他にも……世界を創造出来る者がいる。僕が産んだ「Winter伯爵の忘れ物の世界」にいる「漣(れん)」だよ。正月からマイペースで遅れたお陰で、漣の年末年始の連載が丁度終わってね。先程、一筆書いておいた。全て自動生産で其のエネルギーを他の世界に流し込める世界を書いて欲しいと』
――――――
「漣……見掛けないクリスマスカードが私の元に届いてな」
と、Winter伯爵は漣の前に葉書を差し出した。
※(著者の別の物語の登場人物。物語を「世界」とし、乱入する事を黒影紳士では「連鎖」と呼びます。「Winter伯爵の忘れ物」も後で読める様に、最後にリンクが🔗あります。先に読まなくても、ラストまで問題なくお読みいただけます。「Winter伯爵の忘れ物」簡易リンク🔗⇒https://note.com/ougetu/n/n7ede8454438d)
「伯爵……。此れはクリスマスカードじゃなくて、年賀状ですよ。日本の正月のご挨拶状です。……ん?でも……」
年賀状にしては少し遅いなと、漣は差出人欄を見る。
「ああ、此の人なら万年、日にち感覚皆無でしたね」
と、漣は「創世神」の名前を見て、納得して笑った。
「……で、何と書いてあるんだ?」
伯爵は見慣れない年賀状に興味深々である。……が、
「あの人らしいと言うか……。年賀状の余りで、執筆依頼ですよ」
と、漣は苦虫を噛み潰した様な顔をした。
「成る程……。中々に想像力のいる良いお題じゃないか」
と、其れを読んだ伯爵は乗る気満々の様だ。
「伯爵〜〜見えますか?」
上空の風に原稿用紙をバサバサと鳴らし、漣が伯爵に聞く。
伯爵は如何せまた厄介事に巻き込まれているのだろうと、漣と風柳邸を先に訪れていたのである。
やはり其れは正解で、隣に世界の大地だけ創り、様子を伺っていたと言う事だ。
黒影達がいる世界が本当は供給する大地であると気付き、エネルギーの生産と分配を考えているところだ。
「植物からも生命力は受ける事が可能……。ただ、彼方の世界の人々には既にエネルギーが足りていないとするなら、土台を創って後を任せるのも難しい……か。水耕栽培の自動化、畑の自動化であれば既に成功している。食糧は其の儘生命エネルギーに変え、残りは燃料エネルギーにして……、振動エネルギーを機械が動く度に、更に埋める様にしておきましょうか。上空なので、水力と風力でも十分だ。此れで二酸化炭素量も最小限で済む。ただ、管理者は必要ですよね?」
と、漣は其処で筆を止めた。
「あの……「ゴースト」とか黒影が呼んでいる住人達で出来るか如何か……」
と、伯爵が望遠鏡で黒影達のいる世界を覗き込んでいた時だ。
「はっ、伯爵!後ろっ!」
と、漣が驚いて転がる。
「んっ?……ああ、どうも。あのねぇ……貴方に丁度伺いたい事が有りまして……」
と、伯爵は突然現れた黒影でもない、真っ黒な影に平然と話し掛けるではないか。
「漣、管理者さん……ちゃんといたよ」
伯爵が紹介すると、其の影は深々と漣に一礼する。
漣は筆を貸し、其の責任者に書いて貰ったが、殆ど図で珍紛漢紛である。
其れでも伯爵には理解出来たのか……
「良し!責了とする!」
と「責了」のサインがされた。
寒空高く、原稿用紙が投げられる。
地味ではあるが、世界の誕生を祝福する紙吹雪である。
美しく長い硝子の赤と青の光が交差する橋が、桜の横迄出現した。
――――――――
『黒影……セナを此方へ』
創世神は其の橋が架かるのを見届け、黒影にセナを渡す様、両手を差し出した。
黒影から消え掛けの命を譲り受け、創世神は静かに地に降り、橋を渡って行く。
『孤独では世界は創れない……。新しい創造も出来ない。だから諦めたのだろう?桜は散るが、また咲く日を想い、暫しの別れに儚さを想う。人はどんな世界にいても、幸せを追求する。セナが間違いでは無いと言うのならば、正しい世界の在り方なのだと、僕も思います。
世界の価値は誰かが決める物ではない。其処に生きた人が決める事だ。
だから僕は君を残念にも、薄情な事に……夢が叶おうが希望を捨て様が、黒影みたいに鳳凰ではないから、関係ない。けれど……世界を創ったのならば、最後にやらなくてはならない事が在る。創世神としての、務めだ。君は其れを忘れていたんだよ。……だから、世界が壊れてしまった。行こう……未だ世界創りは始まってもいない……』
其の言葉にレナは僅かに瞼を開いた。
もう終わった……そう思っていたものが、貴方との思い出すら始まっていないとは……一体。
創世神の歩く両腕の中から、自分が創った世界を外から眺めた。
カツカツと静かな足音に揺られて、蕾に成ってしまった桜が見える。
『桜も未だこれからだと笑っている。此処からは自分で歩きなさい。……生きる為に……歩きなさい。最後に、これだけは覚えていて欲しい。
世界と言う物は…仕上げには必ず抱き締めてやる物だ。…誰もが願いを抱き眠れる様にね…』
そう言って、ゆっくりセナを下ろした。
……温かい人の優しさから……また世界へ舞い降りる。
見知らぬ橋の真ん中。
戻る事も、先行く事も出来る。
足元からは生命力が溢れ、あの冷たいだけだった光が、今は温かく輝いて見えた。
世界を抱き締める事が、どんな事だかは分からない。
けれど、此の私が創った世界さえも統べる創世神の腕は、温かかった。
此の人にとって、一つも総ても変わらない……そんな気がする。
「あっ……!」
消えたと思ったのにっ!
私は貴方の影を見て走り出した。
他の何も目に入らない。
貴方は此の世界の住人にすら成れなかった。
だって……とっくに、死んでいたのだから。
此れが夢で、私は地獄に落ちても何も後悔等しない。
貴方の影だけが、ずっと私の希望でした。
幽霊だと分かっていても……
だから私は……
此の世界を……
貴方が見えた世界を直したくは無かった。
沢山の犠牲を前に、私は独裁者と何ら変わりない。
そんな事だけで、此の世界の構築を諦めた。
……最後の仕上げに……世界は抱き締めてやる物だ。
『やっと……私……世界に成れました……』
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173741633/picture_pc_1c25da948f2b8491261d8ead2c2d8205.png?width=1200)
――――――
狂い咲いた桜散り、落ち着きを取り戻した世界が在る。
其の世界には、色を取り戻した人々と、橋を隔てて二人の管理者がいるのだと言う。
其の世界の名は「ゴースト」
恐れられる訳でも無く、人々が親しみを込めてそう呼んだ。
人々が住まう世界は「セナ」と呼ばれ、橋を隔てたセナのエネルギー源とされる「shadow」と言う世界と繋がっている。
『黒影紳士の世界』から遠い其の移動世界は、時々夜に通過すると、『Spica』と見間違えられた。
――――――
「ちょっと……降りる時はーー!ぎゃああーーーっ!黒影、サダノブ!何とかしなさーーーい!」
狛犬に成ったサダノブを抱え、黒影紳士の世界に舞い降り様としていた頃……色気も素っ気も相変わらず無い創世神が絶叫を上げた。
黒影は……ん?と、一瞬考え翼を止めたが、何事か気付いて帽子の鍔先を抑え、大笑いをするではないか。
「ぁはは……だから、気取った格好をしても、似合いやしないんだよ。何時もみたいに、突っ込めば?」
と、創世神を小馬鹿にするではないか。
「ぅおのれ!黒影ぇえーーーー!」
創世神は頭に血が登り、本当に頭から黒影に突っ込む勢いだ。
「やばっ、今年もやばいぞ!行くぞ、サダノブ!」
鬼の形相の創世神を尻目に、今日も無邪気に笑い飛び交う黒影なのであった。
――――――
重なる角度は幕と成りて
空向かう風 現す旗にけり
散るも散るまい華ならば
未だ蕾でも善かれと
笑い揺れる
炬燵の上に花弁三昧
此れ如何に
『黒影紳士 ZERO 03:00」ー八重幕ー』は、一先ず此処でおわり。シリーズなので未だ未だ続きまーす♪
――――――🎍2005 年🎍🐍
てん、てててててててん……てん、てててててててぇ〜ぴりゃあ〜〜……
読者様、本編では明けましておめでとうございます⛩️
早、黒影紳士も今年で……ん〜数えきれない!
こうやって本編でお会い出来るのが、何よりの楽しみで御座います。
読者様と迎える何回目の春でしょうか。
また四季折々……美しい季節を、読者様と散策出来ればと思っております。
昨年から引き続きまして、大きな節目の作業に入っております。中々次から次へと新作が出せず、寂しい思いをさせているかも知れませんが、こうやって時々恋しく、本編に戻り、また走れるだけの準備中へと、繰り返して行くと思います。
日進月歩🌕……着実に✨
また書いて書いて書いて行ける為の準備ですので、楽しみに待っていて下さいましたら幸いに思います。
皆様にとって、良い一年に成ります様、心よりお祈り申し上げます。
黒影紳士一同
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🌟本年も変わらぬご愛顧をどうぞ宜しくお願い致します🌟
この『黒影紳士』シリーズ第2巻にあたる『黒影紳士 Zero 03;00』は、2025年01月07日先勝日にて、Xで発表されたもの(文章のみ)に、イラストとフリーBGMやXのGrokを融合した総集編です。
黒影紳士本編では表紙イラスト。Zeroからはこの03;00以外は、挿し絵があります。
今回はSFとMIXさせた為、SF世界観を一度想像出来る様に、余計な挿し絵は本文にいれませんでした。
総集編はあくまでも著者のイメージでしたが、皆様のイメージと比べて、如何でしたか?
2パターン楽しんでいただけたならば、幸いに存じます。
さて……残りの時間は、音楽の余韻のままに、紳士とマドモアゼルの読者様方、格好い〜または華麗にキュートな、スイングジャズをキメ✨ちゃって下さいませ(^^♪🎩🌹
途中に連鎖しました著者の別の物語「Winter伯爵の忘れ物」(短編。冬のほっこり系ファンタジー)が気になる方はこちらへ↓↓伯爵と漣が登場します
After……
数日間お送りいたしました初の試みですが、楽しんできただけましたでしょうか?
世界の話ではありましたが此れを発表後、父の話あり、再びこうやって編集する事により、より考えさせられました。
「……夢……理想……。残念ながらそんな綺麗事だけで世界は出来ていない!現実的な惨さ、不条理……多くの相反する物の中に在る。」
創世神の言葉です。
綺麗事を言うなれば、僕は物書きでもあるのだから、何時も黒影がそうする様に、命の尊さに黙っていれば良い。
然しある種、本来の「物書き」とは、書き置いて行く者であり、それが自分の体験、知りゆる全てでも構わないのです。
此れが小説家であれば、現在販売中の本等にも影響しますから、考えは違います。
僕は「小説家」を辞めた「物書き」ですから、経験しうる事は人生と言う時間の中に限られ、残せる物も僅かと承知の上で書いています。
誰もが時間という制限からは逃れる事は出来ない。
今、介護で必死な人、生きる孤独と戦っている人から見て、僕は冷たい人間に見える事でしょう。
此れが普通の仲の良い親子ならば、無理をしてでも飛んで行った。
其の気持ちは在るんです。
何も……出来ないんですよ。経験上分かる人もいらっしゃるとは思いますが。
悪化すればする程、どの道別れゆきます。
何時か、ちゃんと此処まで辿り着く前に、人生で別れておくべき関係でした。
親はきっぱり別れられるのに、子供には其の確約が無いんです。
未成年であれば親権ではっきりするのかも知れませんが、成人してからだったので、母と父が単にもう愛せなくなって別れただけという、考えの甘さが出てしまう。
許そう、話し合えば、取りあえずは時々会えるのだから、今までと変わらない……その考えでは甘過ぎるのです。
父は離婚後、次に帰った時に言いました。
「ほらな。いつもと変わらないだろう」
と。一番、父が変わらなくてはいけないのに、それに誰も気付かず、指摘すらしなかった。
新しい家族を大事にしろ!帰ってくるな!と、はっきり言えたならば……それが正しさだと気づけたならば、せめて新しい家族は幸せになり、残された僕の家族も、その後まで振り回される事は無かった。
名残惜しさと、依存は違います。
父も知らずに、僕は死に掛けた時もありました。
それでも、僕は連絡をしようとはしませんでした。
其だけ、既に何も知らない、赤の他人の関係だったのです。
恋愛で別れても同じ。もう、生きているか死んでいるかも分からない。
其れが、別れと言うものです。
僕は自分にも冷たくしてきました。だから突き放す今を後悔しません。
誰にも何も言われなくても、僕は捨てられたのだ。ゴミの様に。
だから誰も愛さないし、愛せない。
何度、心で自分に言い聞かせてきただろうか。
そう思ってしまえば、楽だったのかも知れない。
けれど、今は違うんです。
そんな僕を気に掛けてくれた妻に出会い、愛される事も愛する事も出来る。
どんなに自分を卑下しても、必要だと言ってくれる。
書いた物はこんなにも沢山の人に読んでもらい、こんなにも大事にしてもらい、毎日が幸せです。
何かを救う為に、何かが犠牲に成る事が当然だなんて、思っちゃあいないよ。
其れでも目の前に在る、自分の出来る事を出来るだけ遂行し、生きる事以外に……一人の人間に出来る事は無い。
其の限られた範囲で、僕等は此の世界で毎日を生きて行くのだと思う。(第五章本文)
僕が精一杯、生きて頑張って……これから何が出来るでしょうか。
この度心配されたであろう皆様に、後どれだけの物語の薔薇を渡せるでしょう。
夢物語……綺麗事……。
「黒影紳士の世界」さえ無事ならば、其れで構わないじゃないか……。
そう吐き捨てられたら良いのに。(第五章本編黒影の思った事より抜粋)
自分だけで良い。そんな選択肢に見えたかも知れません。
きっと別れる覚悟が父より、僕の方が少し早かっただけだと思っています。
今生の別れで「家族じゃなかった」と、言えたら楽ですね。
外国では家族でも「愛している」と良く聞くが、僕にも愛する家族が出来て其の意味が分かった気がします。
だって今生の別れでも、嫌いでも……
また小さな事で馬鹿を言うに違いないが、長生きすれば良いなと、結局は思うのだから。
別れた女には会えないけれど、元気なら良いなと、ふと思う……
家族との別れとは、そんなものではないかと思えてきた今日なのであります。
僕はね、去る者は追わず。
今の大切な人達、妻、書ける時間への感謝で忙しいのですw
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![泪澄 黒烏](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/118011387/profile_16084c3de56610ff46720d1abb182c40.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)