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桶屋雑記(第1期)

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基本人との関わり方とか小説の話しかしないマガジンです。 毎日更新します。たまに進捗報告になります。
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#夏の終わり

夏が終わる。逃避行は文庫本の中で。

夏が終わる。逃避行は文庫本の中で。

文章を書いている時間が、一番呼吸を感じられている気がする。

一週間がまた終わる。スマートフォンでTwitterのタイムラインを流して、空しくなった。

一日のうち、会話が占める時間は限りなく少ない。私は決して話すのが好き、というわけではない。むしろいつだって話し方は手探りだ。考えて考えて、出そうと思った一言を放つ前に時間切れ。頭のキレは悪い。空気を読むのも下手だ。そも、人との対話に煩わしさを抱き

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『忘れさせてよ、後輩くん。』とシュレディンガーの猫。

『忘れさせてよ、後輩くん。』とシュレディンガーの猫。

 前々から予約していたあまさきみりとの『忘れさせてよ、後輩くん。』を往復の通勤+少しの時間をかけて読み終えた。

最高の作品をよんだあとのため息のために生きている。もちろん、最高の作品を書いたあとのため息のためにも生きているけれど、つまり、最高の作品から得られる養分が根無しの私を地に足つかせている。

『忘れさせてよ、後輩くん。』は初恋の人を亡くした先輩ヒロイン広瀬春瑠と、そんな彼女にずっと初恋の

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夏は死んだ。季節と言葉と思考は巡り、遠かった他人と自分の距離は少しずつ近づいている。

夏は死んだ。季節と言葉と思考は巡り、遠かった他人と自分の距離は少しずつ近づいている。

9月になって一気に冷え込んだ。夏は死んだらしい。
唐突な訃報に、先週と変わらず半袖のポロシャツで出勤する私は肩を縮ませるばかりだった。
肩にずっしりと夏の死体がもたれかかってくるからか、身体が少しばかり重い。
体調管理に気をつけたいね。今日は早めに寝ることにした。

夏が終われば秋が来て、秋は一呼吸のうちに冬になる。
緑と燦々太陽色の街並みを、刷毛を持った木枯らしが銀色に塗りたくる。
冬まではまだ

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