マガジンのカバー画像

桶屋雑記(第1期)

43
基本人との関わり方とか小説の話しかしないマガジンです。 毎日更新します。たまに進捗報告になります。
運営しているクリエイター

#2000字のドラマ

私の頭に『モクモク』がやってきた。

家の狭い自室で仕事をしていると、時折モクモクが心臓に針をさす。
その痛みのせいで、ため息が増えてしまうのが最近の悩みのタネだ。

私が『モクモク』と呼んでいるそいつは、芥川龍之介なら、「将来に対する唯ぼんやりした不安」と訳すだろう。絶望だとちょっと過激かなって思う。だから、私は珍妙なそいつに『モクモク』と名付けた。お風呂に入りながら、ふと頭に浮かんだのが『モクモク』だった。湯気みたいだけどさっぱり

もっとみる

好きな作品をオススメしてくれる同期の話と、空想一人遊びの週末。

大学の同期に唐突に勧められたアイアンマンを観た。
彼女のおすすめする作品はハズレがない。
なんで私の好みを知っているんだ。ホラーか?
もちろん、アイアンマンは私の大好きな作品の1つになった。
敵わない。
……実態は私の好みの幅が広いだけなんだろうけど。
そのうえ、あまり作品を知らないから。
8月下旬、私はアベンジャーズシリーズを履修することを決めた。
面白い作品と、面白い作品を推してくれる人にチョ

もっとみる
本屋で一目惚れしたあと、面倒くさい女の子のような夏の空を見上げた。

本屋で一目惚れしたあと、面倒くさい女の子のような夏の空を見上げた。

雨に濡れた週末が終わったと思ったら、
今後の週末は夏の日差しが戻ってきた。

女心と秋の空とはいうけど、
ぶっちゃけ秋の空よりも、夏の空のほうが起伏に富んでいて、
面倒くさい女の子のように見える。
面倒くさいというか、単に情緒不安定なだけかもしれない。
天気痛持ちの人からしたらいい迷惑だろう。
そうじゃなくても、連日の不機嫌な夏の雨は、
ただでさえ部屋に籠もる生活を強いられる身からしても、
気分を

もっとみる
【小説】ぬるま湯のようで、愛おしい、私と彼だけの致命的なバグ。

【小説】ぬるま湯のようで、愛おしい、私と彼だけの致命的なバグ。

 休日の6時前だっていうのに、カーテンの外からはぎらぎらとたくましい日差しが降り注いでいる。
 おかげで目覚ましをかけてないのに、ぱっちりと目が冴えてしまった。

 いつもより、陽の光が彩られて見えるのはなぜだろう。
 考えるまでもなかった。
 あの子のおかげだ。

 マットレスのスプリングの上で跳ねてみる。
 ごくわずかな無重力は、きっと私の心を表している。

 窓を開ければ、からっとした夏の風

もっとみる