チョコレートの文化誌
チョコレートというより、カカオについて書かれた本ですね。
チョコレートについて、載っていないわけではありません。詳しく書かれています(^^) それ以上に、カカオという植物(チョコレートの原料ですね)について、詳しいです。
この本で扱われているのは、主に、中米(中央アメリカ)におけるカカオの歴史です。ヨーロッパに入ってからのカカオ―または、チョコレート―の歴史については、他に、もっと詳しい本があります。
でも、この本を読めば、最低限のチョコレートの歴史は、わかります。
チョコレートに関心がなくても、中米の文化に関心があるなら、この本を読んだほうがいいです。アステカ、マヤ、オルメカなどの文化ですね。多くの中米文化では、カカオが、生活に欠かせないものだったからです。
例えば、中米の多くの地域では、「カカオ豆」が、通貨として通用していました。
このことだけでも、「カカオを知ること無しに、中米の文化を知ることはできない」と、おわかりでしょう。
著者の八杉佳穂【やすぎ よしほ】さんは、中米文化が御専門です。カカオを切り口に、中米の文化を手際よく語ってゆくのは、さすがです(^^)
中米の文化は、日本では、馴染みが薄いですね。カカオ(チョコレート)という、日本人にも馴染み深い素材を使ったのは、良い切り口だと思います。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
まえがき
第1章 カカオとの出会い
第2章 植物としてのカカオ
カカオの果実
カカオの種類
自然条件
カカオの生産過程
カカオの生物学的記録
第3章 征服期以前のカカオ――カカオからみたメソアメリカの古代史
メソアメリカの歴史
遺跡に残るカカオ
第4章 飲物としてのカカオ
チョコラテの作り方
王の飲物
庶民に広まるカカオ
さまざまなカカオの飲物
第5章 お金としてのカカオ
メソアメリカの貨幣事情
カカオの貨幣価値
カカオの価値変動
価値変動の要因
偽金と偽カカオ
さまざまな“お金”
第6章 貢納・交易品としてのカカオ
文献に現われるカカオ交易
カカオの貢納
市場とカカオ
第7章 薬としてのカカオ
カカオの薬効成分
カカオを用いた治療法
迷信とカカオ
第8章 儀式に使われるカカオ
神々とカカオ
収穫の祭り
通過儀礼とカカオ
マヤ人の文献に現われるカカオ
第9章 カカオの語源
カカオを最初に記録した人
語源を探る
チョコレートの語源
第10章 カカオの旅立ち――一六世紀以後のカカオ
中米のカカオ
カカオ栽培の広がり
カカオ生産地の移動
第11章 世界への旅
ヨーロッパへ渡ったカカオ
イタリア
フランス
イギリス
四大発明
アメリカ
日本
チョコレートの生産
注
あとがき
参考文献
図版出典一覧
索引