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ドットコム起業物語~蹉跌と回生のリアルストーリー

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90年代終わり。いまや伝説となったビットバレーに飛び込み起業した20代の青年がバブルの波に翻弄されながらも楽天へと企業売却するまでの、蹉跌と回生のリアルストーリー。 起業におい…
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2019年9月の記事一覧

第19話 覚醒する遺伝子

← 第18話 最近、元サッカー日本代表の岡田監督がご自身の経験を振り返って、面白いことをおっしゃっておられました。 泥沼にハマってズブズブ落ちていっても、途中は中途半端。どん底まで落ちた時、初めて地に足がつき、遺伝子にスイッチが入る。そこから人間は不思議な力を発揮する。そんな話だったと思います。 振り返ると、まさに、そういうことだったのでしょう。 不思議なのですが、それ以前と対照的に、この頃から先の記憶は、かなりメッシュ細かく、19年後の自分の中に残っています。 -

第20話  大ボスの謀反

← 第19話 「あんた、どうして起業したんだ」 川野さんからの執拗な問いがトリガーとなり、意識は飛び、瞬間的なフラッシュバックが始まりました。 ——— 時計を巻き戻します。僕の最初の勤め先、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)のオフィスは、青山一丁目から青山通りを少し、カナダ大使館方面へ歩いたところにある、日本生命さんのビルにありました。外資コンサルティング会社が、投資銀行と並んで学生人気就職先ランキングに頻出する、さらに前の時代です。 ACは不思議な会

第21話 やりなさいということ

← 第20話 99年の7月末。どうやら子供を授かったらしいことがわかりました。 トモに起業を夢見、世界をあっと驚かすチャレンジをしたいねと、隙間の時間を見つけては、ビジネスアイデアを議論していた、鬼頭くん、泉くんへは、その話を直接、伝えることにしました。 ある週末、二人が、綱島駅から15分ほど歩いだ先にある、こじんまりとした2LDKのアパートに遊びに来てくれました。家賃は14万円ほどでしたでしょうか。社会人2年目の共働き夫婦にとっては、これでも立派なステップアップでした

第22話 中目黒の高田

← 第21話 早速、川野さんから連絡あり、紹介してくれたのが、中水さんです。川野さんの、JAICでの同僚で、30代半ばで早くも投資部長をつとめておられていました。飄々としていて、小柄。つるっとした感じの、川野さんとは対照的なタイプです。 中水さんを紹介しつつ、結局しゃべるのは、やはり塾長。JAICというVCが、漢の中の漢たちがしのぎを削る世界に思えてきます。 川野さんは持論を、ご自身の評価の尺度に沿って、ガンガン展開されていきます。 社長、楽天とお会いされては、いかが

第23話  ダイヤモンドヘッド

← 第22話 この時代に、観光をすることの意義はどんどん薄れていると言う人がいます。それはなぜかというと、今やネットで、そのランドマークの映像も動画も、なんでも観られるから。 このご時世、生まれて初めてハワイへ行って、ダイヤモンドヘッドを見ても、「あー、あの山、有名だよね」という程度の感動しかない、世知辛い世の中になっています。 2000年9月のとある日、プロトレード 経営陣、佐藤さん、岡田さんと、僕は、3人揃って、中目黒の楽天オフィスへ向かいます。 ここで僕らは、そ

第24話 俺は畑に何を植えているのか

← 第23話 就職・転職、恋愛(結婚)、そして提携や買収。 なんでも、相手がある、大きな物事を進めるときには、ちっぽけな自分にはコントロールできない、「カレント(潮の流れ)」というものがある。と体験的に思っています。 後日僕は、エグゼクティブ・サーチの仕事では、10年ほどで約5,000人ほどの方々と面談をさせていただくことになりますし、100人ほどの経営者層と企業のマッチングをさせていただきました。 転職は、とてもいい例なのだと思うのですが、各者本気で進めたいのに、な

第25話  損失の嫌悪

← 第24話 新宿駅西口から、パークタワーに向かう道すがら。地下歩道の通路沿いには、ブルーシートがたくさん連なっていました。そこに人の気配はあるような、ないような。季節は秋。だんだんと肌寒くなってきました。 その先にそびえたつ、3連の特徴的な高層ビルが、今日の目的地です。僕たちプロトレード の3人は歩きながら、こんなことを話していました。 小野:ここのブルーシートの中の人たちは、きっとあのビルで働く人達のこと、裕福で、幸せなんだろうな。羨ましいな。って思ってるよね。

第26話 均衡のスコアカード

← 第25話 クレイフィッシュ、楽天、ICGから、僕らプロトレード 社への、具体的な買収提案の条件が出揃いました。簡単にスコアカード風にまとめると、こういう感じ。 会社の発展性  : 1.楽天、2.ICG、3.クレイ 株式買取評価額 : 1.クレイ、2.楽天、3.ICG 給与      : 1.ICG、2.クレイ、3.楽天 こう並べてみると、どこが明確に良いとは言えなくて、立場によって意向が変わるであろうことは、ご理解いただけると思います。 時計を今に戻し、現在の楽天

第27話 悪魔のささやき

← 第26話 午前中に、プロトレード役員へのヒアリングを終えた僕の、次のターゲットは、一般社員とアルバイトです。 ネクストバッターは、一号社員の、相川くん。 彼は、僕の大学時代のスキークラブの後輩です。創部以来25年以上、男子だけという、超硬派な体育会系クラブで、パワーハラスメントの総合デパートのようなところでした。 ちなみに、僕も相川くんも、入部した理由はシンプルに、 「うちは学内10サークルの大会で5連覇。強いから、モテる。」という話と、 「お前な、サークル内

第28話   陽のあたる道

← 第27話 数えきれない自問自答をくりかえすことが、人間の成長には欠かせないことだと、信じています。 会社を立ち上げて以降、サラリーマン時代とは比べものにならない量の、自問自答を重ねてきたことは確かでした。 気がつくと会社のことを考えている。寝ていても会社のことを考えている。起業を意識し始めてから、そんな状態に至るまでは、意外と短いものです。 (ちなみに、サラリーマン経験がないままに、経営者になる人は、どうして社員は、自分のように思考を重ねられないのか、不思議でしょ

第29話   完全感覚のドリーマー

← 第28話 あかねさんとの、ほろ苦い再会を果たしてから、まもなくだったと思います。翌日とか、そんな感じ。 僕は神泉の駅から3分ほどにある、ガラスとコンクリートでできた、一風変わった低層ビルの一角にある、NetAgeのオフィスに出向いていました。 NetAge社は日本ではじめて、インターネット事業に取り組む起業家を、大量に育てていくことを、事業の目的とした会社でした。 インキュベーターという耳慣れない言葉とコンセプトをアメリカから輸入し、時代の風を受けながら、ノリとカ

第30話 決戦の朝

← 第29話  交渉ごとに強くなろうとするなら、結局のところ、経験をたくさん積むしかない。ということが、本当のところだと思います。ただ、ベースとなる考え方については、先輩から学べることは多いのではないでしょうか。 我がプロトレード 社の、売却交渉の大詰めの局面。ここから収束させていこうという場面で、株主のNetAge西川さんが、大戸屋でご飯をおかわりするくらいの無邪気さで放った一言は。 「もっと楽天さんに、出してもらおうよ。ダメなら孫さんのところ行けばいいじゃん」でした