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東京装甲少女  EPISODE0 第27話    【 おもちゃのお姫様 】



久留和一正は、意識を取り戻した。


目ヤニで霞む視界を振り払うかのように、眼を擦りつつ、現在、自分が置かれている状況を理解しようとしていた。

どうやらどこかのベットの上らしい。

久留和は、疲弊しきった体を動かそうにも力が入らず只々、天井を見上げる事し出来なかった。

何とか、周囲の状況を確認する為なけなしの力を振り絞り首を少し上下する事が出来たので現状、
目一杯見渡せる範囲を見渡した。

だが、この場所がどこなのか、何故この状況なのか自分には皆目、見当はつかなかった。


ここはどこ?わたしはだれ?

まるで、一昔前の映画の様な話じゃないかと、思うと、少し気が楽になったが、まさか、自分の身にもそのようなことが起こるものなのだなと思いもよらなかった。


幸いな事に映画とは違い、自分が何者かであるかは理解出来ていたので、あとは何故この場所にいるのかという事だけ思い出そうとしていた、、、。

確か、自分は、地下鉄のあの異質な空間に閉じ込められ、あと少し遅れていたら半狂乱化した人々に
殺されていたかもしれない時に誰かに救出されたのを思い出した。


壁が破壊され、救助隊ではない民間人のような人たちが、一生懸命救助をしてくれていたのを思い出した。

そして、それを見て安堵し張り詰めていた何かが弾け気を失ってしまったのを思い出した。


そうか、久留和はここは病院か!と少し先程よりも首を動かせるようになっていたのでもう少し力を籠め足元の方まで見入った。


だが、そこは、病院ではなさそうだったが、何故か自分のベットの足元の方に凭れ掛かりベットにうつ伏せに顔を沈め寝てしまっている女の子がいた。


女の子は何歳ぐらいであろうか?


赤髪が混じった女の子は多分4歳くらいかなという感じでベットの下の方で両腕を伸ばし本を見たまま
いつの間にか寝落ちしてしまったという感じであるようだった。


沙也にもこんな可愛い時があったなと、自分の娘を思い出していたが、閉じ込められたあの場所に行く前、そういえば久々に嫁と沙也に
合うはずだったのも思い出した。


そういえば、ここはどこなんだ?
こんなとこでゆっくりしていられない。
俺はあいつらの元に帰らなければならねーんだと思い少し足元に力を入れ微動した足に気づき女の子が目覚めてしまったようで。

少女
【うっ、、、、、ウ~ン】

と、小さい女の子は少し眠いのに何故、自分が起こされなければいけないのと不機嫌そうに眼を擦りながら椅子に座った状態で、ベットにうつ伏せにした上半身を持ちあげた。

まだ、寝ぼけ眼で眠たそうに眼を擦る幼い女の子に
久留和は力ない擦れ声を振り絞り話しかけた。

久留和
【 嬢ちゃん、、、、、、お嬢ちゃん! 】


少女はまだ眠そうにしていたが、久留和の擦れ声に気が付き少しびっくりした様子だが少し経つと応答した。


少女
【 あっ!!  おっ、、、おじさん、、、、、、
やっとおきたの? 】


久留和は幼い女の子が言った言葉で、自分はやはり何日も寝込んでいたのだなと気づかされた、、、。
そして、更に少女にここはどこだと話しかけようと思ったが、水気がない自分の口に気づき上手く喋れなかったのかゴホゴホと咳をしてむせてしまった。

苦しそうに咳をする久留和を見て幼い女の子はベットの傍らの小さいテーブルに置いてあった入った水のポットと空のグラスがあったのでグラスに慌てて水を入れて手渡そうとしたが、久留和は、うまく力が入らず腕も上げられなそうな状態だったので見かねた少女は口元に水を持って行った。


体は動かせなかったが少女の差し出した水を体全体が欲していたのかガブガブと勢いよく飲みこんだ。


久留和は空いたグラスを物欲しそうに見つめていたら、少女は、水を更に入れ差し出してきたので更に飲み干した。

そして、そのラリーは何度か行われた。

乾いた砂漠に水が吸い込まれるように、自分が植物で乾いた手先が根っこのような感覚の状態で全ての手先、足先まで水が行き渡りまるで人間としてやっと生き返ったような感覚がした。


久留和は満ち足りた水分を得てフーッと満足気に
大きく深呼吸した。


少女は更に口に水を運んでくれようとしたが、久留和はもういいという仕草で目をつぶったので口に運ぶのを辞めて、水の入ったグラスを傍らのテーブルに戻した。

少しして久留和は目を開きさっきよりも力強く話しかけた


久留和

【 お嬢ちゃん、、ありがとな!!生き返ったよ 】

少女は久留和の言葉に少し恥ずかしながら、満面の笑みでこう答えた

少女
【 おじさん、心配したんだからね!!もう!!
みんなも!! 】

と少し笑顔の後に拗ねた表情も見せた。


他の人間の存在やここはどこかは気にはなったが、
こんな優しい子が周りにいる環境が決して悪い所ではあるわけないので安心も同時にした。

久留和は、まあ、ここがどこでもいいがとりあえずは、こんな体の状況じゃどうせ、動けもしないので回復するまでの間は諦めが肝心かと思いとりあえずは自分自身を落ち着けた。


そして、まずは、この少女がだれで、自分はどこにいるか?位はしらなきゃならんなと思い。

少女との会話の中で聞かねばならんなと思っていた。


久留和
【 そうか、そうか、悪かったなお嬢ちゃん!!
みんなにも迷惑かけたみたいですまん、すまん。】

と久留和は先程まで、あまりうまく体が動かせなかったのだが、水を飲んだおかげだろうか?体の動きというか手や指先は先程より力が入る感じだったので動かしてみたが、さほど変わりは無さそうだったが、首は何とかゆっくりだが動かせるようになっていたので少女の居る方になんとか向く事が出来た。


少女は久留和が謝ると、少しふくれっ面をして

少女
【 私の名前はシェイルよ!  もう!いや!!】


そういえば、久留和はこんな小さい子と話すのは久しぶりだなと思いまあ、まずはご機嫌とりからでもしないと、このくらいの子は難しいからなと思い本題を聞く前に違う話題でもしてみるかと思った。


久留和
【 そうかそうか、シェイルちゃんか、おじちゃんは、アカハナって言うんだ。どうだいおじさんの鼻、真っ赤だろ?それでな周りの仲間からトナカイみたいに鼻の頭が真っ赤でアカハナって呼ばれるようになっちまったんだよ。 】


シェイルもトナカイというワードに機嫌を良くしたのか、動けない久留和の方に興味津々に近づいてきて


シェイル

【 ふ~ん、そうなんだ本当だね。
 おじさんのお鼻赤いね。 】

クスクス笑った。


シェイル
【 ねぇおじさん!私もねおじさんと同じで赤いんだよ眼が! 】

と顔を覗き込んで、目をぱちくりとさせた。

久留和は、首があまり動かなかったので、シルエット的には全体像を認識していたが顔は、はっきり見えていなかったが、シェイルという名前らしく日本人離れした端整な顔立ちに珍しい燃えるような赤い眼をした少女だった。

久留和はこの燃えるような赤い眼を見た時何か懐かしさを感じたがそれが何なのかその時には解らなかった。

久留和
【 ああ、本当だね、おじさんと一緒だねシェイルちゃんも赤いや!でもおじさんのとは違って、
まるでルビーみたい綺麗だね。】


シェイル
【ルビー?それなに?】

久留和
【赤くてとても綺麗な宝石さ!シェイルちゃんのお目眼はルビーみたいでとても綺麗だね。】

シェイルはそう言われると満面の笑みで嬉しそうに喜んだ。


久留和は今の状態ならば何か聞いても問題ないかと思い。

久留和
【 シェイルちゃん、そういえばここはどこなんだい? 】

というとシェイルはにこにこした様子で返答してきた。


シェイル
きしくしゃだよ。】


久留和

【きしくしゃ?】


うん!と、にこやかに頷いているシェイルが嘘をつくわけもないので、きしくしゃというものが名称か場所か何かしらの名前というのは、理解したのだが、これ以上聞いても、きしくしゃという言葉に
自分自身の引き出しの情報が無く
正解は解らないと思うので、更に他の質問をしてみた。


久留和

【 お母さんやお父さんはどこいったの? 】


シェイル
【 わかんない。おじさんを見ておいてって、どっか行ったよ。】


久留和
【いつ?朝?帰ってくる?】

シェイル
【うん!夜に帰ってくるよ】


久留和は、時間は解らなかったが日差しの入り方的に、まだ午前中の感じだったのでこれは、長丁場になるなと少し落胆した。



シェイルは一辺倒で面白みのない質問につまらなさを感じたのか、久留和に向かい久留和の足元に置いていた本を手に取り。


シェイル
【 これ、おじさん読んで。 】

と、ぶっきらぼうに差し出してきた。


久留和
【 これはなんだい? 】


と尋ねると

シェイル
【 お姫様の本 】


と言うと、久留和に見えるように本の表紙を見せてきた。

久留和はシェイルが持ち上げて見せてきた本の表紙に目をやると、

作者はメアリー・ド モーガンと書いてあり
題名は ものぐさドラゴン と書いてあった。

和訳されて出版されていた物だろうか?


久留和
【 これ、ドラゴンの話じゃないの? 】

と質問すると、

シェイル
【 違うよ、お姫様の話だよ 】

と、ほら!と言うと折り目を付けていたお姫様のお話のページを見せてきた。

久留和は、これは、この作者の短編集を和訳した本であることを理解したが、シェイルが広げて見せたページの【 おもちゃのお姫様 】 と題名が書かれたページの挿絵は随分、昔の作家の本で
あるのか、少し不気味さを感じた。


久留和

【 ああ、ここにお姫様の話が書いてあるんだね?
 そうか、そうか、これはママの? 】


と尋ねるとシェイルは首を横に振り

シェイル
【 ううん、私のだよおばあちゃんに貰ったんだ。
 でも、おばあちゃん、まだ来てくれないけど 】

と少し悲しげな表情に一瞬なったのだが、
もう、そんな話しないでいいからと
早くこの本を読んでくれと、せがまれたので、
久留和は、正直、字を読むのは得意じゃないので面倒だなと、思ったが、昔、自分の娘の沙也にも読み聞かせしてあげたのを思い出し、懐かしむ間もなく、シェイルが強引に眼前に本のページを開き、
読めと言わんばかりに見せて来るので、

朗読会が始まってしまった、、、。


東京装甲少女 EPISODE0  第28話へ続く、、、、、。



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東京装甲少女EPISODE-0という作品ですが
物語の初まりのOpening Part から
現在のストーリーまで今の所

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是非、東京装甲少女
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始まりから
お読み頂ければ幸いです。

今後は有料化も予定しておりますので
期間限定の今のうちに
お読みい頂ければ幸いです。
よろしくお願いいたします。


ここから、初めのストーリーを読む


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東京装甲少女という作品ですが、
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皆様のご協力を頂きこの度展示して頂く事が叶いましたので
また来年も展示されるのを目指してまいりますのでご協力
よろしくお願いいたします。
ありがとうございました🙇



NFT NYC2024 展示作品


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