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人事マネジメントと組織開発の基礎知識:組織を活性化する二つの柱

企業の人事担当者やマネージャーにとって、人事マネジメントと組織開発は、組織を活性化し、目標達成に不可欠な二つの柱です。


人事マネジメントとは:人を生かして事をなす

人事マネジメントは、「人を生かして事をなす」ことを指します。人を単なる労働力として捉えるのではなく、一人ひとりの能力を最大限に引き出し、組織全体の目標達成に貢献できるような環境を整えることが重要です。

1950年代のアメリカで生まれた「ヒューマンリソースマネジメント」がその起源とされ、人をコストではなく投資対象と捉え、その才能を引き出すための様々な手法が開発されてきました。

人事マネジメントの目的は、短期・長期の組織パフォーマンスを向上させることです。従業員のコミットメント(意欲)とコンピテンシー(能力)を高め、組織の変革を実現し、生産性の高い仕組みを構築することが求められます。

人事評価の重要性:公平性と成長促進

人事評価は、従業員の能力や貢献度を評価し、適切な処遇(給与、昇進など)を決定するための重要なプロセスです。

人事評価を行う理由は、処遇の格差の根拠を明確にし、不平等を回避するためです。また、給与や昇格などの処遇を公平に分配する基準を提供し、メンバーの成長を促進し、企業文化を醸成する役割も担います。

公平感を高めるためには、分配の公平感(他者と比較して適切だと感じられること)と手続きの公平感(評価プロセスが透明で、自己評価が反映されること)が重要です。

一次評価者は、メンバーの成果と行動を観察し、その価値を判断する役割を担います。適切な人数(7名程度)の評価を行い、他の評価者とすり合わせを行うことで、評価の質を担保することができます。

組織開発とは:人と人の関係性に働きかける

組織開発とは、「組織を良くするため、人と人の関係性に働きかけること」を指します。組織は「目的を共有し、共同している集団」であり、人が集まるだけでは組織とは言えません。共通の目的を達成するために、効果的な協力体制を築くことが重要です。

組織開発が必要な理由は、仕組みだけでは組織は良くならず、血を通わせる必要があるからです。肩(仕組み)を作り、血(実践)を通わせることで、初めて形(成果)が生まれます。組織の活性化には、人と人の関係性への働きかけが不可欠です。

組織開発の手法には、診断型(サーベイフィードバック)や対話型(オフサイトミーティング)などがあります。しかし、最も重要なのは実践者の「あり方」であり、正しい価値観を持つことが求められます。

組織開発の歴史と哲学:深遠な思想を背景に

組織開発は、1900年代の哲学を源流とし、1940年代のアメリカで始まりました。1950年代に日本に導入され、現在の形に発展しました。その歴史を学ぶことで、組織開発の本質を理解することができます。

組織開発の哲学的背景には、ジョン・デューイ(経験から学ぶ重要性)、フッサール(今ここに注目する哲学)、フロイト(無意識に着目し、深層的な理解を追求)などの思想があります。

ティール組織、学習する組織、ビジョナリーカンパニーなど、様々な組織モデルが存在します。それぞれの特徴を整理し、自社の組織開発の方向性を明確化することが重要です。

マネージャーに求められる知識とスキル:信頼関係と目標管理

人事評価において最も重要なのは、本人と評価者の信頼関係を構築することです。メンバー、一次評価者、人事部門の三者がそれぞれ責任を持ち、メンバーの成長と成果を促進するための主体的な関与が必要です。

目標管理(MBO)は、メンバーの成長を促進するための重要なツールです。OKRやKPIなどの手法を活用し、成果を明確化し、公平で透明性のある評価基準を設定することが求められます。

組織開発の実践者は、組織を良くするための価値観を持つことが重要です。日々の接し方や行動が、組織開発そのものとなります。哲学や思想を理解し、深い洞察を持つことで、より効果的な開発が可能になります。

結論:人と組織の成長を目指して

人事とは「人を生かして事をなす」ことであり、組織の基盤を支える重要な役割を担います。組織開発は、仕組みと実践を融合させ、関係性を重視することで成果を生みます。

マネージャーや実践者は、正しい知識と価値観を持ち、組織の成長に貢献することが求められます。

目標設定と組織文化:成長を支える二つの要素

企業が持続的に成長するためには、明確な目標設定と健全な組織文化が不可欠です。

目標設定の重要性:羅針盤となる目標

目標設定は、組織の羅針盤となるべきものです。組織全体の目標を明確にし、それを各部門や個人の目標にブレイクダウンすることで、全員が同じ方向に向かって努力することができます。

目標設定には、SMARTの法則(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性がある、Time-bound:期限付き)が有効です。

目標設定を行う際には、以下の点に注意する必要があります。

  • 組織全体の目標と整合性があること

  • 各部門や個人の能力に合わせたものであること

  • 達成状況を定期的に確認し、必要があれば修正すること

目標設定の手法:多様なアプローチ

目標設定の手法には、トップダウン方式、ボトムアップ方式、折衷方式などがあります。

  • トップダウン方式:経営層が目標を設定し、それを各部門や個人に割り当てる方式

  • ボトムアップ方式:現場の意見を吸い上げ、それを基に目標を設定する方式

  • 折衷方式:トップダウンとボトムアップを組み合わせた方式

近年注目されている目標設定の手法としては、OKR(Objectives and Key Results)があります。OKRは、組織全体の目標と個人の目標を紐づけ、透明性の高い目標管理を実現する手法です。

組織文化の重要性:組織の土壌

組織文化は、組織の土壌となるものです。組織の価値観、信念、行動規範などが含まれます。

健全な組織文化は、従業員のエンゲージメントを高め、創造性を刺激し、生産性を向上させる効果があります。

組織文化を醸成するためには、以下の点に注意する必要があります。

  • 経営層が率先して組織文化を体現すること

  • 従業員が共感できる価値観を明確にすること

  • 組織文化に沿った行動を評価し、奨励すること

組織文化の醸成:具体的な取り組み

組織文化の醸成には、様々な取り組みが考えられます。

  • 社内イベントの開催

  • 社内報の発行

  • 社員研修の実施

  • メンター制度の導入

  • フレックスタイム制やリモートワークの導入

これらの取り組みを通じて、従業員間のコミュニケーションを促進し、一体感を醸成することが重要です。

目標設定と組織文化:相乗効果

目標設定と組織文化は、互いに影響し合います。

明確な目標設定は、従業員にPurpose(目的意識)を与え、組織文化への共感を深める効果があります。

一方、健全な組織文化は、従業員が目標達成に向けて意欲的に取り組むことを促進します。

目標設定と組織文化の両方を整備することで、組織は持続的な成長を実現することができます。

まとめ:組織の成長に向けて

目標設定と組織文化は、組織の成長を支える二つの重要な要素です。

企業は、明確な目標設定と健全な組織文化の醸成を通じて、従業員の能力を最大限に引き出し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。この記事が、人事担当者やマネージャーの皆様にとって、目標設定と組織文化の重要性を再認識し、今後の組織運営に役立つ一助となれば幸いです。


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おんちゃば@FP1級 #行動経済学
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