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妄想 短編小説 ショートショート

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頭の中で妄想した少しだけぶっ飛んだ事を描いております。
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#小説

フォロワー1,000人到達記念作品 1,000文字ショートショート『Y字路に佇む家』後編

フォロワー1,000人到達記念作品 1,000文字ショートショート『Y字路に佇む家』後編

前編↓

中編↓

 倉庫の中は薄暗く天窓からの光がホコリをちらつかせていた。
広さはおおよそ3畳程だろうか?
生活空間では無い為、板張りにグラスウールの断熱材を敷き詰めているだけの簡素的な構造をしている。

私はサラッと辺りを見回した。

すると一番奥の隅に、この間取りの最大の特徴である(Y路地に佇んだ)60度の空間が目に入った。

乱れる呼吸を抑えながら整えつつも、体中から溢れる「知りたい」と

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フォロワー800人到達記念作品 800文字ショートショート『Y字路に佇む家』

フォロワー800人到達記念作品 800文字ショートショート『Y字路に佇む家』

坂道を登りきると見えてきた。私の散歩コースである。

その土地は、高台に佇む海が一望でき、とても素晴らしい立地だ。家主もきっとこの風光明媚な景色が気に入り、ここに家を建てたのだろう。

水色がかった板張りの外壁には、ツタがからまりレトロさを醸し出している。更に、二階建ての一階は吹き抜けのガレージとなっていて、なんともお洒落な家だ。

スケッチブックを広げて絵の具を使い、お洒落を描いたような家だ。

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フォロワー600人到達記念作品 600文字ショートショート『あの日見た灼熱の炎』

フォロワー600人到達記念作品 600文字ショートショート『あの日見た灼熱の炎』

お気に入りのマウンテンパーカーを着て出歩くには肌寒く、かと言ってダウンジャケットを羽織ったならば、たちまち汗ばんでしまう。

今年の冬はとても過ごしやすい気候である。しかし、あの人肌恋しくなる様な寒さも捨てがたいものだ。

そんな今年の暖冬とは対象的に、あの日はとても寒かった。

小学生の頃の出来事。幼ながらに、松過の日常に戻る一抹の寂しさを物憂げに感じていた。

友達の家から自転車を漕ぎ、帰路に

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短編小説ショートショート 『ミステリーショッパー』

短編小説ショートショート 『ミステリーショッパー』

はじめに

 私の名前はヒロミ。今年からホテルの宿泊部としてフロントに立ち、お客様との接客に毎日勤しんでいる。

このホテルの評価は、某インターネットサイトでは☆4.2だ。近隣のホテルに比べるとやや高い方だけど、支配人は今年中にさらなる評価のアップを目論んでいる。

ある日、朝礼での事だ

「おはようございます。9月に入り、今月は先月やった研修会での成果を発揮してもらいたく、ミステリーショッパーを

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★フォロワー400人到達記念作品★ 400文字ショートショート『午前0時の桃源郷』

★フォロワー400人到達記念作品★ 400文字ショートショート『午前0時の桃源郷』

世の中が反時計まわりに動き出し、陽気に踊りだした。

千鳥足でふらつく俺は石畳みの坂道を下ってゆく。

そして本日も扉を開くと、たちまち広がる別世界。

店内を見渡せばレトロなソファーや無駄のないカウンターにかけてのレイアウト。

一次会からのガヤガヤしていた高揚感を、一度ニュートラルにしてくてるこの店内の静けさ。

ソファーに座るなり、そっと出される小粋なもてなし。夏は冷奴、冬は熱々のおでん。こ

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妄想 短編小説 『面白いオジさんの選び方』

妄想 短編小説 『面白いオジさんの選び方』

(カツンッ、カツンッ、カツンッ・・・)

俺は天を仰いだ。

昇天させるべく挑んだこの闘いにて、今日もあっけなく昇天させられたからだ。

右手でハンドルを回したまま、無情にも空打ち音だけが鳴り響く。

給料が入ったその脚で、パチンコ店に向かい今月も見事に財布の中をスッカラカンにしてしまった。

俺は半月分の給料を、貰ってそのまま口座に入れず全て使い果たすという、見事なアリウープを決めパチンコ店を後

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妄想 短編小説 『この町でのルール』

妄想 短編小説 『この町でのルール』

この町は閉鎖的だ。

近所の住民にあいさつを交わすと、皆が俺の事をシカトする。

おまけに漁港で魚のお溢れを頂く三毛猫さえも、そっぽを向いてくれる。

俺はこの海が見渡せる高台の土地に一目惚れをした。

そして、足繁く下見に通う事半年。

雨の日や風の強い日、はたまた日中の日当たり、夕日の入り具合、全ての条件を念入りにチェックして、このマイホームを建てた。

まぁ、人生で3回は家を建てないと「本当

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★フォロワー300人到達記念作品★ 300文字ショートショート『虚構の船』

★フォロワー300人到達記念作品★ 300文字ショートショート『虚構の船』

それは突然の事だった。

地元民は勿論、造船所の従業員でさえ知らされていない。

造船所岸壁より約300メートル先、回遊する青物を狙う海鳥達もびくりと一斉に舞い上がった。

次の瞬間「海が割れる」と表現するには荒々しく、対岸に向かって巨大な一筋の滝の道が出来た。

そこから姿を現した船は、何ともメカメカしいSF映画などで見る宇宙船のようだった。

この船が、いつ何処で、何の為に、建造されたのかは謎

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妄想 短編小説 『勝利へのルーティーン』

妄想 短編小説 『勝利へのルーティーン』

俺は43歳で実家暮らしのフリーター

若い頃は、いわゆる「パチプロ」だった。

今日は7月7日

行きつけである近所のパチンコ店では、年に一度何かを期待させるゴロが良い大勝負の日である。

巷では七夕なのだが、そんなものは俺にはカンケーない。

今日もバイト代を握りしめて、朝イチ抽選の列に並ぶ。

抽選結果は258番

前列の集団は、スロットに流れるとして何とかパチンコには座れるか・・・

時刻は

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妄想 短編小説 『集中線』

妄想 短編小説 『集中線』

世の中には、幾つもの情報が溢れている。

その幾つもある情報を個人がアンテナを張り巡らせて、必要な情報のみを取り入れる。

パラボナアンテナの様なでっかい利き耳を立て、何でも情報を取り入れる人。

はたまた、か細いラジオアンテナを立て必要最小限の情報のみを取り入れる人。

勿論、アンテナを張張らずとも生活をしていれば自ずと情報は入ってくる。

・・・しかし、それは取るに足りない情報だったりもする。

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妄想 短編小説 『配膳ロボット』

妄想 短編小説 『配膳ロボット』

様々な職業が人手不足に悩まされている昨今、職種により理由は様々だが、飲食業も例外ではない。

コロナウイルスという未知のウイルスがもたらした未曾有の事態に外出自粛を余儀なくされた。

人々が外に出歩かなくなると勿論、レストランにはお客が入らない。お客が入らないと、仕事が減る。仕事が減ると従業員は、生活をしないとならない為、他業種へ転職する。

いちど他業種へ移った人手は、中々戻ってくる筈もなく飲食

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妄想 短編小説  『理休(りっきゅうさん)』

妄想 短編小説 『理休(りっきゅうさん)』

「りっきゅーさーん!」

「はぁーい」

BGM
♪好き好き好き好き スキッ好き〜。愛してる♪

あるところに、理屈っぽい少年がいました。彼の名前は理休さんといいます。

小学生の理休さんは、仲良しの男女5人グループで仲良く下校をしていました。

電信柱から次の電信柱までを、かけっこで走り出したと思えば、道路沿いに駆け抜ける自動車の影を皆でジャンプしたりと楽しそうです。

「ジャンケンぽん!」

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妄想 短編小説 『便利な世の中』

時は西暦2085年

個人がテレポートを自由自在に行えるようになって間もない。

観光業は、右肩上がりの好景気だがそれと同時に「乗り物に乗って移動する」という概念が無くなった。
飛行機、新幹線、バスやタクシーなどあらゆる乗り物が見かけなくなった。

メリットの分だけデメリットも発生する。

まぁ、世の中そんなもんだ。

サトシは平凡なサラリーマンで、今日は休日である。

実家暮らしの二階の部屋では

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妄想 短編小説 『降り続ける雨』

妄想 短編小説 『降り続ける雨』

 仕舞われないままのシオれた鯉のぼりが滑稽である。これじゃあ、まるで煮干しじゃないか。

傘をさしながら晴男(ハルオ)は近所の戸建ての雨に打たれる鯉のぼりを見上げた。

雨の日だろうと散歩は欠かせない。

次に河川敷を沿うよにいつもの散歩コースを歩いた。

「だんだん水位が上がってきたなぁ」

前方にまたがる橋の、危険水位の目印より少し下を濁った水が流れる。

 近所を一周した晴男は、傘を畳みバタ

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