★フォロワー400人到達記念作品★ 400文字ショートショート『午前0時の桃源郷』
世の中が反時計まわりに動き出し、陽気に踊りだした。
千鳥足でふらつく俺は石畳みの坂道を下ってゆく。
そして本日も扉を開くと、たちまち広がる別世界。
店内を見渡せばレトロなソファーや無駄のないカウンターにかけてのレイアウト。
一次会からのガヤガヤしていた高揚感を、一度ニュートラルにしてくてるこの店内の静けさ。
ソファーに座るなり、そっと出される小粋なもてなし。夏は冷奴、冬は熱々のおでん。これが堪らなく旨い。
いつものようにデンモクを渡されると、始めに歌う曲は勿論、中西保志の『最後の雨 』
歌い終わると、別のカウンター席からも拍手を頂く。赤の他人と妙な一体感が生まれるこの時間。これが堪らなく好きで、同時に俺の財布をスッカラカンにさせる原因でもある。
でもそんなのは関係ない。気が付けば、その人に喜んでもらおうと忖度した曲を選んでいる。
ここは五感で愉しむエンターテイメント。
何を隠そう、俺はスナックが大好きなのだ。