もし松田聖子の「SWEET MEMORIES」が古典和歌だったら
前回に引き続き聖子ちゃんシリーズです。
1983年にリリースされた楽曲、「SWEET MEMORIES」。
B面とはとても思えない名曲ですよね…!
2番で出てくる英語の歌詞と、とろけそうな歌声も、なんともロマンチックで印象的です。
今回は、この甘くノスタルジックな一曲を和歌にしてみました。
昔の恋人にばったり遭遇して
歌の出だしは、昔の恋人にばったり遭遇する場面から始まります。
すっかり忘れていたはずの記憶が、みるみる蘇ってくる…。
もしかしたら、かつて無理に忘れようとした記憶なのかもしれません。
そして二人は、何気ない会話を交わします。
本当に幸せな人なら、近況を聞かれて嫌な気はしませんよね。
あまり詳しく聞かないでほしいのは、胸を張って「幸せ」と言えない証拠。
どうやら最近は、二人が愛し合っていたころを超えるような情熱を燃やせていないようで…。
過去を美化してしまう情けなさ
私が思うに、この主人公は別れたことを後悔している訳ではないと思うのです。
偶然再会したとき、まず“痛み”を思い出すほど辛い思いをさせられた恋。
終わらせて良かったのだと、頭では理解しているはず。
それでもつい過去を美化しては、感傷に浸ってしまう…。
そんな自分の情けなさにも、本当は気が付いているのではないでしょうか。
失った夢だけが輝いて見えてしまう…。
自ら望んで手に入れた“今”という現実を、心から美しいと思える人こそ、本当に格好いい大人なのかもしれません。
サントリービールのCMにちなんで
「SWEET MEMORIES」といえば、あのペンギンちゃんが歌うサントリービールのCMを思い出す方も多いと思います。
そこで今回は、和歌に「お酒」を登場させてみました。
第四句に使った「飽き満つ」という動詞は、「満足する、飽きるほど満たされる」といったニュアンスの古語です。
遠い昔のことばかり思い出しては、甘い記憶に酔いしれる。
“今”に物足りなさを感じつつ、まるで心を満たそうとするかのように、空いたグラスにお酒を注ぐ…。
そんなシーンをイメージしながら、虚しいような情けないような、ちょっぴり複雑な心境を表してみたつもりです。
懐かしき 酒の匂ひに 酔ふ我に
飽き満ちたるかと 聞かずもあらなむ
※解説は冒頭のインスタ参照