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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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#長編小説

水深800メートルのシューベルト|第1話

       第一部        (1)  ドンッ!   ロバートに胸ぐらを掴まれ、居住…

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水深800メートルのシューベルト|第1199話

 僕は、素直な気持ちで、音を立てずに拍手をした。会話以外の音は禁止されているのではないの…

吉村うにうに
10時間前
3

水深800メートルのシューベルト|第1198話

その旋律は電子で作られた音とは思えない程自然に、僕の心に溶け込んできた。指の動きはたどた…

3

水深800メートルのシューベルト|第1197話

彼は照れたのか、しかめ面をしたが、怒っているようではなかった。僕は静かに頷いて体を起こし…

3

水深800メートルのシューベルト|第1196話

「最初の音は何だ?」 「え、最初の音って?」周囲から聞かれないように小声で尋ねた。 「シュ…

5

水深800メートルのシューベルト|第1195話

 思わず彼の顔を見たが、ふざけている様子はなかった。無言で白い鍵盤の一つを指してやった。…

6

水深800メートルのシューベルト|第1194話

 プアチャイルドの言葉に、チクッと刺されたような嫌な気分になったが、ピアノを貸せという申し出に、痛みは搔き消された。そして、益々困惑した。まさか、取り上げて壊すつもりじゃないだろうな? どこへ行くのにも――リクルートキャンプには持ち込めなかったが――手放さなかった心の相棒を。もし粗雑に扱ったりしたら、殺してやる!  躊躇いながらも、それを渡すことにしたのは、彼の乱暴な言葉遣いと、そのクリスマスにプレゼントを期待しているような爛爛とした目が矛盾していたからだ。ロバートは何を考

水深800メートルのシューベルト|第1193話

 僕は、かつてお婆ちゃんと暮らしていたアパートメントを想い出していた。大きなソファで眠る…

4

水深800メートルのシューベルト|第1192話

僕は、その表情に戸惑った。もう一度言われた通りに演奏したら、馬鹿にするつもりだろうか? …

5

水深800メートルのシューベルト|第1191話

「だが、もっと滑らかに弾きやがれ。タン・タ・タン! じゃなくてよ。ターン、ター、ターンー…

5

水深800メートルのシューベルト|第1190話

「アシェル、そこで何をしてやがる?」  その声には、怒りや嘲りの調子が含まれていないのが…

3

水深800メートルのシューベルト|第1189話

 あいつにこの曲を聞かせてやろう。この眠りに就く前の曲を。それで、僕に襲いかかってきたら…

5

水深800メートルのシューベルト|第1188話

ハッチの向こうでは、ドンドンと壁を叩き続ける音がする。遅めだが、一定の規則正しい音。あれ…

7

水深800メートルのシューベルト|第1187話

 決意を固め、拳銃を枕の下から引き抜いたとき、肘にコツンと固い感触があった。それはベッド脇に置いてあったおもちゃのピアノだった。プラスチックの鍵盤に貼ってあった音符を示すシールはとっくの昔に無くなり、その跡の粘着物の残骸だけが汚れとして残っていた。僕はその汚れた鍵盤の間にある黒い鍵盤をそっと撫でてみる。ああ、これを一度も弾かなかったなあ。小さい頃に何度も練習して上手くなった時の記憶が甦ってきた。しかし、それも無駄になる。潜水艦の存在を秘匿する意味は無くなり、逆に音を出して水上