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“白い”ねこのーと

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喧嘩と論理の深淵。その冒険記。
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#喧嘩

page.11 矛盾

喧嘩ないし論争を考察することと,論理を考えることは親和性が高い。そして,論理を考える上で,“矛盾”という概念は避けて通れない。

本項ではこの“矛盾”をつぎのように定義しよう。すなわち,任意の命題Aが矛盾しているとは,Aを真にする解釈が──その解釈の関数空間上に──存在し得ないようなAの論理構造を指す。

(本項では,解釈 I によって,命題 P に ⊤ が対応付けられることを I(P)=⊤

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page.9 条件遷移

トピックの遷移は〈条件遷移〉と〈非条件遷移〉に大別できる。

条件遷移は,任意の主張 P と,その条件関係にあるQ,R に対して次のような類別が出来る。

条件関係 Q→P の真偽についてトピックが遷ったものを〈前件関係遷移〉といい,このような前件関係が認められる Q の真偽にトピックが遷ったものを〈前件遷移〉という。

条件関係 P→R の真偽についてトピックが遷ったものを〈後件関係遷移〉

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page.8 論譜

喧嘩について,その論理的過程を記録したものを“論譜”と呼ぶ。

論理的過程というのは,トピックの真偽を争うにあたって,真理関数的な関係にある命題に対する論証であったり,その否定であったり,またはその真偽に疑義を投げかけるような文言のことをそう呼んでいる。とにかく,オリジナルトピックの真理値に関わるような言明一般が論理的過程である。(あるオリジナルトピック T に対して,分枝したトピック T’ が真

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page.6 暗黙の了解

Aの信号無視による衝突事故について,警察にでもなんでも良いのだが,Aが事故原因を問われたとしよう。

Aはこのとき,「スマホに夢中で前をよく見ていなかった」と応えることはあっても,「被衝突車がそのとき件の交差点に物理的に存在しやがったから」などとは応えないのが普通の感覚ではないだろうか。我々は,前者を相当な理由として,後者には,「反省してない自分勝手な奴だ」「面の皮が厚い奴だ」などといった感想を

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page.5 論拠と論述

対立する主張があれば喧嘩は成立するが,それだけでは,[論理体系の共同化運動]であるはずの喧嘩は鬱滞して深まらない。喧嘩や論争,議論を深めるためには,“論拠”と“論述”が必要となる。

命題Pに割り当てる真理値の相違によって生起する───すなわち,トピックは“Pか否か”である───次のような喧嘩を考える。

A「Pは真だ」
B「Pは偽だ」(¬Pだ)

このような喧嘩が,ここで止まってしまってはナン

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page.4 トピック

喧嘩には必ずトピックが1つだけ存在する。トピックにはなんらかの命題が対応しており,アバターは,この命題の真理値を相違することによって対立するのである。

たとえば,[死刑制度は廃止すべきか否か]というトピックは次のように解釈できる。すなわち,[死刑制度は廃止すべきである]という命題について,その真理値(普通は“真”か“偽”の二値を排反的に持つ)を争うのである。実は同じことだが,次のような表現も出

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page.3 概念関数

ある概念 nx∈N の“意味”は,その概念の存する概念集合 N から真理値集合 T への関数として定義できる。また,その関数空間は当該概念集合の論理的関係を網羅する。

一般に,概念集合 N={n1,n2,...,nm} について各要素の意味を,それぞれNから T={⊤,⊥} への関数として定義する。

たとえば概念 n1∈N の関数による理解は, N={n1,n2,...,nm} の要素を一つ

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page.1 共同化原理

本書は既に,喧嘩というものを以下のように定義した。

喧嘩:トピックに対し,ある論理体系間で,その真偽や成否を論理を以て争うもの。また,その態様。

このページでは,上掲の定義について,「なぜ,プレイヤーらはそのようにして命題の真偽を争うのか」を記すことで,一層深いところに言及する。

このことには,喧嘩の正体を次のように捉えることで答えることができる。すなわち,コミュニティが内在的に持つ画一化

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定義

本編に入る前に,いくつかの言葉を簡単に定義しておく。一般的な語義と一致するものもあれば,独自の捉え方をしている言葉もあるし,造語もある。本編を読み進める中で意味不明な箇所にあたったとき,少しでもこのページが役に立てば良い。定義は随時追加予定であるが,「演繹法」「帰納法」「論理」など,たとえ重要な言葉,概念であっても,一般的な捉え方と差異が少なく,ほかの教科書で調べればわかるようなものはここでは基本

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