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《1》韓国の独立系書店 「私的な書店」 訪問記

    雪が降り積もった日曜日、ついにパジュにある「私的な書店(사적인 서점)」を訪問した。

雪のため書店から歩いて3分の場所に車を停め、真っ白な雪をサクッ、サクッと踏みながら書店のある建物へ。写真はその道中。ソウル市内等からバスで行く場合は、이채쇼핑몰(Ichae Shopping Mall)停留所で降り、歩いて徒歩8分

    昨年11月にこの書店の代表であるチョン・ジヘさんのエッセイ『私的な書店 -たったひとりのための本屋-』が東京の書店&出版社「葉々社」から翻訳出版され、すぐ読んでいたのだが、実際にジヘさんの書店へ行ってみると、近くに住んでいるのに何でもっと早く来なかったんだろう…と後悔するほど私にとっては天国のよう空間だった。

書店はuupresという出版社(유유출판사)の建物1階にある。扉を開けるととても良い香りがした

    時間が経つのも忘れてたくさんの本を手に取り、気に入った本を何冊か購入した。今本を買うと、私が好きなイラストレーター&絵本作家のフィリさんがイラストを手掛けたブックカバーをプレゼントしてくださるとのことで、3冊分いただいた。

 このブックカバーは「私的な書店」オープン8周年を記念して作られたものらしい。オンラインで本を購入した方にもプレゼントしているそうだ。本には書店のハンコも押していただいた。

ブックカバーは3種類。以前、WEBマガジンのエッセイ「オンマと呼ばれる日々」の中で紹介した絵本『忘れていた勇気(잊었던 용기)』を描いた、フィリ作家がイラストを手掛けている
訪れた日は『私的な書店 -たったひとりのための本屋-』の著者、チョン・ジヘさんの妹であるジスさんが店番をされていた。お願いして本に書店のハンコを押していただいた

    書店を出たあとカフェの椅子に座り、どんな本を選んだのか友人と互いに見せ合って、あれこれとおしゃべりに花を咲かせた。私が韓国に来てから長い間失っていた大切な時間が再び戻ってきた気がして、とても幸せだった。私もいつか必ず韓国や日本で本に関する仕事をするし、これからもずっと本をたくさん読み、本を通して多くの人たちと出会う人生を生きるのだと、改めて思い直した1日だった。

パジュは韓国の出版社が集まった出版団地があり、ブックカフェもたくさん。多くの作家が暮らしている街でもある
本を購入し会員になると、ここでコーヒーも飲めるらしい

    それにしても不思議なもので、書店へ行くと、今の自分にぴったりの本があちらから手招きするかのように目の前に現れてくれる。それに加え、今日は私のことをよく知る韓国の友人が「これ今のあなたにぴったりなんじゃない?」、「これはあなたのために書かれた本だよ」などといくつか本を見つけてくれたので、読みたい本が次々と出てきて、両手がいっぱいになった。

「キム•エラン作家の本が好き」という韓国の友人と共に訪問。ジヘさん、ジスさんの“人生の1冊”が紹介された書棚も
いつかここで“本の処方箋”も受けてみたい

    何気なく手に取った本の中に、気になっていた作家さんのインタビューが載っていたり、友人に勧められて買ったエッセイ集の中に最近好きになった小説家の文章がおさめられていたり。「私的な書店」に行かなければ得られなかった発見、出会えなかった本たちがいっぱいあって、やっぱり書店っていいなあ。本屋さんで実際に手にとって本を買うというのは、私にとって最高の幸せだなあと実感したひとときでもあった。

「本当の“私”を探したいあなたへ」、「失敗が怖いあなたへ」などと書かれた本たち。手にとって気に入った1冊を購入してみた

    帰り際ジスさんが、今年2月にチョン・ジヘさんの最新エッセイが韓国で出版予定だと教えてくれた。出版されたらすぐ読んでみようと思う。そしてまた必ず「私的な書店」を再訪し、本と出会う喜びに浸ってみたい。


【京畿道坡州パジュ市】
사적인 서점(私的な書店)
경기도 파주시 돌곶이길 180-38 (서패동) 지층
070-4151-1001
12時~18時
水・木休み



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