あの世に行ったかもしれない友へ捧ぐ《1/4》
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■出会いと第一印象
2004年4月、僕とFは大学の同じ学部の同期生として出会った。
入学後はオリエンテーションをきっかけにグループが出来上がり、僕も自然に集まった5、6人のメンバーで授業を受け、学食で食べ、課題をやり、それなりのキャンパスライフを過ごすようになった。
一方Fは同じ高校出身の友達と一緒に居て、僕らの所にはたまに顔を出す程度だった。
彼は僕をどう思ったか分からないが、僕のFに対する第一印象は、愛想の悪い猫みたいな顔の男だった。
暗くて陰気で、あまりお近付きになりたくないな、というものだった。失礼極まりないが、これは誇張なしに率直に思ったことで、Fはお世辞にも明るく爽やかで友達が多いタイプではなかった。
しかしある日、Fと一緒に帰る機会があり、最初こそ男梅のような表情の彼だったが、趣味の話になった途端妙なテンションで陽気になり、それが偶然僕が好きで観ていたアニメが一緒だったことから意気投合し、その場で番号やメールを交換して、その日から何となく友達となった。
Fは大学近くに住んでいて自転車で通っており、授業で一緒になることはそれ程多くなかったが、まだ部活やサークルをやっていなかった僕とFは、駅までゆっくり歩きながら話して帰ることが増えた。地味で大人しいが、次第に話せば話せる奴という印象に変わっていった。
■F突然入院
しかし5月の中旬頃からFが突然が授業へ出なくなった。連絡先は知っていたが、高校が一緒だというFの友達から聞いたところによると、Fは急病を発症し、その日のうちに入院したらしく、それがかなり重症だということだった。
その後メールをしても音沙汰が無く、Fから連絡があったのは、前期試験もラストを迎えた7月末だった。
Fは難病再生不良性貧血を発病し、その治療であと半年は掛かると皆に打ち明けた。その場にいた誰もが驚いたが、正直自分らに出来ることはなく、たまに学校の様子や互いの情報交換のために電話だけするに留まっていた。
■F復帰と再会
緩解したFが戻って来たのは大学2年の4月だった。
約1年もの間、辛い闘病生活を経て復学したFは免疫保全ためにいつもマスクをし、空気の悪い場所を避けていたことから、大分周囲から浮いた存在となっていた。
何も事情を知らない連中が笑っているのを気にしながらも、Fは強く逞しく大学へ通い、真面目に授業を受けていた。
何と彼は休学の手続きを取っていなかったことから、1年時の授業の単位と合わせて2年分の単位を取るため、2年次の必須授業を受けた後で1年次の授業を再履修していたのだ。1限から7限まで週6で通い、4年で卒業したのだから大したものだと思う。
Fは地味で大人しそうに見えるが、中身はタフでかなりの努力家だった。
うちの大学は2年次からコースが分岐し、僕は1年の時に一緒だった友達と別れ、新しく出来た別の友達とFで大学生活を送ることになった。
放課後はバイトまでの間一緒に残り、1年の時の試験や課題の対策、担当教員の癖などを教えることがよくあり、そうして徐々に失った1年分の友情を埋めていった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。次回《2/4》へ続きます。