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#音楽 記事まとめ

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楽曲のレビューやおすすめのミュージシャン、音楽業界の考察など、音楽にまつわる記事をまとめていきます。
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2023年4月の記事一覧

Vol.17 Sacradança/Thiago Amud〈今のところnoteでまだ誰もレビューしていない名盤たち〉

ブラジル・リオ出身のSSW、チアーゴ・アムヂ(Thiago Amudi)。本作『Sacradança』が発表された2010年前後では、サンパウロでメタ・メタ(Metá Metá)のメンバーなどを中心に交流が行われたり、ミナス連邦大学からアントニオ・ロウレイロ(Antonio Loureiro)らによるムーブメント(日本ではミナス新世代として親しまれている)が広まっていったり、今のブラジルのSSWに通じる文脈が各地で生まれていた。ブラジル1の大都市であるリオでも、チアーゴが本作

YOASOBIさん「アイドル」の記録的人気をリツイートネットワークから可視化してみる

赤坂アカさん原作、横槍メンゴさん作画の漫画のアニメーション化作品『推しの子』のオープニング主題歌『アイドル』が、配信開始数日で再生/視聴回数を伸ばし、各種記録を更新しつつあるようです。 YOASOBIさんの人気が広がるメカニズムについては当研究室でも、2022年12月のジャカルタ公演に関するTiwtterデータを元にしたネットワーク分析を行ったことがあります。 このときは「ファンダム」という観点から非常に興味深い現象が観察されたのですが、今回はどうでしょうか? そこでY

特別公開:坂本龍一さんインタビュー「明日の見えない時代に、耳を澄ます」(2011年9月)

去る3月28日に音楽家の坂本龍一さんが亡くなられました。訃報を目にしたとたんに涙が溢れてきて、それからずっと坂本さんの音楽を聴き、多くの追悼文を読み、テレビ番組や動画を見続けています。 アルテスと坂本さんとのご縁は『三輪眞弘音楽藝術』に推薦のコメントをいただいたときに始まります。その刊行の翌年3月に東日本大震災が起き、同年秋に季刊誌『アルテス』を創刊するにあたって、特集のテーマに「3.11と音楽」を選びました。 応援ソングがあふれ、音楽界でも「絆」が強調される流れに違和感

フリーになったのが遅すぎた

 新卒から24年、同じ会社に勤めて、2015年の春・46歳の時に、退社してフリーの音楽ライターになったの、遅すぎた。もっと早くなればよかった。と、思う時がある。  その歳まで会社にいたからこそ、関われた仕事や、出会えた人や、経験できたことは、決して少なくないので、全面的に「遅すぎた」と思っているわけではない。あと、それより早く会社をやめられなかった自分の事情も、ないわけではないので、しょうがない、とも思っている。  しかし、シンプルに、音楽方面のライターが仕事を得るタイミング

ボーイズグループとR&B

カルチャー誌「クイック・ジャパン」vol.166のBE:FIRST特集に寄稿しました。曲のレビューを担当しています。 記事ではアメリカのヒップホップとの共通点やトレンドとの関係などについて書いています。当ブログ読者の方も楽しく読めると思いますので、皆さま是非。 BE:FIRSTの表現手段の一つにラップが含まれていることからも明らかなように、ボーイズグループ(ボーイバンド)は少なからずヒップホップの影響を受けている活動形態です。ヒップホップ以前まで遡ってもドゥーワップやTh

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③CHICANO SOULと私

やっとこさ前回の続きを書きました。 2007年に書籍「CHICANO SOUL」が出版されたことがきっかけとなり、それまで世にほとんど知られてこなかった「チカーノ・ソウル」が、何十年の時を経て再発見され、リバイバル・ムーブメントが起きている現在。それは今やアメリカのみならず世界中に広がりはじめています。その動きがどのように波及していったのかを時系列でみながら、現代版「チカーノ・ソウル」とでもいうべき新世代のミュージシャンたちを紹介したいと思います。 まずは、書籍にあるルー

原点から踏み出す、YOASOBIの新たな一歩 | YOASOBI TikTok LIVE at THEATER MILANO-Za

「2年前、何してた?」 「今日まで、どんなことがあった?」 この記事を読むあなたに、一度問い掛けてみたい。 ふとそんな気持ちになったのは、小説を音楽にするユニット・YOASOBIが、2年2ヶ月ぶりに彼らのライブの”出発点”に帰還する瞬間に立ち会ったからだ。 遡ること、2021年2月14日。 コロナ禍による厳戒態勢の中で実施されたYOASOBIの初配信ライブ「KEEP OUT THEATER」は、立ち入り禁止とされていた新宿歌舞伎町ミラノ座跡地の建設現場にて開催された。

Kara Jackson 鮮烈なデビュー作 / 味わい深い生音の奥に潜む、詩情豊かな"愛"を綴った1作

いつも「最高」とか「素晴らしい」とか使いすぎている本ブログですが、今回は本当に「最高」かつ、雷に打たれたような衝撃作を発表したアーティストを今回取り上げようかと思います。 おそらく音楽好きの皆さんもいろんな音楽を聴いていると、時にドカンと脳天に衝撃が走るような、今後30年後でも名作になり得るくらいのアーティストの作品に出会うことがありますよね。音楽性や歌声、そのアーティストが纏うカリスマ性、発信するメッセージ性など、それは多岐に渡るかと思います。今回の「雷に打たれた」というく

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Watsonという巨大な才能の登場について祝福しつつ覚書を残しておきたい (text by 韻踏み夫)

せっかく始めたSCRAPTだが、さっそく二回目の更新まで空いてしまった。吉田雅史は自分の仕事にかかりっきりで山場を迎えているようで(がんばれ!)、私も私で、すでに情報公開されているが『ユリイカ』のフィメールラップ特集の原稿などに追われていた。 さて、ここ数か月ずっと、Watsonについて書かなくてはならないと思っていた。最近のWatsonは、破竹の勢いとはまさにこのこと、というような感じで快進撃を続けている。毎日のように客演曲が出ていた数日があったし、しかも毎回強烈なインパ

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DIYでアーティストとして生きるために必要な思想を、実体験を基に話したい。

leiftとしてのエッセイ寄稿を、少しお休みさせてもらってる。アルバムをリリースして、ライブをして、ワンマンに向けて準備を進める日々。今日は少し別の話をさせてもらえたら嬉しい。 -- プロデューサー視点で、ここ1年の活動を総括久しぶりに、 note上で僕が蓄積してきた音楽制作やブランディングについての ノウハウを紹介しながら、より具体的な話を オンラインサロン本編で話せたら嬉しい。 最初に「僕の成功体験を共有する」というオンラインサロンではなく、現在進行形で僕が培い続け

オートチューンはいつ「ロボ声」ではなくなったのか?

VTuberの温泉マークがリリースしたシングル「ナイチュー!/幽霊る」のプレスリリース文章を担当しました。各種配信サイトで聴ける・ダウンロードできます。 VTuberの温泉マークは4月20日(木)、2曲入りシングル「ナイチュー!/幽霊る」をリリースした。 2021年から活動を始めた温泉マークは、声にオートチューンをかけながらゲームや楽曲制作の実況を行っているVTuber。偶発的に生まれるユーモラスなオートチューンの効果が話題を集め、先月3月25日に東京・WALL&WALL

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『BLUE GIANT』ファンに聴いていただきたい3人のミュージシャン

※無料で全文読める「投げ銭」スタイルのノートです。 レコード&昭和プロレス愛好家のゴベと申します。 大ヒット中の映画『BLUE GIANT』。 これまでジャズになじみの薄かった映画ファンからも絶賛されていますね。 noteにも『BLUE GIANT』を観た感想がたくさん投稿されています。 2020年に公開された『ヂラフマガジン』の記事も、多くの方々に見ていただけているようで「BLUE GIANT おすすめ ジャズ」みたいな感じで検索すると、上のほうに出てきます。ありがた

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2022年年間ベスト~フランス編~

2022年はどのような年だったであろうか。The Weekndの『Dawn FM』から始まり、Earl Sweatshirtの『SICK!』、宇多田ヒカルの『BAD モード』、FKA Twigsの『CAPRISONGS』、Samm Henshowの『Untidy Soul』など、1月だけでも、衝撃的なアルバムが数々リリースされ、胸が高鳴るスタートを迎えた。これでもかというほどの数の作品たちに出会えた年であった。 2022年の年間ベストをこの時期(2023年4月)に選出するに

ポーランドジャズのライナーさらにもう一枚執筆しました。参照音源一覧

東京エムプラスさんから国内リリースされたポーランドジャズのアルバムのライナー、さらにもう一枚執筆しました。 こちらの作品、アダム・ピエロンチクの「シマノフスキ X-Ray」↓です。すでに先月上旬に発売済みです。 オリジナルはこのところ意欲的なアルバムを連発しているポーランドの気鋭レーベルAnaklasisからのリリースで、同じくライナーを執筆させていただいたアダム・バウディフ「レジェンド」とクバ・ヴィエンツェク&ピオトル・オジェホフスキ「ドラキュラの主題」と同じ「REVI