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言語の本質 - ことばはどう生まれ、進化したか (今井 むつみ・秋田 喜美)

(注:本稿は、2024年に初投稿したものの再録です。)

 昨年(2023年)発刊された新書ですが、とても話題になった本ということで遅まきながら手に取ってみました。
 紹介文にも「認知科学者と言語学者が力を合わせ、言語の誕生と進化の謎を紐解き、ヒトの根源に迫る」とあって、とても気になりますね。

 期待どおり数々の興味深い指摘や理論の紹介がありましたが、それらの中から特に私の関心を惹いたところをいくつか書き留めておきましょう。

 まずは、著者たちの研究の切り口のひとつである「オノマトペ」の定義を押さえておきます。

(p6より引用) 現在、世界のオノマトペを大まかに捉える定義としては、オランダの言語学者マーク・ディングマンセによる以下の定義が広く受け入れられている。
 オノマトペ : 感覚イメージを写し取る、特徴的な形式を持ち、新たに作り出せる語

 「オノマトペ」は “音” と “意味” のつながりを感じさせます。
 その点を背景に、現在普通の言葉として使われているものの中に、「オノマトペ」由来ものが結構あるというのです。

(p133より引用) たとえば、「たたく」「ふく」「すう」という動詞。オノマトペの歴史研究の第一人者である山口仲美によれば、これらの動詞はそれぞれ「タッタッ」「フー」「スー」という擬音語をもとに作られた語で、末尾の「く」は古語では動詞化するための接辞だった。同様に、なんと「はたらく」も「ハタハタ」というオノマトペを語源に持つとされる。

 こういった「オノマトペ」の考察を踏まえ、著者たちの関心は、こどもの自律的な言語習得に着目した「言語学習のプロセス」の解明に向かいます。

(p204より引用) 言語習得とは、推論によって知識を増やしながら、同時に「学習の仕方」自体も学習し、洗練させていく、自律的に成長し続けるプロセスなのである。
 このような仕組みがあればこそ、子どもはほとんど知識を持たない状態から始めても、自分の持てるリソース(感覚・知覚能力と推論能力)を使って端緒となる知識を創り、そこから短期間で言語のような巨大な知識のシステムを身体の一部として自分のものにしていくことができるのだ。

 このあと、こういった解説が、次々に「子どもの言語習得のプロセス」「推論や思考バイアスの観点からのヒトと動物との違い」「言語の本質」といったテーマで展開されていくのですが、本書の後半部分になると、どうにも私の理解が全くついていけなくなりました。
 情けないかぎりですが、これが今の私の読解力や思考力の “劣化した姿” ということです。

 「本書はむちゃくちゃ面白いうえ、びっくりするほどわかりやすい」といった書評もあるようですが、私にとっては、とんでもなく難解な著作でした。

 しかし、こういったテーマを扱った書籍が、中央公論新社が主催する「新書大賞2024」で第1位を獲得し、街の書店で平積みされているというのは、なんとも素晴らしい光景ですね。



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