背筋が凍る
どうも西尾です。
昨日は本降りの雨が降る一日で、気温も少し低く肌寒さを感じました。
今日の大阪の天気は曇り・最高気温24℃の予報(Yahoo!天気より)で、昨日よりは肌寒さもマシかもしれません。
今はお日様が出ているので、このままお日様が出ているとすごく助かります。
背筋が凍る
何者かの気配を
近頃、運動不足を感じていたので運動を始めることに。
ただ、どこかのジムに通ったり、スポーツ系のサークルに入ったりするのではない。
家の近所を散歩するだけ。
本来なら色々なトレーニングもするべきではあるのかなとは思う。
腕立て伏せや腹筋、背筋、スクワットなど。
さらに、筋トレをした上で外を歩くのでは無く、ランニングを行うとより効果的になると思う。
だが、いきなり最初から全てを始めると自分の性格上、三日坊主になるに決まっている。
何かにつけて言い訳をする癖がある。
だから最初は家の近所を散歩するくらいから始めた。
散歩と言えども少なくとも30分は歩くように心がけている。
30分歩くだけで効果があるか分からないが、歩かないよりはマシだと思う。
歩くのはいつも夜9時頃だ。
夜9時頃なら涼しくもなっているし、通行人も少ない。
本当は朝早起きをして朝から歩いたり走って汗をかくのが良いのだろうけど、朝は出来ればギリギリまで寝ていたい。
夕方は返って人が多い。
自主的に走っている人や犬を散歩させる人、近所のご高齢の方が散歩している。
なので私はいつも夜の9時ごろに歩く。
今日もいつものように歩く。
季節は春だ。
暑くも無く、寒くも無い時期なので、外を歩くのにちょうどいい。
ただ、前日の天気の影響もあるのだろうか、前日は雨だったから湿気を含んだ生温い感じの風が吹く。
オレンジ色の街灯が桜の木々を照らす。
桜の花びらは散っており、若葉が生い茂る。
風に揺られてサワサワと音が鳴り響く。
その中を歩き続ける。
前から自転車がやって来た。
薄くぼんやり灯る自転車のライトはこちらへ近づくに連れて、より鮮明に見える。
ついに自転車は私とすれ違った。
すれ違い様に感じるどこか生温い空気感。
ライトは自転車の前輪で発電するタイプだろうか。
ライトの発電機が動く鈍い音が聞こえてきた。
自転車の運転手の顔は暗くて分からない。
ただ黒くて大きな影だけが目に映る。
チリンチリンと自転車のベルが鳴る。
とっさに後ろを振り返ると自転車の姿はもう無い。
ついさっきすれ違ったばかりであるのに、自転車はもうどこかへ行ってしまったのか。
自転車を漕ぐのが早い人だったのかもしれない。
私はまた歩き続けた。
もう直ぐで折り返しポイントだ。
背の高い大きな樹木がある。
クスノキである。
風に揺られて大きくワサワサと音をたてる。
私の目の前にあるクスノキは、私よりも遥かに大きく高くて、私を見下ろしている。
何だか背筋が凍る思いで、縮こまりそうになる。
クスノキは常緑の高木樹で、古の時代から神社などに植えられてきて御神木とされてきた。
今ではすっかり住宅街の中であるが、ここに大きなクスノキがあるということは、その昔この地に神社などがあったのかもしれない。
土地の再開発などでクスノキを切ろうとすると、不慮の事故が発生するなどの話は全国各地にみられる。
もしかしたらこのクスノキもそうなのかもしれない。
そんなことが私の脳裏を過った。
このクスノキまでやって来ると、また来た道を戻る。
草むらも風に揺られているのか音が聞こえる。
何かが通ったかのように、風が私の周りを吹き荒む。
夜の9時となると流石に通行人も少ない。
この日は途中にすれ違った自転車くらいだった。
今年は春がやって来て、直ぐに梅雨のシーズンに入るのだろうか。
生温い湿気を含んだ空気が漂う。
私は歩き続けた。
街灯の灯りが消えかかっているものもある。
何だか怖くなりスマホで足下を照らしてみる。
しかし、何ら変わらないいつもの地面であった。
気を取り直して歩き続ける。
24時間稼働している工場の後ろを通る。
工場からは機械の作動音が聞こえてくる。
24時間稼働するということは2交代制か、3交代制だろうか。
夜勤もすると夜勤手当てもついてその分給料が高くなるのだろうか、そんなことを考えながら歩いた。
程なく歩いていると、誰かに肩を触られた感じがした。
後ろを振り返る。
誰もいない。
気のせいだと思いまた歩き出す。
また同じく。
触られた感じがする。
周囲を見渡してみる。
私以外に人の気配は全く無い。
人の足音も聞こえない。
今聞こえるのは24時間稼働している工場から聞こえてくる機械の作動音と遠くで鳴り響くパトカーのサイレン音、私の周りを取り囲むように吹き荒む生温い風の音、そして、先ほどより明らかに鼓動が早くなってきた私の心臓の音。
私の心臓の鼓動音が一番大きな音を発しているのではないかというくらいに、その動きが伝わってくる。
さらに、急に背筋が凍りだしたかのように緊張感が走る。
私は怖くなった。
脳裏に再び過ぎる。
最初にすれ違った自転車、チリンチリンとベルの音に振り返ると既に姿は見えず、折り返し地点の大きなクスノキ、私を見下ろし包み込むかのように生温い風で大きくワサワサと揺れる。
我慢できずに走りだした。
最初から走るつもりは無かったからジーンズにスリッパという出立ちである。
無我夢中で走った。
とりあえず、明るい街灯に自動販売機のあるところまで走ってきた。
無我夢中で走ったから気が付かなかったが途中で水溜りにはまってしまった。
履いていた靴下が濡れていた。
呼吸も激しくなってしまった。
少し落ち着いて、冷静になってみると気持ち悪い感じを憶えた。
自動販売機の前にやってくる。
明るい自動販売機には色々な飲料が売っていた。
反射して見える自分の姿。
そこには私の姿しか見えない。
しかし目を凝らしてよく見てみる。
肩に何かがついている。
またしても背筋が凍った。
生きた心地がしない。
恐怖で身動きが取れない。
再び呼吸も早くなり、心臓の鼓動音は最高潮になった。
今にも心臓が張り裂けそうである。
恐怖に声も出てしまいそうである。
我慢が出来なかった。
何と叫んだか記憶にない。
意を決して肩の辺りを無我夢中で掴んだり払い落とした。
何かが手に当たった。
もう一度掴んでみる。
閉じていた目蓋を開いてみる。
それは木の枝だった。
唖然とした。
私は木の枝に振り回されていたのだ。
そう言えば今日の服装は上がパーカーでフードが付いている。
知らぬ間に枝がフードに引っかかっていたのだ。
なんだ。
そういうことか。
何を一人で怖がっていたのか。
靴下もびしょ濡れになった。
一気に疲れがやってきた。
自動販売機で缶ジュースを買って飲む。
何だろうか。
怖い思いをしたのに、無我夢中で走ったからだろうか。
缶ジュースが身に染みて美味しかった。
飲み終えた空き缶を捨てて私は家へと帰った。
日頃から運動していないのがいけない。
これからは毎日運動しようと思った。
帰って風呂に入ろう。
途中の曲がり角、前から自転車がやってくる。
すれ違い様にチリンチリンとベルの音がなる。
私は思い出したかのように後ろを振り返る。
既に自転車の姿は無かった。
以上になります。
お読みいただきありがとうございました。