Homo limitus

消費者・投資家行動研究者

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最近の記事

吉野家の常務に思うこと

1.何が起こったのか 吉野家の常務取締役だった伊藤正明氏が、4月16日(土)に早稲田大学で行われた社会人向け講座「デジタル時代のマーケティング」に登壇。「不適切な表現で不愉快な思いをする方がいたら申し訳ない」と前置きしつつ、「田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を無垢、生娘なうちに牛丼中毒にする」といった趣旨の発言。受講者による証言がSNS上で拡散され、「女性差別だ」と批判が殺到。 <吉野家>4月18日付で、取締役及び執行役員を解任 <早稲田大学>「講座担当から直ち

    • A causal link between prediction errors, dopamine neurons and learning

      報酬系ドーパミン・ニューロンの活動と学習が関連していることはよく分かっている。ただ、因果関係についてはほとんど解明されていない。 先行研究では薬理学的手法が用いられてきた。腹側被蓋領域(ventral tegmental area, VTA)の不活性化やドーパミン・レセプターの拮抗薬(antagonist)や作用薬(agonist)などである。それらの研究は、薬理的作用がニューロンに代わり長期的に作用してしまうせいで、特定のドーパミン・ニューロンが行動に与える影響を特定する

      • SNS発展の背景は承認欲求ではない

        (岡田先生の話の備忘録) 原始時代、子供のうちに半分程度死亡している。死因のほとんどは、殺害によるもの。 狩猟民族の頭蓋骨を調べたところ、成人の10-15%に左側に窪みがあった。つまり、右利きの人間によって石で殴られて殺害されたということ。狩猟民族内では、ハイスペックな人間しか生き残れないため、のろまな者・いるだけで皆がイライラするような者は人口の10-15%殺され、間引きをされながら人類は進化していった。 農耕時代、平和になるかと思いきや、殺される人間の割合は20%に

        • 第6章

          ニューロンの情報伝達には 軸索シグナル伝達(axonal signaling)と樹状突起結合(dendritic integration)がある。 Invasive neurophysiology 単一ユニット記録(Single Unit Recording) Pro Direct information more than any techniques Temporal resolution is high Cons Limits its use to non-huma

          第5章

          P63 脳はgliaとneuronという2つの細胞から構成されている。 ①神経が機能するために、生物物理学的に必要な環境を作る ②構造的サポート ③血液から脳に入ってくる物質のフィルター ④絶縁体となって、神経細胞の情報伝達速度を上げる

          成功の妄想

          Delusion of Success Dan Lovallo and Daniel Kahneman, 2003 ビジネスに大失敗はつきもの。ほとんどの設備投資計画は工期が遅れ予算を超過、予想通りに進まない。北米における製造工場の7割以上が創業から10年以内に閉鎖となる。企業買収の3/4は投資に見合うリターンを回収できない。新市場に進出した企業の大多数は、数年のうちに撤退する。 伝統的な経済学の理論は、失敗率の高さをこう説明する。 不確実な環境でビジネスを行う企業が合理

          成功の妄想

          オマキザルの授かり効果

          Endowment effect in capuchin monkeys 授かり効果を含む様々な行動バイアスは経済学者によって、合理的意思決定理論に反することと考えられている。合理的意思決定者は自分が所有するモノを同価値で交換することをためらわないはずである。しかし、現実世界においては、所有していることが意思決定者の選好に大きな影響を与えている。さらに、授かり効果の理論は、十分な実験を経ることなく体系化されてきた。ハルバーグは、子供においても所有するモノの価値を高く評価し、所

          オマキザルの授かり効果

          The Neural Basis of Loss Aversion in Decision-Making Under Risk

          勝つか負けるか50/50のギャンブルを、人はやりたがらない。少なくとも利得が損失の2倍はないと、やらない。つまり、50%の確率で100ドル得るか、50%の確率で50ドルを失うか。これは、プロスペクト理論の価値関数の通り。さらに、損失回避の傾向は、子供・大人そしてサルも含め、霊長類の脳の共通した基礎的特徴といえる。 これまでの神経画像解析による研究は、即座の金銭的利得・損失に集中してきた。それは期待される効用もあり、経験を通じた効用もあった。しかし、意思決定をする時にどのシス

          The Neural Basis of Loss Aversion in Decision-Making Under Risk

          サンクトペテルブルクの逆説

          サンクトペテルブルクの逆説(Sankt Petersburg Paradox)とは、不確実性下の意思決定における逆説の1つである。ドイツ語読みだと、サンクトペテルブルク。英語読みだと、セントピーターズバーグ。 期待価値仮説によれば、結果とその発生確率をそれぞれ足し合わせたものを期待価値とする。ここで、結果と発生確率は客観的で正確という仮定が置かれていることが重要。 客観的で正確な結果と発生確率はすべての人にとって同じなので、期待価値もすべての人にとって同価値となる。人は、期

          サンクトペテルブルクの逆説

          エルスバーグの逆説

          エルスバーグの逆説(Ellsberg Paradox)とは、不確実性下の意思決定における逆説であり、期待効用理論における独立性の公理に対する反例の1つ。 原典を分かりやすく簡素化した例。 箱Aには赤いボール50個、黒いボール50個 箱Bには赤いボールと黒いボールが合計100個で内訳は分からない 問1 赤を引いたら1万円もらえます。黒を引いたら何ももらえません。 AとB、どちらの箱から引きますか? 問2 黒を引いたら1万円もらえます。赤を引いても何ももらえません。 AとBど

          エルスバーグの逆説

          第9章リスクと不確実性を伴う選択の評価

          はじめに この章では、リスクと不確実性を伴う意思決定の神経経済学の概要をお伝えします。 Risk-Return Decomposition of Risky Options リスクを伴う選択の評価に対する2つめのアプローチはファイナンス理論から派生しています。リスクを伴う選択に対する支払意思額(willingness to pay)は平均リターンV(X)と人々が最小化しようとするリスクのトレードオフによって決まるとしています。 (参考)ファイナンス理論では正確には以下

          第9章リスクと不確実性を伴う選択の評価