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私立夜宵★図書館【2024/8】

夜宵★の読書は図書館の本と決まってる。

貧乏だったから、本が読みたかったら図書館で借りなさい、って母に言われて育って、図書館は行きつけだった。

だけどこのところ読書量が激減。

今年は意識的に読もうと決意した。

図書館で借りて、夜宵★の心の図書館に入った本をいざご紹介!!



✦『あなたの涙は蜜の味』宮部みゆき、辻村深月、宇佐美まこと、篠田節子、王谷晶、降田天、乃南アサ

衝撃の結末に心がざわつき、いやな後味が残るミステリーが「イヤミス」。
本書は、好評を博した第一弾『あなたの不幸は蜜の味』と同じく、女性作家による鳥肌必至の「イヤミス」傑作短篇を集めたアンソロジー。

Amazon HPより

最初の「パッとしない子」(辻村深月)が、私の「嫌度数」マックスだった。

悪意のない無自覚な言動が、人を深く傷つけることがある。

悪気がないからよけいタチが悪い。

たぶん私もある。

何もしてないのに嫌われてるのって、そういうことからなんだろう。

無邪気な無神経さや、何気ない言葉の悪い届き方などの描写が巧み。

感情移入と同族嫌悪で、いたたまれなくなった。


✦『古事記─日本のはじまり─』斉藤洋


明快な文体と構成。

物語は注釈が入りながら進行する。

矛盾点を忖度なく指摘するところが斬新だ。

古事記に茶々を入れるなんて、斉藤洋さんだからできることではないか。

指摘が的確だから、モヤモヤがない。

わからないところはわからないと言うところも斬新で、好ましい。


✦『バー極楽』遠藤彩見さえみ

6年間の放蕩の果てに実家の寺に出戻った照月は、あらゆる欲を捨て「絶食系男子」に生まれ変わることを決意する。しかし修行を終えた彼を出迎えたのは、父ではなく欲望まみれの謎の美人姉妹だった! 派手でセクシーな “女豹”ことフミヨと、清楚だけど肉感的な“菩薩”のテイ子。自称姉妹の2人が境内に開いたバーには、連日煩悩まみれの檀信徒や町の人々がトラブルを持ち込んでくる。寺での生活を守るため、照月は嫌々トラブル処理に奔走するが……!?

Amazon HPより

タイトルのインパクトに導かれて読み始めた。

表紙もシンプルで洒落ててかっこいい。

各章は、食と仏教の言葉がキーワードになっている、おもしろい趣向。


✦『僕の女を探しているんだ』井上荒野

大丈夫、会いたいと強く願えば、きっと会える――。
大ヒットドラマ「愛の不時着」に心奪われた著者による熱いオマージュの込められたラブストーリー集。黒いコートを着た背の高い彼は、大事な人を探しにここへ来ていた。海辺で、ピアノのそばで、病院で、列車の中で、湖のほとりで、彼は私たちをそっと守り、救ってくれた――。私たちの胸を熱くする珠玉の短篇9作収録。

Amazonより

リーさんって誰よ、と思いながら読んでいたが、Amazonのこの紹介文を読んで合点がいった。

ドラマ「愛の不時着」は観ていないのだけど、確かに韓流ドラマの主人公みたいな人だなとは思っていた。

美しくてスマートでやさしくて純粋な人。

こんな人いる?(←抗議ではなく、羨望)

最後の章で、なじられればなじられるほどにやさしい顔になっていくリーさんに、胸がじんわりした。


✦『小説家の一日』井上荒野

短篇の名手が、深遠なカタルシスを紡ぎ出す。すべて「書くこと」をテーマに、さまざまな日常の忘れられない瞬間を描いた珠玉の十篇!

Amazonより

日常を切り取った情景ながら、短編それぞれが一冊の本になりそうなほど濃密な作品世界だ。

例えば「つまらない湖」。

いたたまれないような、後味の悪い、二人のやりとりの描写が印象的だ。

うまくいっていたはずが急に梯子を外されたような、怒りや恥辱。

足元を見られて腹立たしいのにそれを覆せず、平静を装うことで保つ矜持。

こういう心理ある、けど見てられない。

いい意味で嫌な読後感があった。


✦『失くした「言葉」を取り戻すまで 脳梗塞で左脳の1/4が壊れた私』清水ちなみ

2009年11月、頭に激痛が走り「くも膜下出血なので今すぐ開頭手術を」と診断されたのに、手術を拒否して病院から帰宅。1週間後に手術を決意し受けたところ、くも膜下出血とは別の箇所で脳梗塞を発症、左脳の1/4が壊死して、目覚めたときには、利き手だった右手に麻痺がでて「お母さん」「わかんない」の2語しか話せなくなっていた……。

Amazonより

失語症の当事者が語る実体験。

他者は到底知ることのできない、主観の部分が見られるのは貴重だった。

著者の失語症は、夫君曰く、

「コンピュータにたとえると、CPU(中央演算処理装置)は動いているけど、ハードディスクの辞書機能が壊れていてモニターに言葉を表示できず、デフォルトの「お母さん」「わかんない」だけを繰り返しているような状態」

話をある程度理解し、伝えたいことが頭にあるのに、それが脈絡のない言葉として出てしまうという。

著者のリハビリは、失くした「言葉」を取り戻す、というよりは、欠落した言語体系を獲得し直す訓練、であるように思われた。

(失語症は千差万別なため、さまざまなリハビリのアプローチがある。)

この本から学んだことをいくつか。

①優秀なリハの先生は朗らかでニコニコしている
  →リハの意欲が上がる
②これが現実だしなるようになるでしょう、と前向きに捉える柔軟さが回復を支える
③家族との関わり・書く・散歩・料理・買い物、などが言葉や体の機能の回復を促進させる
④画像と回復の度合いは解離する
  =残存する脳が失った機能を担う(それを促すのがリハ)
⑤広範囲に左脳梗塞を起こしても過去の記憶は保たれる(症例による?)

④⑤に関しては、脳梗塞患者やその家族にとって、救いの光になるだろう。



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