物書猫家

ライター。横浜在住。乳がんサバイバー。 http://nekohouse.air-nifty.com/

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マガジン

  • 日日是好日であるように

    写真日記のような

  • 小説

    小説を書きました

  • 旅をするわたし

    フリーランスで仕事をしながら、重度障害者の息子を介護する、50代女性のひとり旅の記録です。

  • 横浜百景

    港横浜の写真とストーリー

最近の記事

ピアノ

毎日ピアノを弾く。 ピアノといっても、電子ピアノで、 古いクラビノーバだ。 夫はこれをピアノと呼ばない。 エレクトーン、と呼んでいる。 グランドピアノがある家で育った夫にとって、 電子ピアノは、ピアノではないのだろう。 音は出さない。 ずっとヘッドフォンで聞いている。 音は怖くて出せない。 弾き始めた頃に音を出してみたら、夫が、 そんな曲、姉が子どもの頃に弾いてた、とか、 ちょっとでも間違えるとバカにしたから。 義姉は高校から音大で、 ピアノなんてなんでもスラス

    • インソムニア

       眠れない夜は、散歩に出る。  日付が変わる少し前から、一時間。しっかり歩いて体が疲れれば、少しは眠れる。  散歩の行き先は、海に面した公園だ。  シャッターが閉まって静まりかえった商店街を、地面のタイルを数えながら歩く。人に会うことはほとんどない。  店が途切れ、むかし海岸線だったという通りに出る。その道を渡ったところが公園だ。芝生の広場と、噴水と、バラの植えられた花壇と、海に面して並んだベンチがある。  海といっても、波の寄せる海岸ではない。ベンチに座って眺めら

      • 朱に染む

         からんからんとアパートの古い階段をのぼって、薄っぺらい玄関ドアを開けると、薄汚れた二十八センチのスニーカーがハの字に転がっていた。靴底に、泥がついている。  靴を三足も置いたら、もうすき間のないような玄関だというのに、私はどこに靴を脱げばいいのだろう。  ハの字のスニーカーをそろえて置き直してから、すみっこに自分の靴をぬぐ。  今日も足がむくんでいる。 「おかえり。今日は早かったね」  西日の射した奥の部屋から、優司が眠たげな声で言った。 「ただいま。本社に書類

        • 旅をするわたし 長崎巡礼 2023.10.2〜4

          さて次はどこへ行こうかなと、ANAのタイムセールを見ていたら、たまたま長崎の便が残っていた。久しぶりに行ってみようと思ったのが、今回の始まりだった。 旅のテーマを何にしようかと考えて、外海へ行ってみたかったのを思い出す。 調べ始めたら、たまたまこの本がヒットした。遠藤周作と歩く「長崎巡礼」という、2006年の本。 遠藤周作は、こんな言葉を色紙に書いていたそうだ。 「踏絵を踏む 足も痛い」 踏んだ人はダメで、踏まずに殉教した人は英雄で、それが当たり前だと思っていた。踏

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        • 日日是好日であるように
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          16本

        記事

          電車の中で

          昨日は東京国際フォーラムへ。 久しぶりに電車で都内へ行った。 電車の中って、 みんなスマホ見てるけど、 乗り物に酔うので、 極力見ないようにする。 とりあえず昨日は、人間を見ていた。 行きの京浜東北線は、桜木町で座れた。 長崎で壊れた足を酷使してきたので、 ラッキー、と思って座っていたら、 川崎で、川崎大師帰りらしい老夫婦が、 目の前に立った。 あー、譲らないとだな。 きっと期待してるだろうな。 でも、どっちが座るかでもめたら面倒だな。 なんて思っていたら、

          電車の中で

          「さみしい夜にはペンを持て」がとてもいい

          発売前に重版かかってた、 話題の本。 著者は、 「嫌われる勇気」の古賀史健さん。 自分とは何かを探すために、 自分を客観的に見るための訓練として、 「日記を書くこと」を提案する。 日記、っていっても、 今日はどこどこへ行きましたー、 何ちゃんと遊びましたー、 楽しかったです、 ではないよ、って、 具体的な書き方をレクチャーしてくれます。 ターゲットは、 中学生だそうです。 小学校高学年くらいでも、いけそう。 タイムマシンがあったら、 小学校6年生の自分に届け

          「さみしい夜にはペンを持て」がとてもいい

          アルマジロ

           新幹線に、初めてひとりで乗った。窓際の座席を予約しておいたら、すでに通路側の席には人が座っていた。スーツ姿の男性だ。出張だろうか。  すみません、すみません、あやまりながら窓際の席に滑り込む。  別に悪いことをしているわけじゃないのに、なぜ人は、すぐに謝るのだろう。  いつもなら、出かけるときは勇介がいっしょだ。旅行先を決めるのも、新幹線や飛行機やホテルの予約をするのも、勇介だ。私は勇介のあとをついていくだけ。それで充分満足だった。  でも今日は違う。  京都駅。新幹線は減

          アルマジロ

          泡沫人

           リカコが死んだ。  大学のときの共通の知り合いから、連絡があった。 「エリ、リカコと仲良かったよね」  たしかにリカコとは、仲がよかった。はずだ。  でもリカコとは、もう随分会っていなかった。  連絡をくれた知り合いも、大学を卒業したあとは会っていないと言う。  リカコの携帯に登録されていた電話番号をひとりひとり、警察が手がかりを探して連絡をしているらしい。大学の頃に交換した携帯電話番号が、そのまま残っていたのだろう。  知り合いは、リカコとの関係や、事情を聞かれたそうだ。

          評価されること

          一見、遅すぎるような、50代や60代になってからでも、なんらかのカタチを残せる人は、それまでの人生で何かを積み上げてきた人だ。 カタチになるまで時間がかかったとしても、カタチになればきっと報われる。 私はただ、日々を消化してきただけだった。日々は積み重なっていなかった。 積み重ね方がわからなかったんだ。勉強の仕方がわからなかったのと同じこと。 分厚いノートに書き記さなきゃいけなかったのに、丸めて捨てるメモ用紙に書いてきたのかも。すべてその場しのぎで。 30年くらい前の

          評価されること

          旅をするわたし 広島・京都 2022.8.15〜17

          8月になると、戦争のことを考える。8月6日に広島、8月9日に長崎、そして8月15日に終戦の日だからだ。そして毎年のように、広島へは行ったことがないなぁ、と思う。今年は例年以上に強く思った。戦争をしている国があるからかもしれない。 8月16日は、京都で五山送り火がある。祇園祭りに続いて、一度は見てみたいものだったので、ホテルを予約してあった。 それならば、一日早く出発して、広島へ行ってみようと思い立った。思ったら、すぐにやってしまわないと。いつか、いつか、と思っているいつか

          旅をするわたし 広島・京都 2022.8.15〜17

          旅をするわたし 京都・祇園祭 2022.7.16~19

          ザ・ゲートホテル京都高瀬川 泊 例の感染者数が急増中。なんでこのタイミングなのだと、恨みたくなる。福祉施設に通う息子が、ウイルスを家に持ってくる確率が高く、ギリギリまで行ける気がしていなかった。でも、この日程でなければ意味がない。京都は祇園祭なのだ。 一生に一度は見たいと思っていた日本一のお祭りに、どっぷり浸かる3泊4日。 京都は春の桜以来だけれど、ひとり旅は年末以来。また京都かと思われそうだが、飽きるまで京都へ行こうと決めている。 祇園祭の期間は、一ヶ月と長いものだ

          旅をするわたし 京都・祇園祭 2022.7.16~19

          ラディッシュ

          テラスに置いたプランターで、ラティッシュを育てていた。 ガーデニングイベントでもらったタネをまいた。 赤い小さなカブのような野菜ができるはずだった。 双葉から本葉が出て、その葉はほとんど虫に食べられた。 モンシロチョウが、繰り返し卵を産みに来た。 実の部分は、丸くならなかった。 小指の先よりも細いくらいのふくらみができたくらいで。 このまま見ているのも憂鬱なので、 すべて抜いて、ゴミに出した。 私が育てていたものは、ラディッシュではなく、 野菜でもなく、植物でもなく

          ラディッシュ

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          祇園祭 前祭 山鉾巡行

          祇園祭 前祭 山鉾巡行

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          旅をするわたし 神保町あたり 2022.6.13

          都内へ出かけることが少なくなった。電車で30分も揺られれば都心に着くのに、興味のある展覧会やイベントがあっても、二の足をふむ。不安に思っていたら、いつまでたっても出かけられないのはわかっている。誰かと会うのでなければ、リスクも少ないはず。そう言い聞かせて、神保町まで行ってみることにした。 これも、ちいさなひとり旅だ。 フォローしてる映画情報サイトのTwitterがリツイートしていた映画関係者のツイートをたまたま見て、ちょっと興味を持った映画があった。ドイツの映画監督、ベル

          旅をするわたし 神保町あたり 2022.6.13

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          鎌倉・長谷寺 紫陽花

          鎌倉・長谷寺 紫陽花

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          夕暮れ散歩

          夕食の支度をしないといけないような時間に、散歩に出た。 こんな時間に出かけるなんて、主婦の、母親の、妻のすることじゃない、って目くじらを立てる人もいるだろう。そんなカビの生えた考えは、クッキーの空き缶に入れて、押し入れの奥にしまっておくといい。 散歩にでも行って来れば? そう言ったのは夫だ。餃子、作らないといけないから。そんな理由を口にすると、作っておくよ、と夫は言う。材料は、冷蔵庫にそろってる。 行き先は、海の見えるあたりに設定する。とりあえず歩き出す。横浜の海沿いに

          夕暮れ散歩