マガジンのカバー画像

なぞりのつぼ −140字の小説集−

300
読めば読むほど、どんどんツボにハマってく!? ナゾリの息抜き的140字小説を多数収録! ※全編フィクションです。 ※無断利用および転載は原則禁止です。
運営しているクリエイター

2023年5月の記事一覧

140字小説【膝枕=起爆スイッチ】

140字小説【膝枕=起爆スイッチ】

 子どもの頃、父に甘えたくて膝枕してもらったら、父が屁をこいた。

 学生の頃、初めてできた彼氏とのお家デートで彼氏に膝枕してもらったら、彼氏が屁をこいた。

 やがて大人になり結婚した今、夫に膝枕してもらったら、やはり夫も屁をこいた。

 いよいよ私の頭がおかしいんじゃないかと思い始めた。

140字小説【かたやぶりな技】

140字小説【かたやぶりな技】

「ウソだろ!? 今のが俺の放てる最後にして最大の奥義だったのに……!!」
「残念だったなぁ! その程度で我は死なんっ!!」

 と言いつつ、正直今のは危なかった。とっさに腕をクロスさせ、何とか上半身を守れはしたが……
 しかしなんて技だ!? 我が自慢の戦闘服の肩だけ破られるとはっ……!!

140字小説【お前にはまだ早い】

140字小説【お前にはまだ早い】

「お願いします、私に独立させてください!」
「お前にはまだ早い!」
「色々学ばせていただいたことは感謝しています。だからこそ自分の腕を試してみたいんです!」
「お前にはまだ早い!」
「すみません、ちょっとトイレ行ってきてもいいですか?」
「お前にはまだ早い!」
「漏れてからでは遅いんです!」

140字小説【こさまの日】

140字小説【こさまの日】

「《こどもの日》って嫌いだなぁ」
「どうして?」
「だってボクたち子供はさぁ、普段から『子供子供』って“共”呼ばわりされてるんだよ? だから年に一回しかない今日くらい、《こどもの日》じゃなくて《こ“さま”の日》って呼んでほしいよね」
「わかった、じゃあ今日はお子様ランチ食べに行こうね」

140字小説【解答は慎重に】

140字小説【解答は慎重に】

「リンゴ好き? よかったら食べる?」
「その問いに対する答え方は三つある。A、好き。B、嫌い」
「じゃあCは?」
「『好きか』と聞かれれば好きとは言い切れないし、かといって嫌いでもないし、どちらかと言えば好きではあるのだけど、でもそれはメーカーや調理法によって異な――」
「めんどくせっ」

140字小説【村八分】

140字小説【村八分】

「頼む! お金はすぐ返すから!」
「いい加減にしろ! お前なんか村八分だと言っただろう! さっさと隣の村にでも行けばいい!!」
「そんなぁ……母ちゃんからも何とか言ってくれよぉ」
「大丈夫よ。隣の村と言っても、バスで八分だから」
「なんだ、村八分ってそういう……」
「お父さんも寂しいのよ」

140字小説【水いらず】

140字小説【水いらず】

「そろそろ私たちも老後の生活を見据えないとね」
「そうだなぁ。でも理想を言えば、田舎でゆったり暮らすのもアリだなぁ。古民家を買って、そこで夫婦水いらず――」
「何言ってんの? 『水いらず』でいいわけないじゃない! 真っ先に確保すべきライフラインでしょうが!!」
「はい、そうでした……」

140字小説【つまりそういう関係】

140字小説【つまりそういう関係】

「もう終わりね、私たち。別れましょう」
「ちょっと待ってくれよ! 俺の何がいけなかったって言うんだ!?」
「アナタとは《うえお》な関係だったのよ!」
「何だよそれ、どういう意味だ!?」
「自分で考えたら?」
「……まさか《愛がない》って言いたいのか?」
「やっぱり《相容れない》わね、私たち」

140字小説【遮光性】

140字小説【遮光性】

 今日は初めて彼氏(吸血鬼)が私の家に来る日。

「お待たせ。はい、どうぞ〜」
「お邪魔しま〜す……ぐぁぁあああっ!?」
「えっ、ウソ!? 十字架なんて置いてないし、ニンニク臭のする料理なんか作ってないし、それにカーテンだってちゃんと閉めたのに!?」
「遮光性がないとダメなんだぁぁぁ!!」

140字小説【ぜいぜい】

140字小説【ぜいぜい】

 ボクは走った。ぜいぜいと息を切らしながら。
 途中つまずいて転んでも、それでもボクは諦めずに走り続けた。
 そしたら最後には息ではなく、ちゃんとゴールテープを切ることができた。

「はい、ありがとう。実に良い作文だね。先生は君に《税についての作文》を宿題として出したつもりなんだけどね」

140字小説【ホストクラブ・原点 −Genten−】

140字小説【ホストクラブ・原点 −Genten−】

「へぇ〜、新人クンなんだぁ〜。じゃあ早速私に合うお酒を造ってもらおっかな〜」
「かしこまりました。では、まず醸造から」
「じ、醸造!?」
「ウチの店はじっくり時間をかけ、ゆっくりお酒を楽しもう、というコンセプトなんです。なので飲めるまで一年間のご指名とボトルキープを……」
「チェンジで」

140字小説【目が合ったが最後】

140字小説【目が合ったが最後】

「ねぇ聞いて!? こないだ推しのライブ見に行ったら、5回も目が合ったの!!」
「あ〜はいはい、よかったじゃん」
「ヤバくない!? ただでさえ1回なら気のせい、2回までならサービスなのに、3・4がなくて5回はもう絶対私のこと好きでしょ!?」
「目を合わせにいって何で盲目的になってんのよ」

140字小説【お取り込み中】

140字小説【お取り込み中】

「あら、雨? ごめ〜ん、今手が離せないから、代わりに洗濯物取り込んでおいてくれる?」
「もう取り込んだよ」
「えっ、もう!? ありがとう……で、どこにあるの?」
「この中」

 そう言って手渡されたのは、一つのUSBメモリ……?

「全てデータ化してそこに取り込んであるから」
「消失してない?」

140字小説【忘れなくさっ】

140字小説【忘れなくさっ】

 最近、夫の物忘れが増えてきた。
 突然何かを思い出したように立ち上がったかと思えば、どこへ向かうでもなく立ち止まり、あさっての方向を向いたままオナラして……

「あれ? 何しようとしてたんだっけ?」
「知らないわよ。もう忘れな――臭っ」

 ……いつかは私もこんなふうに忘れられるのかしら?