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なぞりのつぼ −140字の小説集−

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読めば読むほど、どんどんツボにハマってく!? ナゾリの息抜き的140字小説を多数収録! ※全編フィクションです。 ※無断利用および転載は原則禁止です。
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2023年3月の記事一覧

140字小説【混沌の拳】

140字小説【混沌の拳】

「ジャンケンポン! ……って、何それ。どっち?」
「チョキとパーの融合……そう、例えるならこれは私の中にある『光』と『闇』。私もまた心を持つ人である限り、どちらかを捨てることなどできない……」
「私チョキだからアンタに勝ち目ないよ」
「勝敗など関係ない……」
「じゃあジャンケンするなよ」

140字小説【ハイテク銀行】

140字小説【ハイテク銀行】

「イラッシャイマセ。ゴ用件ハ何デショウカ?」
「うるせぇ、いいから金を出せ!」
「『お引き出し』デスネ。カシコマリマシタ」
「ええい、もういい! おい、そこの人間! 大人しく手を上げ……痛っ、何ひっぱたいてんだ!?」
「お客様が『手を上げろ』とおっしゃったので」
「人間の方がポンコツかよ」

140字小説【やはり外せない】

140字小説【やはり外せない】

「やっぱり居酒屋で焼き鳥は外せないよね」
「わかる〜! つい頼んじゃうよね」
「とか言って、アンタ外してるじゃん」
「えっ? ああ、この方がお互い食べやすいかと思って……」
「そんな気遣いは無用! 大体、焼き鳥を串から外すとか邪道だから!」
「す、すいません……」
「外していいのは席だけよ」

140字小説【注入と射出】

140字小説【注入と射出】

 今日は会社で大事なプレゼンがある。俺の出世が懸かった大一番だ。
 この日のために俺は何度もシミュレーションを重ねてきた。ただそれでも本番が近づくにつれ、緊張が一気にこみ上げてきて……

「大丈夫、俺ならやれる……よしっ!」

 と、両手でほっぺたを叩いた瞬間、気合いが尻からプッと抜けた。

140字小説【誤解です】

140字小説【誤解です】

 職場のエレベーター内にて、偶然にも彼女と二人っきりになってしまった。

「や、やぁ」
「社内で気安く話しかけないでもらえます? この浮気野郎」
「ちょっ……違うって! あのときは新人の子が困っていたから、それで話を……」
「ふぅん、どうだか」
「待ってくれ! あれは本当に――」

《五階です》

140字小説【どうぞご勝手に】

140字小説【どうぞご勝手に】

「ちょっとは真剣に考えてくれたっていいでしょ!?」
「とか言って、どうせまた俺の意見なんか無視して、一人で勝手に決めるんだろ!」
「だって、それはアナタが……!!」
「もういい! 勝手にしろ!」
「勝手にするわよ!」

 こうして妻の一存で、我が家の台所に勝手口が取り付けられることになった。

140字小説【レシーブ、トス、からの?】

140字小説【レシーブ、トス、からの?】

 社会人バレーの練習後……

「ねぇ、ちょっと話があるんだけど」
「ごめんなさい、このあとスパ予約しちゃってるんで」
「アンタね、一番みんなの足引っ張っといて、よくそんな余裕あるわね」
「だってバレーの基本じゃないですか。『レシーブ・トス・スパ行く』って」
「まず基本ができてないでしょうが」

140字小説【花占い】

140字小説【花占い】

「告白する、告白しない……」
「あら、花占い! 懐かしい〜!」
「する、しない、する……よし、決めた! 私、ママのメイク道具勝手に使いました! あと、高そうなリップ失くしちゃいました!」
「娘を叱る、叱らない、叱る、叱らない……叱る♡」
「ママに謝るっ、謝らないっ、謝るっ、謝ら……あっ」

140字小説【新人の取組】

140字小説【新人の取組】

「今度の花見だけどさ、お前先に現地行って《席取り》しといてくれ。これ、毎年新人の仕事だから」
「わかりました」

 そして、花見当日……

「……お前、何やってんの?」
「ああ、先輩。ちょうど今、特等席を賭けて他の花見客の方と相撲取ってるところなんですよ」
「誰がガチで《関取しろ》っつったよ」

140字小説【ヤミー】

140字小説【ヤミー】

 旦那は感情表現が不器用で、基本的にいつもシブい顔をしている。
 それでも私が声をかければちゃんと返事してくれるし、私が作るご飯を食べるときなんか、「ヤミー、ヤミー」と喜んで食べてくれる。そういうところが可愛くて、私も元々苦手だった料理を頑張れるのよね。

「どう? 美味しい?」
「闇」

140字小説【きっと戻ってくるよね】

140字小説【きっと戻ってくるよね】

 朝のゴミ出しにて。

「おはようございます〜! ……あら、いつも一緒の旦那さんは?」
「それが……」
「どうかしたの? まさか喧嘩でもした? よかったら相談乗るわよ」
「……それが、戻ってこないんです」
「えっ!? それって……」
「今朝からトイレ行ったきりで……」
「……信じて待ちましょう」

140字小説【鏡の鑑】

140字小説【鏡の鑑】

「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」

《それはご主人様……の心でございます》

「心? 見た目じゃなく?」

《はい。なぜならご主人様が、日頃からこの私めを丁寧に磨いてくださるからです。ですから私めが映し出すアナタ様は、いつだってお美しいのです》

「ヤダもうっ……そういうアナタは鏡の鑑ね」

140字小説【トモダチの成り立ち】

140字小説【トモダチの成り立ち】

 僕は“ト”様だ。親の都合で遠い所から転校してきた。
 田舎じゃ僕みたいなよそ者に仲良くしてくれる人なんていないし、僕だって、わざわざ誰かと仲良くなろうなんて思わない。
 だけどター君だけは僕にこう言ってくれた。『“ト”もダチだ』と。
 だから僕は今でも、彼と一緒に“外”で遊んでいる。

140字小説【不思議ニャ生き物、ヒト】

140字小説【不思議ニャ生き物、ヒト】

「よぉシロ! いや、今は何て名前だっけ?」
「おうクロ。お前は相変わらず野良猫やってんのか?」
「まぁな、毎日自由気ままにエンジョイしてるさ。それよりお前こそどうなんだよ? まさかもう去勢されてんじゃねぇだろうな?」
「いいや。むしろ俺よりご主人様の方が先に済ませちまったよ」
「マジか」