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2023年2月の記事一覧
140字小説【自分だけの世界】
お布団を頭まで被るのが好き。だってこうすれば心が落ち着くし、外の世界との関わりを遮断できる気がするから。
お布団の中は自分だけの世界。ここにいれば雨が降ろうが槍が降ろうが、身も心も安全。
だから安心してオナラもできる――
――まもなく自分だけの世界から出ることを余儀なくされた。
140字小説【朝からお迎え】
「モーニングルーティンって何かやってる?」
「毎朝寝起きにクラシック聴いてるくらいかな」
「なるほど、オシャレだね」
「クラシックはいいよ。心が浄化されて寝覚めがいいっていうか、何なら心地よすぎて天に召されそうになる感じっていうか。それで今朝も死ぬかと思ったわ」
「浄化されすぎじゃね?」
140字小説【ハ●ムーン】
『君が太陽なら、僕は月だ。君の光が、いつだって僕を照らしてくれる』
それはハネムーンで、夫が私に言ってくれた言葉。
あれから三十年。今でも私はその言葉を忘れずに、毎朝カーテンを開けては、窓から差し込む朝日で夫の頭を照らしている。
「うう、眩しい……」
「早く起きなさいよ、ハゲムーン」
140字小説【義理チョコ】
「ねぇ、チョコあげよっか?」
「先生が俺に? 何で?」
「いいじゃない、義理なんだし」
「じゃあ、まぁ一応……つーか義理なのに手紙付きって……ん? 『母より』?」
「三者面談はお父さん来られるわよね? そのときはヨロシクね」
「待って! 『義理』で『母』って! ちょっ、これ……え〜と……」