見出し画像

【展覧会レポ】水戸芸術館「山下麻衣+小林直人 他者に対して、また他者と共に」

【約4,900文字、写真約60枚】
水戸芸術館茨城いばらき県)に初めて行き「山下麻衣+小林直人 他者に対して、また他者と共に」を鑑賞しました。その感想を書きます。

結論から言うと、とても「現代アート」らしい展覧会で満足でした。会場には説明が何もなく、多くの不思議な作品からの「問い」は、普段の生活からは得られない刺激を受けました。また、水戸芸術館は成り立ち、運営方法などツッコミどころも多く興味深かったです。水戸旅行ではマストで寄るべきスポットです!

おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★★☆☆
混み具合:★★☆☆☆
展覧会名:山下麻衣+小林直人 他者に対して、また他者と共に
場所:水戸芸術館
会期:2024年7月27日(土)〜10月6日(日)
休館日:月曜日
開館時間:10:00〜18:00
住所:茨城県水戸市五軒町1丁目6−8
アクセス:水戸駅からバス約10分+徒歩約3分
入場料(一般):900円
事前予約:ー
展覧所要時間:約30分
撮影:すべて可能
URL:https://www.arttowermito.or.jp/gallery/lineup/article_5312.html 


▶︎訪問のきっかけ

水戸芸術館の入り口

私と子供二人(ともに未就学児)の3名、1泊2日で旅行する機会をGET。どこに行こうか考えました。1)片道3時間以内、2)現地で子供が楽しめそうな場所いくつかあり、地理的に離れていない、3)できれば美術館も行きたい…。

考えあぐねた結果、今まで興味があったものの一生行く機会がないと思っていた「水戸芸術館」を軸にプランを考えました。水戸芸術館の敷地内にタワーがある、近くには湖・公園もある、足を伸ばせば大洗にも行けると思ったことが決め手です。

▶︎アクセス

水戸市内のバス

水戸芸術館へは水戸駅からバスで約10分(「泉町1丁目」で下車)、そこから徒歩約3分です。水戸駅「北口バスターミナル4~7番のりば」から乗車すると、すべてのバスが「泉町1丁目」に停車します。

バスから降りてすぐ見えるシンボルタワー

住所:茨城県水戸市五軒町1丁目6−8

▶︎水戸芸術館とは

外観

✔️概要

水戸芸術館の全体

水戸芸術館は、水戸市制100周年を記念し、当時の水戸市長・佐川一信が「水戸を日本一の文化都市にしたい!」と考え、五軒小学校の跡地に開館(1990年、建設費は103億)。コンサートホール、劇場、現代美術ギャラリーがあり、それぞれ自主企画により運営しています。

水戸芸術館の英語名称は「Art Tower Mito」。普通に考えたら、Mito Art Centerなどになると思います。英語で「Art Tower Mito」と書くと、「タワー」だけのことを指していると勘違いされないでしょうか?謎のネーミング…。

劇場の催し
コンサートホールのパイプオルガン

✔️予算方針

広場とカスケード(噴水)

水戸市は「財団法人水戸市芸術振興財団」を設立。財団運営のモットーは「まちの中へ、人のこころに」。

決まった時間に水が吹き出す。でかい石は茨城県笠間産稲田石(27t)

芸術館の管理運営は、町おこしに注力するため、毎年度予算の1%(約9億円)を充てて活動する方針だそうです(日本で初)。飽くまで、企画内容を決めた上で予算を付けるのが正しい順序では?今の方針は何ともお役所的な発想と感じます…😅

この方針では、常にある程度の予算がつくため、企画内容によっては、無駄な経費が使われたり、予算が足りない場合もあります。水戸市民が、企画内容や開示資料をきっちり精査する必要があると思いました。

なお、水戸芸術館は美術品の蒐集をしておらず、企画展で必要に応じて都度、収蔵しているそうです。美術館によって、作品を寄贈されて設立されたり、「よっしゃ、美術館を作るぞ!」と費用をかけてコレクションを集めて設立されたり、色んな経緯があって興味深いです。

▼美術館のコンセプトができた後にコレクションを収集した大和文華館

✔️芸術館の館長、財団の理事長

初代館長:吉田秀和

水戸芸術館の初代館長(1988年)は吉田秀和。芸術全般にわたる評論活動などから最適任者と指名されたそうです。2代目館長(2013年)は、水戸室内管弦楽団の音楽顧問を務めていた小澤征爾が就任。

▼小澤征爾について読んだことがある本

なお、水戸市芸術振興財団の初代理事長(1988年)は、三井不動産社長を務めた江戸英雄水戸高等学校卒)。2代目理事長(1998年)はファッションデザイナーの森英恵。吉田秀和がザルツブルク音楽祭で見たオペラの衣装を森英恵が担当していたことから依頼に至る。

3代目理事長は、現・アダストリア会長兼CEOの福田三千男みちお(2023年)。福田三千男は、水戸の五軒小学校の卒業者で、アダストリアの本店所在地は水戸市泉町にあるなど、水戸に縁があることから就任を依頼されたようです。水戸芸術館の至る所で"アダストリア"を見たため「何故だろう?」と思っていた疑問が晴れました。

ミュージアムショップにて
カスケードにて

水戸芸術館の近くでアダストリア本店に遭遇。福田三千男が理事長の「哲文化創造一般財団法人」は、本店向かいの旧川崎銀行水戸支店の建物を改修し、美術館やカフェを併設する「テツ・アートプラザ」を2025年秋に開館予定。芸術の名所が増えることで、観光客も増えそうです。

アダストリア本店
すべてアダストリアの関連企業
工事中の「テツ・アートプラザ」(写真左端)

▶︎「山下麻衣+小林直人 他者に対して、また他者と共に」感想

展覧会の入り口

山下+小林による多彩な表現と実践を、最初期の作品や国内未発表作を含め網羅的に紹介し、その全貌を紐解きます。(略)災害やパンデミックを経て人と自然との不安定な関係が可視化され、また世界的な紛争の続く現在において、本展を通して「他者」との関係性を改めて考え、人々がそれぞれに見ている世界への認識を更新し、個々の存在のあり方を問う機会を創出します。

公式サイトより
チケット
作品リスト(全35点)
メインビジュアル

メインビジュアルは、展覧会の良さが全然伝わずもったいないと思いました。これは、水戸芸術館の屋外広場を使った観覧者参加型のインスタレーション(新作)のみを表現しています。

ビジュアルだけを見たら「ナチュラル系の展覧会なのかな」と思っていました。概要をよく分からないで入りましたが、結果、結構面白かったです。

《telepathy》

会場の入り口には全く説明がなかったため、少し動揺しました。観覧者をいきなり迎える作品は《telepathy》。テレパシーをひたすら1,000回実施して10回成功させた作品です。

《1000WAVES》

そのほか、ひたすら波を数える《1000WAVES》。ひたすら道を歩いて「♾️」の模様を作る《infinity》、ボーリング大の飴をひたすら舐める《Candy》など、どれも果てしなく笑ってしまいます。

《infinity》
《Candy》

なお、作品の背景は、看視員に聞けば丁寧に教えてくれます。鈴木康広的な考えを、さらに現代アート側に尖らせたような印象でした。

子供は《When I wish upon a star》が「クッションが気持ちよくてずっといてもいい」とお気に入りでした。これは、1秒以下の流れ星を約2分の映像に引き伸ばし、それをクッションに寝転がって見る作品でした。

《When I wish upon a star》

私は全体的に「現代アートしてるなぁ」と楽しめました。特に、最初の部屋にある作品群がアホっぽくてお気に入りです。子供の頃、無駄に階段の数をカウントするなど、そういう意味のない遊びをしたことを思い出しました。

《やりなおし 〜ALIENとしての2001年〜》
山下+小林のデビュー作
《Artist's Notebook》
アイディア帳を原寸大で描いた絵
《Present (for a Giraffe)》
アフリカから寒い日本に来たキリンのためのセーター
実際に山に登り、山をかたどって彫刻した作品

ただ、作品にキャプションが一切ないため、想像力を問われる展覧会でした。アートに興味がない人は、「何だこれ(笑」と楽しめるか、「何だこれ…」と意味不明で終わるか、どちらかだと思いました。

《Lion & Canvas》
ライオンがキャンバスを齧った作品
《Anne and Anne's Sculpture》
愛犬アンが齧って出来上がった作品
《Dogsled》
犬を模したラジコンカーに引かれてソリで走る作品
《A SPOON Made From The Land》
砂浜で砂鉄を集めてスプーンを作った作品

展覧会の会場は2階です。1階にエレベーターはないように見えますが、隠し扉の中にエレベーターがありました。そのため、車椅子やベビーカーの方でも2階に上がれるようになっています。

《積み石》
《前方回転する染谷さん》
《Major League Birdwatching》

私は平日に行きました。観覧者は私の他に1、2組しかいませんでした。そのため、子連れでもスムーズに鑑賞できました。看視員も子供に優しく接してくれたため、ありがたかったです。また、観覧料900円というのも安価で嬉しいです。

《世界はどうしてこんなに美しいんだ》
《KEEP CALM, ENJOY ART》
《infinity~mirage~》
蜃気楼によって「m」で「♾️」を作った作品

館全体は若干「ハコモノ」感が漂っていますが(100年を記念して作った名残でしょう)、展覧会は妥協せずにしっかり運営している印象を受けました。

▶︎まとめ

買ったポストカード

いかがだったでしょうか?「the 現代アート」という印象で私は楽しめました。具体的なメッセージがなく、ただひたすら無言で「問い」を投げかけるスタイルは私の好みでした。水戸芸術館にも初めて訪れることができ、設立の背景なども含めて興味深かったです。水戸旅行にはマストで寄るべきスポットだと思いました。

▶︎今日の美術館飯

★3.3/OMISE (茨城県/水戸駅) - デミグラスソースベースのミートソーススパゲッティ ドリンクセット 大盛 (¥1,200)
★3.3/サザコーヒー 水戸芸術館店 (茨城県/水戸駅) - フルーツトライフル (¥750)、アイスカフェラテ (¥630)
★3.3/カフェ ダイナー ケイ (茨城県/水戸駅) - keiオリジナルチーズバーガー BURGER SET (¥860+550)

▶︎おまけ(シンボルタワーなど)

シンボルタワーの模型

シンボルタワーは、市制100周年・高さ100mで建設されました(お役所的で安直な発想…)。タワーは、チタン製の正三角形パネル57枚から構成され、地上86.4mには展望室があります(大人:200円)。同型の形が反復して無限に伸びてゆくのはブランクーシ《無限柱》から着想を得たものらしいです。

▼ブランクーシの展覧会(アーティゾン美術館)

ブランクーシ《無限柱》から着想

なお、正式名称は「塔」「タワー」「シンボルタワー」と平凡なのが気になりました(しかも表記揺れが散見)。せっかく水戸芸術館の象徴的なアイコンであれば、1回聞けば覚えられるような、もっと特徴的な名称を付けるべきではないでしょうか?これでまかり通っていることが不思議です…。

ビデオコーナー
紙の模型も配布中

シンボルタワーも含めた水戸芸術館の設計者は磯崎あらた。主な建築作品は、なら100年会館、群馬県立近代美術館、ハラミュージアム・アーク、由布院駅駅舎など。

水戸芸術館、水戸市民会館(2023年7月開館)、水戸京成百貨店の3つの施設を総称した愛称はMitoriOミトリオ。最初と最後のアルファベットが大文字の理由は「インパクトと見栄えを考え」た結果だそうです(よく分からない…😅)。

MitoriOが表現されたパンフレット
展望室の様子
丸い穴からの眺望
右上あたりに茨城県近代美術館が見える
この穴から覗くと…
なぜか「大丈夫」の文字
地上からは何か分からなかったが…
山下+小林の作品でした
《水戸芸術館ライトアッププロジェクト》国の補助金とアダストリアの協賛金で実施

いいなと思ったら応援しよう!

Naota_t
Thank you for your support!