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創作ものがたり

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#会話

話したい僕は

話したい僕は

日曜、夕暮れ。
天気は、晴れ。
僕は誰かと話したいと思った。

玄関に降り、最初に手に取ったのはお気に入りのスニーカー。
まだ見ぬ誰かが僕に出会い、このスニーカーを褒めてくれたらいいなと思った。
そう思って靴ひもを締めた。
話しかけて貰いたくて、願いを込めて強く強く締めた。
ママが、昔買ってくれたスニーカー。

玄関を出て、家の前に置いてある猫の置物を撫でた。
うちで飼っているミーちゃんと同じ柄の

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世界を繋ぐロッカーの噂

世界を繋ぐロッカーの噂

そこは翠ケ丘附属中サッカー部の部室。
万年補欠組の2年生、大輔と拓也、そして健一が座って話している。

健一「おい、拓也、大輔。知ってるか」
拓也「何を」
大輔「健ちゃんっていつも主語無いよね」
健一「悪い。つい早く言いたすぎて」
拓也「で、何を?」
健一「ロッカー3つを順番通り開けた時、開けた人は     もう1つの世界の自分と入れ替わるって話」
拓也「なんだよ、もう1つの世界って」
大輔「…で

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何気ない日常

何気ない日常

「ねぇねぇ」
「何?」
「いつもありがと」
「何急に?」
「なんとなく」
「ふーん」
「ふーんって何さ」
「他になんて言ったらいいの」
「他には…どういたしまして、とか?」
「なんで上からなのって怒るでしょ」
「まぁ…うん(笑)」
「ほら(笑)」
「でもふーんはないでしょ」
「だってありがとうもアレだし」
「だからって」
「もうわかったって(笑)」
「まぁ確かに逆の立場だったらなんて言えばいいかわ

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街灯下の彼と私と彼のペット

街灯下の彼と私と彼のペット

川沿い街灯下、ベンチの上。座る彼と私。

「それにしても、今日は良い天気だね」
とポツリと呟いた彼は上を向いてニコッと笑った。
「どこが」
と言いそうになった私。グッとこらえて彼を見た。
「日が出てなくて、風があって、涼しくて。散歩日和だ」
彼はヘラッと笑ったので、私は今度は堪えずに
「よく笑っていられるね、この状況で」
と言った。

川沿い街灯下、ベンチの上。彼の隣、座る女。
ただし、地面に、四

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女子達は明日を知らない

女子達は明日を知らない

「これのことなんて言う?」
「リモコン」
「だよねぇ」
「なんで?」
「いやさ、職場で、これのことを変な風に呼んでる人がいてさ」
「へぇ、なんて?」
「えっとね…あれ、何だったかな」
「え、そこが論点なのにそこ忘れたの?」
「いやー、そう、あまりにも不思議すぎて」
「なんだろう」
「えっとーカタカナだった」
「リモートコントローラー」
「それは正式名称だよね。そうじゃなくて」
「モーコン」
「変な

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