遥か昔、この地球を我が物顔で占領していた人類。自然を破壊し、欲望に任せて自分達の利益を追求していた彼ら。しかしそんな人類もとうとう絶滅してしまったのがこの世界。 原因は人類の争いによるものでした。食糧不足、宗教観の違い、行き過ぎた資本主義による貧富の差が火種となり世界規模の戦争が起きました。始まりは大国の近隣諸国への侵攻。核戦争になってしまえば人類の大半が滅びるのは火を見るより明らか。各国、様々な新しい兵器が導入され長期化、激化する戦争。その終止符を打ったのは人工衛星から射
これは、覚醒ジュニアが偵察のヒトクチタケを追い払って、アンズリーナを助けたあとの物語――。 覚醒ジュニアの活躍によって偵察のヒトクチタケたちを追い払ったのも束の間。アンズリーナちゃんを連れ去るべく、ヒトクチタケのリーダーとオオヒラタケがすぐに追いかけてきました。 なおこの時点ですでにジュニアは干からびている模様。 よわよわポルチーノくん一行、ついにジ・エンドか――!? 「ヨォ……ヒヨっこ共……」 「オレのシマで荒事たァいい度胸だな――?」 「「「で、出たーー
「ああ、ジュニア様……どこかお医者様はいらっしゃらないかしら……」 ジュニアは絶賛干しキノコ化していい出汁がでそうな状態ですが、自分を助けるために覚醒したということもあり、アンズリーナちゃんの心配はひとしおです。 「そんなに気を落とさないでッポル。君は何も悪いことはしていないんだから……」 そんなアンズリーナちゃんにそっと寄り添うポルチーノくん。 「でも……私のせいで……」 ポルチーノくんの言う通り、アンズリーナちゃんには何も罪はありません。彼女はただ襲われてい
「ヒューン……ッ」 「ジュニア様!?」 「ジュ、ジュニア!どうしたッポルか!?」 「こ、これは!?」 ジュニアが突然身震いしたかと思うと、突如奇妙な声をあげてしおしおとしおれていくではありませんか。 あまりのしおれ具合にメロメロ状態だったアンズリーナちゃんも流石にハートがブレイキン。しかしそれ以上にジュニアの様子が気がかりです。 「ジュニア様……私のせいで……。もしかしてこのまま一生この状態だったらどうしましょう……!」 「うーん、ボクもこんな状況初めてッポル…
気を失ってから1時間。 アンズリーナはようやく目を覚ましたようです。 「……うーん」 「気を失ってしまってましたね……どこまで話したかしら……」 力なく体を起こし、うなだれるアンズリーナ。 心配そうに見守っていたポルチーノくんとムッシュを見て、それから、ふたりの奥でまだ覚醒状態のジュニアに目を向けました。 「そう、わたしは王国から何とか逃げのび、母とともにここまで流れてきましたが、結局すぐに見つかってしまい、再び逃げ出し……それからはあなた方がご覧になった通り―
「ツキヨタケの軍勢は理性のない凶暴な軍団なので、基本的に統制はとれません。なので、逃亡先が見つかるまでもっと時間がかかると考えていました。しかし……」 「狡猾で凶悪な大型きのこのオオヒラタケが、刺客として放たれていました。バラバラに襲撃してまわるツキヨタケの軍勢を鎖に繋いで統制することで、効率的にわたしたちを捜索したようです」 「そのせいで、ヤツらの捜索スピードはわたしたちの想像以上に速く、タマニータウンで助けを求めるチャンスすらありませんでした。追手の数を見た母は少し顔
「わたしの名前はアンズリーナ。アンズ王国のものです」 絶体絶命のところで助かった興奮が冷めてきたのか、アンズリーナと名乗った彼女は少し落ち着いて事の顛末を語り始めました。 「アンズ王国はとても穏やかなところです。わたしも平和に暮らしていたのだけれど……ある日突然、恐ろしいキノコたちに国が襲われてしまったのです」 よほど恐ろしい光景だったのでしょう。 思い出すだけでぶるりと身が震え、鮮やかな橙色の体が白く萎れるようでした。 「わたしたちを襲った首謀者は、伝説の悪魔ツキ
「あ……あ、あ――」 「ありがとうございます!あなたのお陰で命拾いいたしました!何とお礼を申し上げればよいのか……!」 悪きのこに追われていた可愛らしいきのこは、命の恩人であるジュニアに近づき深々と頭を下げました。ジュニアはいまだトランス状態で意識がはっきりしていないようでしたが、美茸ちゃんは構わず寄り添い、好意をあらわにしたのでした。 「「ガーン!」」 いや、何にショックうけてるの大人たち。当然のことすぎでは? しかしめげないポルチーノくんとムッシュ。限界まで
「ダ・レ・ダ・オ・マ・エ・ハ!?」 振り返った美茸ちゃんと悪きのこの視界には、ぽつんと立つジュニアの姿しかありません。必然的に、ジュニアが啖呵を切ったと認識してしまいました。 「あなたは……?た、助けて!!」 「ヒーッ……ボキュも助けて欲しいでちゅ〜!!」 圧倒的悪人オーラで凄む悪きのこに対し、恐怖のあまり身動きが取れなくなってしまったジュニア。 こんな幼い茸が逃げずにいるというのに―― 「ジュ……ジュニア……(小声)」 「彼に幸運を……(小声)」 大人のポル
タマニータに追い出されてしまった一行は、ショップからタマニータウンの方へ戻ることにしました。 「何かタマちゃんを怒らせてしまったッポルね……ムッシュがやる気を見せないからッポルよ〜」 「ムムッ……諸君らは私のせいだというのかね!?」 「ボクよりムッシュの方が可能性があると言ってるんだッポルよ〜!」 「私は博士であってレースは全くの専門外なのだよ!」 ポルチーノくんとムッシュがこの期に及んで醜く責任を押し付け合っていたその時、空気を切り裂くような叫び声が響き渡りました。
「力をつけたいならまずはタマニーカップで優勝してみな!」 突然の無茶振りに唖然とするポルチーノくん一行だったが、タマニータは構わず畳み掛けます。 「特に今年の賞品は滅多に出回らない激レアカードの1枚だぞ。強くなりたいならゲットしておくべきだ」 激レアと聞いて、色めき立つ一行。 なんていうかこう、基本は欲にまみれてるよね君たち。 「お前たちも一度くらい聞いたことがあるだろう?この世界に散らばるレアカードのことを。ショップで買えることもあるが、ほとんどは強者から強者へ
不躾な態度を取ったポルチーノくんたちを一喝し、ひとまず怒りがおちついた謎きのこは、ジャンクショップの主でタマニータと名乗りました。 「ところでお前たちはこの街に何しに来たんだ?」 タマニータに尋ねられたポルチーノくん一行は、無言のまま思わずポカーンと口をあけました。 「あれ?何しに来たッポルっけ……?」 まじか。 「ムムッ…何でしたかな?」 ムッシュ、おまえもか。インテリキャラどこいったの。 一行はそろってぐにゃりと胴をひしゃげ、考えこみました。数秒後、
「この子、何ッポルか?❤️ 怖いどころかめちゃくちゃカワイイッポル!!❤️」 「何たる可愛らしさ…❤️ 私にも良く観察させてくれたまえ❤️❤️」 「好き……❤️」 こうなるとむしろ困ったのは謎きのこのほうです。 だらしなくよだれを垂らし、完全に(さっきとは違う意味で)我を失った男たち――まぁきのこに雌雄はないんですが――が突然ゼロ距離でキャッキャしはじめたわけですから。 それはもう、ストレスフルなわけです。 「……オ…オマエラ……」 「ん?何か言いたいっぽるか?♥」
「ヨォ!元気か?よく来たな、遠かっただろ?ココ」 「…………………」 カウンターに居た謎きのこは、くるりと振り向くと、意外にも優しい言葉で話かけてきました。 その姿は、先程までの威圧感は微塵も感じさせない、くりっとした目がむしろ柔和そうな印象まであります。強いて言うなら、まるでテキ屋の兄ちゃんのようなやんちゃそうな言葉遣いだけが気になるところですが。 ともあれ、一同は威圧感から開放されてホッとしたやら、振り向いた顔のギャップに不意をつかれたやら、情報が渋滞したように
「ム、ムッシュ…ここってコワイところッポルか!?」 「いや…実は私も初めて訪れるのだが、こんな威圧感のある場所とはどこにも記されていなかったはずであるが…」 謎きのこから発せられるあまりの威圧感に泣きそうになるポルチーノくん。ジュニアと共に思わずムッシュの影に隠れてしまいますが、当のムッシュも困り顔。 あくまで知識上とはいえ、ムッシュの知るジャンクショップは、賑やかで楽しげで様々なカードに心が躍る、そんな場所のはずなのに――。 しかし、そんな一同の動揺を知ってか知ら
そこは壁一面がぴかぴかと光る、ひときわ眩しい部屋でした。 「諸君はジャンクショップは初めてかね?」 「……ジャンクショップ?」 「ジャンクショップも知らんとは!?」 田舎100%純粋培養菌糸類ポルチーノくん、全く聞いたことのない名称に首を傾げます。 「諸君も傘の下にカードを挿入して能力を変化させるだろう? ここジャンクショップは、そのカードを取引したり、装備やボディのカスタマイズを行うショップの事なのだよ」 「そんなスゴイ所があるッポルね!?」 「しかし、初めてとな