2章第16話 手のひらはタイヤでできている(回る)
タマニータに追い出されてしまった一行は、ショップからタマニータウンの方へ戻ることにしました。
「何かタマちゃんを怒らせてしまったッポルね……ムッシュがやる気を見せないからッポルよ〜」
「ムムッ……諸君らは私のせいだというのかね!?」
「ボクよりムッシュの方が可能性があると言ってるんだッポルよ〜!」
「私は博士であってレースは全くの専門外なのだよ!」
ポルチーノくんとムッシュがこの期に及んで醜く責任を押し付け合っていたその時、空気を切り裂くような叫び声が響き渡りました。
「ヘヘヘ…追い詰めたぜ。観念しな」
「やめて、近寄らないで!!――誰か助けて!!」
助けを求めていたのは、天に向かってしなやかに広がる傘が美しいきのこでした。謎の悪いきのこに襲われ、身動きを取れなくなったところを追い詰められているようです。
美茸の気配を察知した欲まみれの主人公一行。
「誰か襲われてるッポル!?」
キリッ
「ムムッ……何事か!確かにヤバそうなのだよ!?」
キリッ
「早く助けに行くでちゅ!!」
キリッ
「お前たち!何やってるんだッポル!?弱いものいじめはやめるッポル!!」
事態を察知するやいなや、気合一喝。
さっきまで弱さ自慢してたきのこたちとは思えないこの主人公感。やるじゃんポルチーノ。そうだよね、これ以上自分たちの眼の前で犠牲者とか見たくない、よね――?
ササッ……
光の速さで隠れますやん。
「……………えっ!?」
「ガ……ガンバレジュニア(震え声)」
言うだけ言って、ガタガタ震えながら物陰に隠れてしまったポルチーノくんとムッシュ。哀れ、その素早い動きについていけなかった(そして隠れるとは予想していなかった)ジュニアだけが取り残されてしまったのです。
イキったり押し付けあったり、手のひら――じゃなくてタイヤぐるぐるですやん。