眠るまえの短歌、という贅沢
夜、布団の中で眠りにつく前に歌集をひらくと、なんだか気持ちに余裕が生まれます。そもそも余裕があるから歌集を開けたのかもしれないけれど、優しくなれるような気がするんです。ページいっぱいに文字通りの余白を持って、けれども慎ましくちょこんと文字が載っている様子は、小説やエッセイでは味わえない密度です。
それが歌集特有の、小説やエッセイとはまたちがう温度を生んでいるのかもしれません。まどろみに入れる空気感とでも言うのでしょうか。その日の仕事から解放されて巡りがゆっくりになった脳に、やさしい31字がありました。
念のため補足すれば、私は夜の自分ひとりの時間に、存分に小説やエッセイに浸るのも好きです。それも、とても。日常に気付かされたり、世界に入り込んでつい夜更かししたり。自分にたくさんの時間を許してあげる、その意味で長文を読むことの贅沢さを感じるのです。
一方で短歌は、今日はここまで、とページを閉じやすい読み物かもしれません。どうしても眠る前に紙に触れたいとき、明日も仕事で早い夜に、1ページがめくれることの喜びは、たぶん私だけが知っているものではないでしょう。共感してくれる人がきっといると思います。
そして眠る前によんだ短歌は、何度でも新しい発見をくれるんです。そのときは文字の上を目が滑っても、2日後にはたいせつな歌になることもありました。何度でも読み返せる、そのハードルの低さも歌集ならではでしょう。自分の中にすっと言葉が落ちてきたとき、今出会えて良かったなあと思うのです。
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