【読書記録】方丈記 現代語訳付き/鴨長明(角川ソフィア文庫)
本のこと
感想
下鴨神社の次男という名家で生まれた鴨長明ですが、出世争いに負け、大災害や人災を5回も経験し、その後に和歌で評価されて後鳥羽院から見いだされるも、また出世争いに敗北。そこから隠居生活を送ります。
方丈記は主に、出家前と出家後の2部構成になっています。
前半の災害や人の描写はあまりにリアルで驚かされます。
スマホもなかった当時に、どうやってそんな詳しくリサーチしたのかなと思うほどです。
また後半パートは、「隠居生活めちゃくちゃ良いよ!」パートです。
災害を経て無常を感じた鴨長明は、自分で小さな家をつくります。
方丈(1丈=約3mなので、3m四方ということ)サイズの家です。
この家で書いた本だから、【方丈記】です。
方丈の家で感じた四季の素晴らしさや、そこで思う人間の世界の無常さなどが後半で語られますが、この辺りの文章に、楽しさがにじみ出ている感じがして好きです。
鴨長明は、世間一般の暮らしからは外れているけれど、自分が好きなものに囲まれて、好きなようにして暮らすのがいかに素晴らしいか、ということを言います。
今でいうYouTuberとか、ミニマリストとか、それに近しいことに思えます。
ついつい人は、周りに合わせて生き方を決めていってしまいます。
人と違うことを恐れて、自分を騙して、現実と戦っている人も多いのではないでしょうか。
それは人間という集団で力を発揮する生き物においては、正しい行動ともいえるかもしれません。
しかしながら、今の世においては、個性を重視し、人と違うことを評価しようと変わってきています。
良い家に生まれながらも、10年の間に5つの災厄に襲われ、出世争いにも負け、挫折をした末に、鴨長明は『方丈の庵』に辿り着きました。
お金があって、大きな家に住めれば幸せか?
豊かさとは何か?
幸せとは何か?
貴族が権力を持っていた当時、「挫折して山奥に小さな家に住んでいるけど、こんなに幸せだ」と、新しい価値観をぶつけました。
人にどう思われようと、自分の好きなものに想いを込める。
戦争、疫病、災害、格差。
現代も鴨長明が生きた時代と同じく、多くの苦しみがあります。
「お金だけが幸せじゃない」という人も増えている印象があるが、800年も前に鴨長明はそれを実践していたと思うと、とても面白いです。
好きなものに時間を注ぎながらも、仏教の道も悟れないことを悩んでいた鴨長明。
そんな人間臭いところに、とても惹かれました。
参考
勉強になるnoteの記事がありましたので、リンクを貼らせていただきます。
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