見出し画像

【読書記録】方丈記 現代語訳付き/鴨長明(角川ソフィア文庫)

本のこと

「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」の一文から始まるこの作品は、枕草子・徒然草とともに日本三大随筆に数えられる、中世隠者文学の代表作。人の命もそれを支える住居も無常だという諦観に続き、次々と起こる、大火・辻風・飢饉・地震などの天変地異による惨状を描写。一丈四方の草庵での閑雅な生活を自讃したのち、それも妄執であると自問して終わる、格調高い和漢混淆文による随筆。参考資料として異本や関係文献を翻刻。

https://amzn.asia/d/ilp0b2A

感想

下鴨神社の次男という名家で生まれた鴨長明ですが、出世争いに負け、大災害や人災を5回も経験し、その後に和歌で評価されて後鳥羽院から見いだされるも、また出世争いに敗北。そこから隠居生活を送ります。

方丈記は主に、出家前と出家後の2部構成になっています。

前半の災害や人の描写はあまりにリアルで驚かされます。

スマホもなかった当時に、どうやってそんな詳しくリサーチしたのかなと思うほどです。

また後半パートは、「隠居生活めちゃくちゃ良いよ!」パートです。

災害を経て無常を感じた鴨長明は、自分で小さな家をつくります。

方丈(1丈=約3mなので、3m四方ということ)サイズの家です。

この家で書いた本だから、【方丈記】です。

方丈の家で感じた四季の素晴らしさや、そこで思う人間の世界の無常さなどが後半で語られますが、この辺りの文章に、楽しさがにじみ出ている感じがして好きです。

鴨長明は、世間一般の暮らしからは外れているけれど、自分が好きなものに囲まれて、好きなようにして暮らすのがいかに素晴らしいか、ということを言います。

今でいうYouTuberとか、ミニマリストとか、それに近しいことに思えます。

ついつい人は、周りに合わせて生き方を決めていってしまいます。

人と違うことを恐れて、自分を騙して、現実と戦っている人も多いのではないでしょうか。

それは人間という集団で力を発揮する生き物においては、正しい行動ともいえるかもしれません。

しかしながら、今の世においては、個性を重視し、人と違うことを評価しようと変わってきています。

良い家に生まれながらも、10年の間に5つの災厄に襲われ、出世争いにも負け、挫折をした末に、鴨長明は『方丈の庵』に辿り着きました。

お金があって、大きな家に住めれば幸せか?

豊かさとは何か?

幸せとは何か?

貴族が権力を持っていた当時、「挫折して山奥に小さな家に住んでいるけど、こんなに幸せだ」と、新しい価値観をぶつけました。

人にどう思われようと、自分の好きなものに想いを込める。

戦争、疫病、災害、格差。

現代も鴨長明が生きた時代と同じく、多くの苦しみがあります。

「お金だけが幸せじゃない」という人も増えている印象があるが、800年も前に鴨長明はそれを実践していたと思うと、とても面白いです。

好きなものに時間を注ぎながらも、仏教の道も悟れないことを悩んでいた鴨長明。

そんな人間臭いところに、とても惹かれました。

参考

勉強になるnoteの記事がありましたので、リンクを貼らせていただきます。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?