バース名物のお菓子パン
バースは、私がイギリス国内で特に好きな場所のひとつ。
古代ローマ人が温泉が湧く土地を好んで定住してから現在まで人気のある町です。ロンドンからの中継地点としても便利。美しい街並みは、ユネスコ世界遺産に登録されて、観光地としても知られています。
英国の作家ジェイン・オースティンは、家族で引っ越してくる前にもバースに住んでいた叔母を訪ねたり、兄夫婦とホリデーで滞在していました。
今回は、彼女がバースで暮らしていた時代から今まで伝えられているバース名物のお菓子について語りたいと思います。
バース・バンとは
名前の通り、バース発祥の小さなバン(パン)
手のひらサイズ
ブリオッシュみたいに柔らかくほんのり甘い。
このお菓子パンは、ジョージ王朝ぐらいまでは地元でしか知られていないようなバースのローカルフードでした。バース在住で料理人であったマーサ・ブラッドリーの書いた料理書(1756年)に、バース・シード・ケーキというレシピがあります。シード・ケーキに風味づけとしてワインとローズウォーターを加えています。
その後、18世紀の料理書には、バース・ケーキというレシピが登場。こちらには、キャラウェイシードの砂糖漬けが生地の中にはいり、飾りとして外側にも上から振りかけてあります。
そして、19世紀初めには、バース・ケーキ→バース・バンへと名前が変化。バース・バンは、温かいものを朝食に食べるか、お茶とともに楽しむパンと定義づけされていったようです。*¹
ヴィクトリア時代に入ると、キャラウェイシードに代わってレモンピールやオレンジビールが人気となります。そのせいか、この時代を代表するイライザ・アクトンや、ミセス・ビートンの料理書にバース・バンのレシピは見当たりません。
そんなヴィクトリア時代に、バース・バンが一躍脚光を浴びたのが、1851年のロンドン万国博覧会でした。この博覧会の会場となったクリスタル・パレスで販売されたバース・バンは、600万人の来場者によって943,691個も食べられたといわれています。*²
ところが、あまりにもたくさんのパンを用意しなければいけなかったため、その品質は本来のバース・バンよりも著しく悪く、一説には材料のバターをラードで代用し、キャラウェイシードはなしで砂糖のみの飾りで作られたといわれています。そのため、ロンドン・バンとかチープ・バンと呼ばれることもあったそう。
今ではふつうのなんて事のないパンに見えますが、甘くて柔らかく、スパイスも使ってあるパン、というのは、当時にすると贅沢な組み合わせだったのでしょう。
バース・バンの食べられるお店『The Bath Bun』
さて、このお菓子パン。
今ではバースの街中にあるティールームで楽しむことができます!
田舎にあるティールームという感じ。のんびりとした雰囲気です。
お勧めは、
ラグジュアリー・バース・バン・ティー
スコーンとクロテッドクリーム、ジャムのセットでは、『クリームティー』と呼ばれますが、ここではバース・バンで楽しめます。
考えてみると、ウェストカントリーが発祥といわれる
『クリームティー』というのは、
もともと小さなパンにクロテッドクリームとジャムを添えたものでした。
デヴォンシャー・スプリットといわれる小さなパンがその一つです。
バース・バンもその仲間の一つと考えれば、この組み合わせはしっくりきます。実際、とっても美味しい。バースに行くと立ち寄りたいお気に入りの場所の一つです。
追記:こちらのお店のウェブサイトには、バースに在住であったウィリアム・オリバー医師が、1727年にバースに住み始め、それから患者のためにバース・バンを開発したと書かれています。
参照
*¹ Laura Mason and Catherine Brown 「The Taste of Britain」
*² Elizabeth David 「English Bread and Yeast cookery」
ジェイン・オースティンと「説得」の情報はこちらから!↓
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